第18話 半日ぶりのステータス確認

 頼むからステータスが表示されてくれ!


 その必死の願いが聞き届けられたのか、目の前に姉のステータスが表示された。

 半日ぶりくらいに見る新規のステータスは、いつもより神々しく見えた。


 さらにステータスが表示されたということは、どちらかの仮説が正しかったことを意味している。これは大きな発見だ。


 そして表示されたステータスがこれだ。



 名前: クリスティーナ・フロスト

 年齢: 17歳

 職業: 無し


 生命力: 36

 魔力 : 173

 パワー: 19

 俊敏さ: 24

 耐久力: 28


 使用可能スキル/魔法: 炎属性魔法 氷結魔法

 耐性: 氷属性魔法〇 



 うむむむむ、メルよりも全体的に能力が高い。生命力と魔力に関しては最大値かわからないが、それでも高いことはわかる。

 能力値よりも注目するべきなのは、使用可能な魔法だ。メルの氷結魔法に加え、炎属性魔法まで操ることができる。


 二人とも肉弾戦は向いていないので、戦うとなればおそらく魔法戦だ。

 メルは氷結魔法しか操れないため、クリスティーナが氷属性の魔法に耐性があるのはかなり不利だ。

 

 ここを何とかする必要がある。


 エドワルドとその家族との挨拶を終えた俺たちは、行きと同様に荷台の馬車へ乗り込んだ。

 そこには、案の定メルが粗末な服を着て座っていたが、行きのような悲壮な顔はしていなかった。


 三人が座り少し落ち着いた後に、俺はリュックからペンと紙を取り出してメモを取った。これはクリスティーナの能力についてのメモだ。


 実は一度開いたクリスティーナのステータス画面をまだ閉じていない。どれくらいの距離でなら再びステータスを確認できるのか、姿が見えていないと確認できないのか、などの検証をしていないからだ。


 とりあえずステータスのメモを取り、安心した状態でステータスについての検証もしたい。


「何を書いてんの?読み書き出来ないって言ってなかったっけ?」


 クリスティーナのステータスをほぼ書き終えた頃、ギルが俺の持っている紙に覗き込んできた。


 「ああ、ギルたちが使う文字に関してはね。書いていることは大したことじゃないよ」


 メモの内容を言うことはできない。『ああ、クリスティーナの能力だよ』と言ってしまえば、ステータスの能力もばれた上に、フロスト家に計画を知られてしまうかもしれないからだ。


 書いている文字も元の世界の文字のため、ギルは不思議そうな顔をしていた。だが俺には深い事情があるのだろうと思っているギルは、勝手に納得した表情で再び胡坐をかいた。


 この世界もおそらくは共通文字などは存在しないと考えている。そのため、異国の文字と思ってくれているなら万歳だ。


 それからギル、ウール、メルの三人は行きと同様に筆談を始めた。


 俺は参加することができないが、二人がメルに伝える内容は昨晩話した通りだ。

 相応の準備をした上で、メルと姉で戦ってもらう。それに勝利することでメルのほうが上であるということを証明するというものだ。


 俺はまたも暇な時間をステータス確認能力の検証に使った。


 まずは、一度閉じたクリスティーナのステータス画面を、姿が見えない状態で再び開けるかだ。


 全てをメモしたことを確認し、ステータス画面を閉じる。

 そして後ろを走っている豪華な馬車のほうへ意識を向け、クリスティーナの姿を思い浮かべながら『ステータス』と、心の中で唱えた。


 だがなにも反応は無い。

 ということは姿が見えていないとだめなのだ。メモを取っておいてよかった、と胸をなでおろす。


 次にメルのステータスを開き、最大魔力の閲覧方法を探すことにした。

 前回探したときは見つからなかったが、落ち着いて考えれば見つかるかもしれない。


 と、淡い期待を抱いていたが、全く分からずに轟沈。そもそもそんなものが存在するのかもわかっていないのだ。


 それ以上何の成果も得られないまま、そして魔物や盗賊に襲われることもなく、馬車は元々いた町レヴィールへと到着した。


 馬車から降りる直前、俺を除く三人が俺に向けて親指を立てていた。どうやら筆談の結果、メルの了承を得られたようだ。


 俺もサムズアップで返し、メルといったんのお別れをした。


 メルと姉が戦うのは準備をしてから。然るべきタイミングを見計らって、ということになる。それまでは今の生活に耐えてもらうしかない、というのが申し訳ない点だ。


 結局俺にできることは少ない。だがその中でできることをしていこう。


 「で、頑張れよ」


 フロスト家との挨拶を終え、報奨金をもらいに冒険者ギルドへと向かっている途中、ギルが唐突に口を開いた。


 「あ、ああ二人もありがとう。俺のせいで依頼以上の仕事になったと思うし」


 「お前は荷物持ち以上の働きをした。だがその服や、飯代と色々あった。差し引きゼロってことで、お前の取り分は結局銀貨5枚でいいよな?」


 ウールの言っている銀貨5枚は、最初に提示されていた取り分のことだ。むしろ飯代や服、メルの件など含めて取り分は無し又はマイナスくらいだと思っていたが。


 「本当に5枚ももらっていいのか?」


 そう聞くと、鋭い目つきで


 「まずギルドの登録で一枚。飯で一枚、安い宿で三枚ってところか。最低それくらいないと明日を迎えられないだろ」


 と言った。


 最初からここまで考えてくれていたのか。

 たまに見え隠れするウールの優しさに感動していると、冒険者ギルドの建物に到着していた。


 

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