第4話 思い出

私と直くんが初めて会話を交わしたのは、3歳の時だった。

「こんにちわ、わたし、ほのかっていいますっ。えっと…その…」

「おれ、なおや。ほのか、よろしくな。」

出会った頃から変わらない、あの呼び捨て。

でも、私はなかなか名前を呼べなくて、「ねぇねぇ、」とか、「あの…」とか。

名前で呼んでほしいと頼まれた6歳のとき、たまたま、「…直くん」と呼んでみた。これなら呼べる気がしたから、14歳になった今でもそう呼んでいる。


「いやぁー、今日の事故はえぐかったわ。翔真も結構ビビってただろ?」

「オレはいつでもビクビクしてるよ。直哉とぶつかるって考えてたら攻めてけてねぇから、ぶつかるの覚悟で攻めてんだよ。」

「直くんと佐野くんはいつも一緒にいるけど、なんで?」

そんな話をしながら、私たち3人は昼食を共にすることになった。私はあまり佐野くんと仲良くないから心配だったけど、直くんがいてくれて良かった。

「オレは別に、翔真と居たくている訳じゃないんだけどな。」

「聞いてねぇぞ?」

部活の時から仲がいいのは分かっていたけど、普通に話してても仲良しなんだな、と笑みが溢れる。

「直哉と日下部はいつから仲良いんだ?」

「ただの幼馴染だよ、2歳か、3歳くらいだよな?」

私は無言で頷く。そして、「3歳です。」とだけ発する。


私の気持ちは、幼馴染でも分かってくれないんだね…………。

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