いつもの問答
窓辺に置かれた椅子に腰掛け、ぼんやりと外を眺める。お母さんにはたまにそういう時間があって、私がどんなに呼び掛けても、お母さんは返事をしてくれない。
ただただぼんやり、日が暮れるまで外を眺めて、そうしてやっと動き出す。頻度は月に一度、記憶にある最初の頃は、泣きながらお母さんと呼んだものだけれど、今となってはいつものアレだと、どうでもよくなっていた。
「……」
『ぷに』
今日も月に一度のアレの日。だけど今日はいつもと違う。窓の外には黒猫が一匹、お母さんに向けて鳴き声を上げている。どうせ何の反応もないんだとお母さんを見れば、いつもと違って表情があった。
──驚いてる。
何に? 分からない。
「……あの」
『ぷに』
口を何度もパクパクさせて、だけどお母さんは黒猫に言った、いや問い掛けた。
「くっ、黒猫の鳴き声として、それ、合っているの?」
……え?
『ぷーにーぷにっ』
黒猫は応えたけれど答えず、どこかに行った。
「……そんな日もあるか」
そしてお母さんはまた、日が暮れるまでぼんやり外を眺めだす。
「……」
いや気になるやん、そう言われたら。
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