最終話 あれから僕達は
夏休みが終わって新学期が始まった。
コミケ以来あれから三人はすっかり仲良しだ。
元々クラスで孤立気味だった三人はあれ以降ずっと一緒にいる。
家でもラインでよくやりとりをしているようでクラスメイトとして休み時間はいつも一緒に行動していて、好きなジャンルは違えどアニメ好き同士として仲良くしている。
今日も俺の席の前の陸野の席に三人が集まって雑談をしている。
「コールドエンブレム全巻読んだんだけどすっごく面白かった。あたしもう一度コルエム読み返すわ」
「でしょー? もしコラボカフェ第二弾とかあったらみんなで行こうよ」
以前は真面目な勉強熱心でお堅いイメージだった陸野はクラスに仲の良い友達ができたことで性格が明るくなった。
夏休み前と今であまりにもイメージが変わったことにより、同じクラスの女子も陸野へ割と話しかけるようになった。
友人ができたことで以前のお堅いイメージから少しずつ殻を破れてきたということだろう。
「恵子はやっぱりレイヤーしてるだけあってメイクもうまいよねー。私なんて全然だめ」
「いや、メイクは練習すればうまくなるって。あたしのオススメのコスメ教えるよ」
「じゃあさあ、今度みんなコスメ買いに行こうか」
イベントの時は苗字にさん付け呼びだったというのに今では互いを名前で呼ぶ間柄にもなっている。
それだけ距離も縮まったということだ。
小宮は持ち前のメイク技術をクラスでも披露するようになって、クラス一のメイクがうまい生徒ということでクラスメイトの女子達から信頼されるようにもなった。
彼女達は今は夢中になるものが多いのだからクラスメイトの距離なんて気にしてないだろうけど、それでも以前のようなどこか壁があった時よりはマシだと思う。
それがキッカケだったのだからそれが災い転じて福となったのなればいい
「桃菜が新しくアップしたスコ学の漫画面白かった!あたし、スコ学めっちゃはまったわ」
「本当!? あの漫画描く時はアニメ本編を再生しながら描いたんだー」
「今度私にも絵の描き方とか教えてよー」
深山はというと、絵を描ける特技がそういった趣味にも生かされるとますます自信を持ったようで、美術の授業や予備校でもなかなかいい成果を出しているようである。
元はアニメ研究会にこの三人を入部させたいということで三人との交流を始めたわけだけど、それが幸いこうしてクラスで孤立していた三人をまとめることができたのだからよかったのかもしれない
もちろん、三人の距離を近づけて仲良くさせたうちにアニメ研究会に改めて勧誘という作戦は無事成功した。
結果はアニメ好きでなおかつ親交を深めたクラスの女子三人もが入部したということでアニメ研究会は部員が増えて盛り上がった。
とはいえやはり陸野は勉強、小宮はアルバイト、深山は予備校など放課後もなかなか忙しいので部活に集まれる日は少ないけれど、それでもたまに全員が揃った日にはアニメ研究会として楽しい時間を過ごしている。
三人のそれぞれが好きなジャンルのアニメについて語り合い、また彼女達の新たな一面を知れた。
陸野は少年漫画系のアニメが好き、小宮はファンタジー系アニメが好きで深山は学園ものが好きなど、それぞれの好みの傾向もある。
俺の役目も終わったし、もうアニメ研究会に勧誘できた今ならあとは各自が適当に活動すればいい。
しかし、俺達の交流は学校の部活動の中だけでは終わらなかった。
「ねえ、江村くん、今日の放課後、みんなでカラオケ行かない? 今日みんな放課後は暇なんだって。」
クラスにも打ち解けた陸野は以前のお堅いイメージから少し和らいできた。そんなノリで俺に話しかけてきた。
どうやら仲良し三人組でカラオケに行くことになったので俺も誘おうというわけだ。
「え、せっかく三人で行くなら女子同士で楽しめばいいんじゃないの? 男子の俺が行ったら邪魔じゃない?」
この通り、なぜかこの三人に俺もよく巻き込まれるようになったのだ。
クラスで話しかけてくることはもちろん、部活動でも顔を合わせるだけではなく、こうやって放課後にまで誘われる
「むしろ江村が来てくれた方が今期のアニメ主題歌とかたくさん聞けそうだし」
初めてしゃべっていた頃はとんがっていた小宮も今はこの通り丸い。
「そうそう私達だけよりも江村くんに来て欲しいな。よかったら厚見くんとかも誘ったら? アニメカラオケは人数多い方が盛り上がるし。学校外の部活動ってことで」
深山も自分の創作趣味を受け入れてくれる友人ができたことだからなのか以前よりもこういった行動も積極的に出るようになったのだ。
こうやって彼女達の付き合いに俺が誘われることも度々あるのだ。
アニメ好きという趣味がこうして俺達を繋ぎとめている。
「じゃあ修二にも声かけてみるよ」
「そうしよう! じゃあ今日はアニメ研究会のメンバーでカラオケだー!」
「わーい、大勢でのアニメカラオケ楽しみ!」
三人のキャッキャとした声が今日も響く
アニメ好きという趣味がこうして前へと繋がった。
あながちアニメが好きというだけでも無駄ではないのだ。
こうして俺はすっかり彼女達に交えて時折共に行動することが多くなった。
「じゃあ、どこのカラオケにしようか決めようよ!」
俺はそんな様子を見つめて、どこか笑みがこぼれた
「……はいはい」
元々部活へスカウトしようとしたのは修二のアイディアで俺はそれに協力しようと行動していたことが結果的にはこうやって日々を充実させる。
ま、楽しいからいいけど。
了
ただのアニオタですがクラスの女子をスカウトしようとしています 雪幡蒼 @yutomoru2
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