2 大原《おおはら》 大《まさる》
文化祭の閉会式の後六人劇のメンバーは話し合いのため第二生徒談話室を使うことを許され、各々が集まっていた。
「今回の学劇祭で行われる六人劇を私たちで行うわけですが何か意見のある方はいらっしゃいますか?」
六人劇のメンバーと言いながら揃ったのは4名だけだった。
「私はパス 本気でとかやるつもりないから好きなようにして んじゃそれだけだから」
そう言って有間 陽子さんは出て行ってしまった。
「どうするつもりなんだ?これから」
そう口を開いたのは大原さんだった。
「まず人が集まらないと話し合いもできそうにないですから来週の金曜日の放課後、再度集まると言う形でどうでしょう?」
「まあ3人で話しても仕方がないしな」
「羽田君もそれでいいかな?」
「分かりました。後、俺には出来るだけ目立つ役をください」
「わかったよ。それじゃまた来週お願いしますね」
そう言って2人を部屋から送り出し、私は大きく深呼吸をした。
俺の名前は
「大に個性をあげたかったから」
と母は言い、父は
「初対面の人に話した時覚えてもらえるし、いい話の種になるだろ?」
そんなことを言っていた。
今の歳になると気にならないが小学生くらいまでは名前で茶化されることも多く、その度に強く訂正したりしていた。そんな経験からか俺は今、風紀委員の副委員長として生徒会の活動にも取り組んでいる。今回俺は六人劇のメンバーに選ばれた。そしてリーダーになるであろう2年生の名前で『佐倉優奈』の名前を聞いて俺は任せられると思った。生徒会活動で見た彼女は賢く柔軟性があり他者の言い分を汲み取り反映させることができる人物に俺には見えていたからだ。
第二生徒談話室から俺と1年が一緒に出た。何も話さないのも悪いと思い話しかけた。
「君の名前は羽田君と言ったかな?俺は大原だ。よろしくな!」
「はい、羽田です。よろしくお願いします」
そう言った彼は疑問を抱くように頭を傾けていた?
「どうかしたか?」
「この自己紹介って4人いる時にするべきだったんじゃないかと思って」
「言われてみればそうだな はははは」
「そんな大笑いして大丈夫ですか?職員室の近くっすよ」
「なあに、文化祭終わりに大きな声を出そうと怒るような先生はいないさ」
「それもそうですね。んじゃ片付けあるんで行きます」
「おお、またな」
そうして羽田と別れた後、タイミングを見計らっていたであろう人物に声をかけられた。
「大原君ちょっといいかい?」
それは生徒会長の
「佐倉!これはどう言うことだ!」
俺は入るなり彼女を問いただした。
「大原さん盗み聞きですか?趣味が悪いんじゃないですか?」
「そんなことより、さっきの話はど言うことだ!あいつがリーダーをするなんて話一切してないだろ!」
「ですが私がするとも言っていませんよね?」
「それはそうだが…」
「それに言いましたよね?本条君が他の人達をやる気にさせれば私がリーダーになると」
「あいつにそれができるのか?」
「できますよ。彼ならね」
そう言った彼女はとても嬉しそうに微笑んでいた。
「すまん。俺も少し熱くなってしまった。そして冷静に考えれば何となく君が誰かの思惑の中にいることも分かった」
「ありがとうございます」
「ただ俺は君がリーダーとなり六人劇を作って欲しいと思っている」
「それは本条君次第ですね」
「まあ何かあったら気軽に頼ってくれ」
そう言って俺は第二生徒談話室を出た。隣の生徒会室の隣の生徒会長室の戸へ視線を向けボソッと呟いた。
「今年の学劇祭も荒れそうだ」
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