第5話 スライムの倒し方

 依頼まで時間が余った俺たちは町の外へ出ていた。


 二人の装備を見るにウールが魔法使い、ギルが剣士といったところか。二人がどう魔物と戦うのか楽しみだ。


「おい、大夢といったか。お前はどれくらい戦えるんだ?」


 草原を歩いている途中、隣にいたウールが唐突に聞いてくる。


「荷物持ちだからあんまり関係ないんじゃ…」


「冒険者登録しようとしてたんなら自分で魔物狩る機会もあんだろ。それともお前はこれから一生荷物持ちする気か?」


 鋭い眼光でごもっともなことを聞いてくる。確かに今はこの二人の荷物持ちという役回りだが、冒険者としてやっていくなら戦えなければならない。いくらステータスを確認できても、戦えないなればパーティーを組むことすら叶わない可能性がある。


「まあその気は無い。無いんだが、今の俺はおそらくスライムにも勝てないほど弱い。どうにかこうにか戦える方法がないかね」


 そう言うと。前を歩いていたギルが振り返り、


 「大夢ぅーそんな自分を下げるようなこというなよ。本当は強いぜってパターンだろ!」


 白い歯を見せサムズアップだ。こういう時悪意なく人を傷つけるタイプだな、ギルは。


 「いやいや本当に弱くて…」


 と即座に否定すると


 「俺は本当だと思う。嘘をついている目じゃねえ」


 今度はウールがフォロー。何かカッコいいことを言っている感じだが、弱いのを肯定されているだけじゃねえか!


「まあ今回は戦う必要ないからな大夢は」


 そういってギルが前を向くと、


「お!スライム発見!早速行くか!」


 と、前方に現れたスライムに向かって走っていった。


「おい、あいつは馬鹿だが腕は確かだ。しっかりと見ておけ」


「でもスライムって腕が立つ人なら一撃じゃないの?一振りで終わりそうだけど」


 そう。メルの魔法でスライムは一瞬にして消えてしまった。ギルの腕を見る前にやられてしまいそうだが。


「ん?いやギルでも5発くらいはかかる。スライムは、攻撃は弱いがなかなかくたばっちゃくれねえからな」


 実はギルがあまり強くないのだろうか。それともメルの魔法が強力だったのか?ステータスで魔法の詳細まで見れればいいのだが。


「じゃあウールは何発くらい?」


「俺の扱える中で最も強い炎属性魔法で3発だ」


 俺はウールのステータスを冒険者ギルドの建物内で見た。確かに使用可能魔法の欄に炎属性魔法と闇属性魔法があったが魔力は130。メルの魔力152と大差ないはずだ。それで三発もかかるのだろうか。


 スライムに向かって走っていったギルは、見事な剣さばきを見せている。斬る。体当たりを避ける。斬る。避けながら斬る。と繰り返し、ちょうど五発目にスライムを倒した。


 その様子を見ていた俺はスライムのステータスを確認することを忘れてしまった。

 だが俺とウールの右手にスライムが一体潜んでいた。


「おい、あっちにも一体いたぞ。今度は俺がやる」


 そう言ってウールは炎属性魔法を放つ。


「ファイアーボール」


 ウールが伸ばした手の先から炎の塊がスライムに向かって飛んでいき、直撃した。威力かコントロールされているのか、草原に燃えうつることは無かった。


 ウールがもう一発撃とうとしているため、急いでステータスを確認することにした。


 種族: スライム


 生命力:6

 魔力 :10

 パワー:3

 俊敏さ:25

 耐久力:30


 使用可能スキル/魔法: 無し

 耐性: 水属性◎ 炎属性〇 氷属性× 闇属性× 


 ウールの言う通り耐久力が高い。耐久力はおそらく物理的な攻撃に対するものだ。これはギルでも5発かかるわけだ。生命力は低いようだが、これはウールのファイアーボールを一発食らっているためだろう。


 特筆すべきは耐性だ。こいつは炎属性魔法に対する耐性を持っている。逆に氷属性魔法は弱点ということは、メルの攻撃一発で仕留められたのが納得だ。


 「まてウール」

 

 俺は二発目のファイアーボールを撃とうとしていたウールを引き留めた。ウールが闇属性魔法を使えることを知っているからだ。炎属性魔法ではあと二発かかるはずだが、闇属性魔法を使えばあと一発で倒せるかもしれない。


 「ウールは闇属性魔法を使えるか?」


 「使えるが炎属性魔法よりも苦手だ。下位の魔法しか使えん」


 弱点と魔法の威力。どちらが重要かを見るいい機会だ。


 「俺は魔物に関する知識はある。スライムは闇属性魔法が苦手だ。試してみてくれ」


 ステータス確認を隠すためにそういうことにしておいた。

 ウールはしょうがねえと言いながら闇属性魔法を放つ。


 「ダークミスト」


 ウールが唱えると黒い霧のようなものがスライムを囲みこんだ。すぐにその霧は晴れたが、スライムは消滅していた。


 「倒した..のか?今まで苦手だからと闇属性魔法は使わなかったが、スライムには有効なのか」

 

 俺は心の中で渾身のガッツポーズ。生きていく道を見つけられたような気がしたのだ。魔法の威力差にもよると思うが、想像以上に耐性というのは重要らしい。もし俺も魔法が使えるようになれば、ある程度戦えるかもしれない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る