第3話 マネジメント

朝部活のマネージャーは忙しい。確かに、マネージャーという仕事が忙しいのは分かりきっていたことだけど。それに、家事ができない私にとって、洗濯をしたり、おにぎりを作ったり、部室の掃除をしたりするのはとてつもなく難しい。

「来年の夏のスタメン選考を考える頃だから、いいプレーを見せた2年からどしどしスタメンにする。頑張れよ。」

顧問からそう言われて、2年の顔がこわばる。

去年のスタメン選考の頃もこうだった。

マネージャーとしてみていても、先輩方は緊張した様子で発表を聞いていたんだっけ。

「マネージャー!ちょっと!」

「直哉が!翔真とぶつかって倒れて!」

こんなこと日常茶飯事だけど、いざとなると血の気が引くような感覚になる。

「は、はいっ!」

救急箱を持って走り寄ると、

「…ん…穂乃果…手…貸して。」

私が手を差し出すと、直くんはそれにつかまって起き上がった。

「いてて…あーやっちゃった。あ、佐野は大丈夫?」

こんな時でもメンバーのことを考える、直くんはいつもそうだ。

「オレは大丈夫。てか、直哉とぶつかんの何回目だよ。運命じゃん(笑)」

「オレが怪我するかもしれないのを運命とかいうんじゃねーよ。懲り懲りだろ、お前も。」

コントのようなやり取りに、部員からも笑いが溢れる。


「よし、やるか。オレも佐野も、スタメン絶対入んぞ!覚悟しとけよ!!」

「負けねぇー!」「よっしゃーやるぞー!」「ゲーム再開だー!」


「ありがとう、穂乃果。助かったよ。佐野も、無事でほんと良かったな。」


そんなところを好きになったんだったな、と1人考える。

そう、あの時だってそうだったーーーーーーーーー。

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