第4話 〜By plastic bottle
By plastic bottle
私は捨てられた。捨てられて魂まで焼き尽くされた。
そのハズだった。
それは数ヶ月前の事。私は水を入れ、それを人間に届けるという役割を果たした。ゴミ箱へ捨てられ、大きな施設へと向かった。ここで命を奪われると思っていた。
でも私はそれで良かった。長く生きていてもどうせ嫌なものをたくさん見ることになるだろうから。
でも、死ぬのは怖かった。
初めは検品みたいな事をされた。私は特に何もされなかったのだが、あの人たちの目が怖かった。みんな死んだ目をしていた。生きた死人に見つめられて掴まれて、そんな様子を見るだけでも恐ろしかった。次は自分が何かされるかもしれない。そう思うと怖くてたまらなかった。
次の行程。ここが1番怖かった。私は生きたまま、細かく細かく切り刻まれた。傷口に塩どころではなかった。
痛い痛い痛い痛い痛い。
痛みが天元突破した。傷口を執拗に斬り続けられて細かくなった私は、他にも同じ目に遭った子達と混ぜられた。私の体はもうどこへ行ったのか分からない。死ぬ前にこんな仕打ちはあんまりではないか。
次が最期。暖かさが近づいてくる。一気に熱が伝わってくる。ここが煌々と燃え盛る赤あるいは青の炎なのか、それともオーブンの様なところなのか分からない。私にもう目はなかったから。でも、一つだけ分かっていた事があった。
私はここで死ぬ。
ここまで怖い思いも痛い思いも散々してきた。今も怖いし熱い。でもここでようやく死ねる。そう思うと熱さなんて感じなかった。待ち望んだ死は近い。早く、早く……。
そこで私の意識はぷつりと途切れた。
ちゃんと死ねたんだ、そう思ったのに。私はまた、ペットボトルとして生かされた。
信じられなかった。死んだら魂はあの世へ帰ると思っていたのに。生き返った……?そんなラノベチックな事があってたまるか!
しかし現実は非情だった。やっぱり私はまたペットボトルとして生きている。今度はお茶を入れて、人間の元へと向かっている。
ああ、嫌だ…………。嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!!!
人間の元へたどり着いたらまた殺される。生きた死人の中を潜らされ、バラバラにされて溶かされる。別の者たちの体とくっつけられて蘇る。そしてこれが何度も何度も繰り返されるんだ。私は無限に殺されて、無限に生き帰らされる。記憶を保ったまま、生と死をずっと彷徨う…………。
お茶が飲み干され、ラベルが剥がされる。嫌だ!今捨てられたらまた地獄のループに……!
「お願い……。私を、助けて……。私を捨てないで!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます