第11話 記憶
私は七年前、火災にあった。
家が焼けて、写真もなくなってしまった。
私が大切にしていた直くんとのツーショットも家族写真も。
しかしそれよりも、父を失ったことの方が私を絶望させた。
父は十年前に病気で寝たきりながらも家にいて、毎日私の頭をしっかりとした手で撫でてくれていた。
お母さんは普段から家を留守にすることが多かったから、火災に際しては何も影響がなかったみたいだけど…
私は逃げる時、首の後ろをやけどした。その傷は一生消えないと、どこか子どもながらに分かっていた。もちろん、今も………。
その時、私が逃げた場所が直くんの家だった。おばさんとは仲が良く、話したりしていたけど、その時はおばさんの蒼白な顔色は忘れられない。それから、あの時直くんが私に言った一言にいまだに助けられている。
「僕はいなくなったりしないから。僕についてて。」
この言葉の通り、直くんはいつも私と一緒にいるようになった。それは今も、きっとこの先も、変わらないんじゃないかな、と思う。
それが、私の初恋の始まりで、最悪な思い出の唯一の光………。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます