第11話 同人誌だって作りたい!

 翌日の昼休み、またもや深山は美術室に行ったと聞き、またまた俺は深山と二人っきりになれる美術室へ行った。


 さっそく昨日見た作品の感想を伝えたかったからだ。

 美術室で、小宮は練習課題なのか今度は石膏デッサンをしていた。

 俺はどこか上機嫌でニコニコと笑っていたと思う。

「深山、昨日教えてもらったアカウント見たぜ」

 課題に集中している深山の元へそそくさと近づき、隣の椅子に座って話しかける。

「すっげーよかった。どれもスコ学への愛を感じるし、特にオールスター勢ぞろいの絵とかめっちゃ感動した。すげーよな! エルザードから敵組織のブラックリオン側まで描いてて。まさにスコ学の世界観を詰め込んだ絵だと思った」

 俺は包み隠さず昨日見た作品の感想を言った。

 深山はデッサンを描く手を止めて、こちらを向く。

「本当!? あれ、めっちゃ気合入れて描いたんだー。見てくれてありがとう!」

 まるで小学生のような高い声で深山は言った。

「漫画もよかったぜ。できれば、もっと深山の漫画も読みたいと思ったけど、漫画はあれだけなのか?」

  Pixivにアップされていた漫画はショートストーリーの三本のみだった。

 一枚絵も凄いが俺はもっと漫画という形で深山の二次創作を読んでみたかった。

「漫画って一枚絵で完結するイラストと違って一コマ一コマに台詞と絵を描かなきゃいけないから難しくて……。それにストーリーも考えなきゃだし」

「あ、そうだよな。確かに漫画描くって大変だ」

 言われてみればイラストは一枚の絵だが漫画となれば各コマ全てに絵を入れてなおかつ台詞とストーリーまで考えなければならないのである。

 イラストと違い、漫画はそうそう簡単に描けるものではない。

「でもね、今度は漫画もショートじゃなくて長編で描いてみようって思って、今考えてるのあるんだ」

「へえ、そうなんだ。それは完成が楽しみだなあ」 

 深山は漫画を描くのが大変と言いつつ、次の漫画の構想をすでに立てていると知っておレオは純粋に楽しみになった。

「でも、次のは描くのが時間かかるかな。それにそれはネット上にアップロードするつもりはないから」

「ええ、そうなのか」

せっかく漫画を描いているのにネット上にアップロードするつもりはないとはなんとももったいない気がする。もっと深山の作品を見てみたいと思った俺は少しだけガッカリした。

「ネットにアップしないってことは、漫画は描いても誰にも見せないってことか?」

 漫画を作っているのにアップしないということはただ個人で楽しむ用途で誰にも見せるつもりがないということだろうか。そうなると当然俺も見れないということだ。

「ううん。違うの。今度は同人誌として出そうと思ってるってことで」

「同人誌!?」

「うん。スコ学の同人誌を出そうと思ってる」

 同人誌とはいわゆる自費出版で発行される本のことだ。

 自分が作った内容を紙の印刷物として作り、それに値段をつけて販売する。

 オリジナル創作から評論本といったいろんな同人誌が世の中にあるが深山が言っているのはいわゆる二次創作のパロディの同人誌を出そうということだ。

 それを同人誌即売会といった自費出版である同人誌のフリーマーケットのようなイベントで頒布するのである。

もちろん厳密には元の作品を利用して二次創作の同人誌を作り、それに値段をつけて売る、などの行為は公式に対する版権の無断使用で著作権違法である。

 しかし同人誌即売会はそういった二次創作の無断使用が公式によって見逃されているので実質グレーゾーンギリギリでありながら成り立っているのだ。

 と、まあそんな感じの文化であるのだが俺も同人誌は好きだ。

 割と人気イラストレーターの同人誌なんかはチェックすることもある。

まさか二次創作をするだけじゃなくて実際に同人誌として形にするほど行動的な女子がうちのクラスにいるとは思わなかった。

「今まで個人でネット上に作品をアップしていただけだったけど、一度自分の本を発行してみて売るってのをやってみたくて」

 深山ほどの絵のうまさなら同人誌という形で出したいという気持ちはわかる。

 その方がより多くの人の目に入る可能性もあるだろう。

 ただネット上にアップするだけでなく、イベントに参加して同人誌を頒布するという形もある意味行動ではあるのだ。

「同人誌を頒布する際のサークル名は「リバーマウンテン」って名前だよ」

 もう参加サークルまで作っているのだ。それだけ深山の才能は凄い、それをただ個人の趣味で終らせるには実にもったいなさすぎる。

「でも、今まで短編の漫画しか描いたことなかったから本にするってことはそこそこのページ数描かなきゃいけなくて結構大変。ストーリーはどんな感じにしようか今悩んでいるところ」

「すげえなあ。そこまでやるなんて深山のスコ学への愛は本気だな」

 ファンとしての愛の形はアニメならばDVDやブルーレイなど円盤を買い、グッズを買うなどが公式へと貢ぐ方法だと言われているが、こういう表現方法も有りだと思う。

 俺は二次創作をけして忌み嫌うべきものではないと思っている。

 もちろん否定派には公式こそが正統派で二次創作は人様のキャラクターやストーリーを自分好みに好きな解釈で捻じ曲げているから嫌うべきだという二次創作反対派の人がいるのも知っている。

 けれど逆の場合もある。

 俺は素人が描いたファンアートによりその作品とキャラクターを見てそのアニメが気になってそのアニメを実際に視聴してみたはまったことがある。

 ある時はアニメの二次創作で描かれた漫画を読んでみたらそれが面白すぎてそこからその原作はどんな作品かと読んでみたくなったこともある。

 それだけ二次創作やファンアートも書き手によっては見せ方次第でその作品を知らない人にアニメの魅力を伝える手段でもあるはずなのだ。

 決して全てが公式の解釈を捻じ曲げているだとか、ではないと思う。

 同じくその作品を愛している者だからこそ、それを広げる手段でもあると思うのだ。

「同人誌を出すってことはイベントに参加するってことだよな? なんのイベントに出る予定なんだ?」

「私、今度の夏コミにサークルで初参加の予定なの。まずは小さいイベントから参加してみようかと思ったけど、大型イベントの方がより多くの人の目に入ると思うから」

「へえ、夏コミか。確かにそれはいいかもな」

 夏コミとは夏に開催される大型同人誌即売会イベントであるコミックマーケットのことだ。

 コミックマーケット、略してコミケは年二回三日間開催されて夏のお盆期間に開催される夏コミと年末の冬に開催される冬コミがある。

 同人誌即売会でも最大規模のコミケは参加者が三日間で数十万人規模。

 同人誌即売会にはジャンルによって開催されるオンリーイベントなどもあり、オールジャンルイベントの中でも最大なのがコミケだ。

 月々に開催されるもう少し規模の小さいイベントはジャンル(ここでいうジャンルは二次創作の題材になる作品のこと)ごとによって決められたり、最新ジャンルのサークル参加が中心になるのに比べてコミケはオールジャンルイベントなので最新アニメやゲームといった最新ジャンルだけでなく十年以上前に放送されたアニメやそのくらいに連載されていた昔の漫画に発売が二十年以上前のゲームなど、実に流行に囚われない、すでにメディア展開が終了しているジャンルのサークル参加も多いのだ。

 それならば放送終了からすでに三年が経過しているスコルピオン学園での参加も有りだろう。

「初参加をコミケにした以上、なんとか頑張って同人誌作らなきゃって張り切ってるの!」

 深山は気合を入れて腕に力こぶを出すポーズをして決め顔で言う。

 深山はすでにネット上に作品をアップロードするだけではなく、イベントにサークル参加というリアル面でもそういった行動をとるほどに活気にあふれているのだ。

「そうかあ、コミケかあ」


ん? コミックマーケット? 


そこで俺の頭の中では何かが閃く。

オタクの祭典といわれるコミックマーケット。

 そこには漫画やアニメにゲームといった二次元が大好きな人達が集まり、自分で作った同人誌を頒布するのが主な同人誌即売会としての役割だ。

それだけではなくコスプレイヤーが参加してコスプレを披露し、それを撮影するといったコスプレ的な意味でも大きな参加意義があるイベントだ。

俺は頭の中で今まで欠けていたピースがはまったかのように一つの考えが一致した。

 アニメ好きの一般参加者、コスプレイヤーのコスプレ参加者、サークル参加者、この三つのオタクの属性は違う者のオタク同士が同時に一度に楽しめるイベントである。

 それならばオタク同士として仲良くさせるきっかけもできるのではないか。

 陸野が一般参加者として参加し、小宮がコスプレ参加、深山がサークル参加として異なる形での参加になるがそれは一度に彼女達を楽しませる方法ではあるしそこで全員が楽しむことができればオタク同士で仲良くなるキッカケにもなる。

 その三人が仲良くなり、オタク系のサークルにも仲の良い者同士で入部するなら抵抗がない、ということになるかもしれない。

 この三人は今のところ他にクラスの親しい人がいないのならばいっそこの三人を仲良くさせてしまうことも一つの手かもしれない。

 いっそのことこのコミケというイベントを利用してこの三名を交流させて仲良くなるきっかけを作れば、目的であるこの三人をアニメ研究会へ入部させるということも可能かもしれない、。

 俺はそんな作戦を思いついた。


 それにはまず俺も一緒に参加せねばならない。

 俺がなんとか三人を取り持って仲良くなるきっかけをつかめさせれば……、俺はそんなことを考えた。

「深山、よかったらその同人誌作り、俺にも協力させてくれないか?作画とかを手伝うのは無理だけど、アイディア出すのとか、スコ学への愛を語り合うとかなんとか協力できる範囲でやってみたい」

「え、いいの? 確かにスコルピオン学園をよく知ってるクラスメイトと語り合えるのはインスピレーション磨くのはいいかも」

 深山はそう頷いた。

「深山はさ、昔友達が二次創作でショックを受けたのがきっかけで人とは距離置くようになったんだろ? そのままでいいのか? 二次創作がとても忌み嫌われるべきって思いながらでいいもの描けると思うか?」

 深山はそう聞くと

「うーん…たしかに本当はもっと堂々としたいけど」とつぶやいた。

「二次創作だってファンとしての立派な愛の形だって証明してやろうぜ!二次創作はただの嗜好を詰めた産物じゃない、ファンとしての立派な愛の形だってわかってもらおうぜ!お前の作品が凄いって多くの人に見てもらおうぜ」

 俺はそう言って深山に協力することにした。


 いろんなアニメを見ているとこうやってあらゆるジャンルを知っていることになるのでこうしてアニメが好きなクラスメイトとはどんなアニメの話題ができることは利点だと思えた。

 陸野の好きな「コールドエンブレム」小宮が好きな「サタンフォーチューン」に御山が好きな「スコルピオン学園」といいどのアニメも全話視聴したタイトルばかりだ。

 しかしそのおかげでこうしてそれぞれ異なるアニメが好きなクラスメイトともどの話題も共有できるというのは強みだった。

 あながちアニメを見まくっていたという趣味は使えなくもない


 深山の夏コミに同人誌を出すという目標を聞いた俺は、なんとなくその翌日の放課後も美術室へ顔を出した。

 部活動も終わった下校時間である美術室は夕焼けの光が窓から差し込み、石膏像がオレンジ色の光で照らし出されていた。

 深山は美術の授業の居残りで課題を制作していた。

「よう、やってるな」

 すでに美術部員も下校した美術室で俺と深山は二人っきりだ。

「深山はさ、なんで同人誌を出そうと思ったんだ?」

 二人っきりの美術室で、俺は深山に気になっていたことを聞く。

 自分の作品を見てもらいたいのであれば同人誌を作ってイベントで直接頒布という形しかなかった昔と違い、今であればSNSといった媒体でいつでもウェブ上に投稿して自分の作品を人に見てもらうことは簡単だ。

 それをなぜ自費出版という高校生にとっては印刷費などの多額の金を使い、わざわざ同人誌を作ってイベントに直接参加という多大な手間と時間をかけてまで同人誌という形で出したがるのかがよくわからなかった。

「自分の作品を人に見てもらいたいだけならネットにアップするだけでも見てもらえるんじゃないのか?現に深山のpixiv作品はすでにブクマとか結構ついてたし」

 俺がそう聞くと、深山は作業する手を止めて質問に答える。

「私ね、尊敬する作家さんがいたの。三年前にスコ学のの同人誌を出してたサークルさんで。あの頃はまだ中学生だったからイベントに行くなんてできなくて通販でその同人誌を買ったの」

 三年前といえば俺達はまだ中学生だ。

 ちょうどその時期がまさにスコルピオン学園のアニメが放送中で、当時はまさにリアルタイムで流行中のジャンルということでスコルピオン学園の同人誌を出しているサークルも多かっただろう

「そしたらその同人誌を読んだ時、凄い本だと思った。原作の内容を生かしていてなおかつその作家さんの良さも詰め込んで。その本を読んだ時に、二次創作でもこんなすごいものがあるんだ! って衝撃を受けた。今でもその同人誌は私の宝物。それでいつか私もこういう同人誌を作りたいってそういうのに憧れて自分もこうやって誰かのきっかけになるような同人誌を絶対作りたいって思った」

「へえー。そんなことがあったんだ」

 二次創作は内容によってはとても素晴らしいものがあると聞く。

 そしてそれに巡り合った時はなんともいえない感動が渦巻くという。

「自分の描いた世界を紙の本という形にするってのはとても感動なことなんだって。だって自分が描いたものが本という形になるんだもの! ネット上にアップしただけよりも印刷された本にするっていうのがすごくいいんだって。イベントに直接参加して自分の本が目の前で売れた時、それはすごく感動なものなんだって。同じジャンルが好きな人に自分の本を買ってもらえる、それが漫画家気分を味わえるとか」

 ネット上にアップロードしただけではデジタルのデータ上でのやりとりのみで形に残ることはない。その点同人誌として紙の本として印刷すればそれは形になり、なおかつそれをイベントで頒布することは目の前で自分の作ったものが売れるということである。

 それは確かにオンラインでは決して味わえない、オフラインだからこその楽しみだ。

「だから一度その感動を味わってみたいんだ。自分の作った本を直接目の前で売れるところを見たいし、同じジャンルの人に気に入ってもらえたってイベントならではの空気を味わいたい。だからネット上で発表するだけじゃなくて同人誌を作ってイベント参加したいって思うようになったの」

「確かにそれは直接目の前で反応を見れるリアル世界でのイベントならではだな」

「それに、私はやっぱり同人誌っていう紙で残せる媒体が好き。ネット上にアップロードされた作品はいつかサービス終了とかで二度と永遠に見られなくなってしまう可能性があるけど、同人誌は紙だからサークルさんが活動をやめても買った本はずっと手元に残しておけるから」

 昔はpixivやツイッターみたいなイラスト投稿ができるSNSなんてものはなく、同人活動や二次創作をやってる人はみんな自分のホームページ、つまり個人サイトを作っていたという。

 しかしウェブ上にサイトを作るということにあたっての欠点は閉鎖すればサイトの物は永遠に見ることができなくなってそこで終わりで、サーバーのサービス終了でも多くのサイトは闇に葬られたという。

 だから昔流行ったジャンルには本当はアニメ放送当時のリアルタイムにはネット上にいっぱい二次創作あったのだろうがそれらは今は残ってないことが多いのだ。

 PixivやSNSといった無期限に作品を公開できる場所がなかった時代はそうだと俺は以前ネットで見た。

 それならばネットなどデータ上だけでなく紙という形に残るものを作りたいという深山の意見も納得だ。

「その深山の尊敬する作家さんってのは今でも活動してるのか?」

 深山が尊敬する人ということはさぞかしそれだけ凄い同人誌を作ったという人だろう。どんな人かが気になったのだ。

「もう今はやってないみたい。三年前に私が同人誌を買った直後に同人活動やめちゃったみたいで、同人誌の奥付にあったツイッターやpixivのアカウントも検索してみたけど「存在しないIDです」って表示されるだけだった」

「そっか」

 こういった界隈では垢消しといった突然ネット上では姿を消すことは珍しくない。

 きっとその人も何か事情があってそういった活動を辞めたのだろう。

「もしかしたらサークル名やペンネームを変えて他のジャンルで活動してるとかもあるかもしれないけど、こういう同人界隈ではジャンル変更した人を追跡するとか失礼にあたるみたいだし」

 同人の世界はあくまでもプロではなくアマチュアの活動だ。

 以前は頻繁にネット上でのツイートを更新してもリアルが忙しくなった等の事情でSNSを辞める人もよくいる。以降その人は消息不明になる、生死不明なんてよくあることだ。

 同人界隈は特に二次創作も書きたい時にはまっているジャンルで書くし、熱意が冷めたらSNSのアカウントを消すなんてことも珍しくないそうだ。

 そして別のジャンルで活動したくなった時にはペンネームもサークル名にSNSのアカウントを完全に違う名前にしたりで前ジャンルとは決別する人も珍しくないという。

 新しいジャンルで活動を始めるには前のジャンルの活動履歴や人間関係もリセットして一から、というのもよくある話だそうだ。

「でも、私その人がアカウント消す直前にツイッターでリプを送ったことあるんだ。あの本のどこがよかったとか、絵も大好きですって。そしたら数回ほどリプを返してくれてたの。」

「へえ、じゃあちょっとだけやりとりはしたんだ。だけど残念だな。すぐにアカウント消されちゃって」

「でも、ちゃんと自分の感想伝えられただけよかったと思うんだ」

 深山は「へへ」と嬉しそうに笑った。

 どんなに絵を描くのがうまい天才だってこうして見れば普通の女の子なのだ。

「中学時代に同人誌を買ったって言ってたけど、深山はいつからそういう漫画の絵とか描くようになったんだ?」

 純粋に気になる疑問である。高校生であれだけのクオリティの絵が描けるとなると、いったいいつからイラストなどを描くようになったのか。

「漫画の絵とかは小さい頃から描いてたね。幼稚園の頃から漫画の絵とかアニメのキャラとか描くの大好きで、よく真似して描いてたよ。中学からは本格的にネットにアップとかも始めた」

「やっぱ小さい頃からやっててその長年の努力で見に着いた画力なんだな」

 イラストを描くというのはすぐに上達するものではない。

 それこそ数週間や数か月といった短期間で上達するのは難しい分野だ。

 だというのにネット上ではまだ学生だったり十代といった若き絵描き作家が大量にいる。

 その人達も、中には大きくなってから絵を描き始めてうまくなったものもいるだろうがやはり多いのは昔から絵を描くことが大好きだったという人が多いだろう。

「けれど、今度初めてイベント参加までに私の作った同人誌を読んだ人が面白いって思えるような本が作れるかは不安だなあ」

 深山は不安そうな表情になる

「深山の画力ならスコルピオン学園を知らない人にもスコ学を素晴らしい作品だって伝えることができると思う。きっと深山にしか書けないことだってあるさ。」

 凄い二次創作作品を書き上げるにはまず、原作をよく理解しなければならない。

それもただ一人で見返すだけではなく、ファン同士で集まって熱く語り合うことで新たなアイディアも生まれるのではないか。

 絵柄やストーリーの構成とか、そういうその作家の技量が求められる

「でも、私がいくら思いついたアイディアだって、きっと他の人の二番煎じとかありがちとか言われないかな」

「大丈夫、お前のそのスコ学への愛があれば、絶対面白い話がかけるって」

 そのくらい深山がすでにネット上へアップしている作品はどれも素晴らしいものだった。

 それだけうまい才能があるのならきっと同人誌も問題ないだろう。

 俺はさらに思い出して深山の作品の感想を言った。

「きっとスコルピオン学園が好きな人にもかなり楽しめるものができると思うぜ」

 現に二次創作を読む人は大半がすでにそのパロディ元になった作品を大好きな人のみが読むだろう。

 同じジャンルが好な人、自分と同じ好みの人、だから「同人」という言葉があるように、同人誌といったものは同じ趣向を持つ人だけに読まれるものだ。

「そういや深山が描いたショート漫画って円盤全巻購入特典OVAに収録されたテレビ未放送の回の話あったじゃん。俺その話見てないけど、それ見てその回も見たくなった」

 深山がpixivにアップしていたショート漫画にはテレビ未放送の回をテーマにした作品があったのだ。

 いわゆるOVAというのか、アニメにはたまにテレビ未放送の話を円盤を全て購入した人限定で円盤に収録という形で発売することがある。

 円盤の各巻についている応募券を送るとその収録円盤がもらえるというやつだ。

最終回後の後日談やもしくは本編のストーリーの日常的な部分などをアニメ化した話だ。

 俺はスコルピオン学園はテレビ放送の範囲しか見ていなかった。

 DVDやブルーレイといった円盤は高校生にはとても高額な値段なので簡単に買える範囲ではない。

 テレビ放送版を全て見た視聴者がさらに円盤を集めたくなるように、そういったおまけエピソードを円盤に収録するのはよくある話だ。


「じゃあ、今度一緒に見る?」

「へ?」

「私、ブルーレイ全巻持ってるから!」


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