編み物の季節になりましたね
百円ショップで大量に毛糸玉を買った夜花。
眠りのお供である黒猫のぬいぐるみの為に、服や帽子を作ってあげようと思ったのだ。
自室の床の上に買ってきた毛糸玉をぶちまけ、傍に落ちているのを一つ手に取り、先端をつまんで指に巻いていく。
ある程度の大きさになったら指から外して、更に巻いていく。
これは気分の問題。
まーるい毛糸玉で編み物がしたいのだ。
どんどん巻いて巻いて、拳二つ分くらいになったら、次の玉を作っていく。何せ大量に買ってきたのだ、棒針やかぎ針で別々に編んでいきたい。
無心でやっていくと、鈴の音が耳に入る。
目を向ければ──飼っている黒猫が、前足で慎重に毛糸玉に触れていた。
強めに押すと毛糸玉がちょっと動くので、黒猫は一瞬跳び上がり、弱めに押すと揺れる程度で、黒猫は首を傾げてまた押していく。
「何やってるの」
声を掛けると黒猫は「ぷにぃっ!」と鳴き声を上げて、部屋から出ていってしまった。
びっくりしたらしい。
「……」
夜花は何事もなかったように、毛糸玉を巻いていく。
けれど今度は無心ではなく、何を編もうか考えながら巻いていた。
黒猫のぬいぐるみの為に作る服や帽子、それから──飼い猫の為にブランケットでも編んであげようか、とも。
そろそろ必要な季節になってきた。
──使ってくれるといいな。
そんなことを思いながら、夜花はひたすら、毛糸玉を巻いていくのだった。
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