第11話 記憶

私は七年前、火災にあった。


家が焼けて、写真もなくなってしまった。

私が大切にしていた直くんとのツーショットも家族写真も。


しかしそれよりも、父を失ったことの方が私を絶望させた。

父は十年前に病気で寝たきりながらも家にいて、毎日私の頭をしっかりとした手で撫でてくれていた。

お母さんは普段から家を留守にすることが多かったから、火災に際しては何も影響がなかったみたいだけど…

私は逃げる時、首の後ろをやけどした。その傷は一生消えないと、どこか子どもながらに分かっていた。もちろん、今も………。


その時、私が逃げた場所が直くんの家だった。おばさんとは仲が良く、話したりしていたけど、その時はおばさんの蒼白な顔色は忘れられない。それから、あの時直くんが私に言った一言にいまだに助けられている。

「僕はいなくなったりしないから。僕についてて。」

この言葉の通り、直くんはいつも私と一緒にいるようになった。それは今も、きっとこの先も、変わらないんじゃないかな、と思う。


それが、私の初恋の始まりで、最悪な思い出の唯一の光………。

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