第80話【有力者達との面会】

 ゼアルータルを出た僕達は約束の時間前に斡旋ギルドへ辿り着いていた。


「すみません。

 ギルマスのアーリーさんに呼ばれて来たんですが……」


「はい。伺っておりますのでこちらの第一応接室へお願いします」


 僕達は受付嬢の案内で第一応接室へと向かった。


「こちらになります。

 どうぞソファに座ってお待ちください。

 もうすぐギルマスと会議のメンバーが来られると思いますので」


 受付嬢はそう僕達に伝えるとお辞儀をして戻っていった。


 ――数分後。


「すみません。待たせましたか?」


 斡旋ギルドのアーリーギルドマスターが最初に部屋に入って来て僕達に断りをいれる。


「いえ、今来たところですので大丈夫です」


「それは良かったです。

 では、私は面識があるので他の方達の紹介をしますね」


 アーリーはそう言うと「どうぞ」と言って他のメンバーを部屋に招き入れた。


 そこには、アーリーギルドマスターの他、同年代の少しきつめの顔をした女性にニッコリとほわほわした感じの女性。

 そしてその女性の後ろから若い男性が2名現れたが、その男性のうちの一人は先程見たゼアルだった。


「えっと、順番に紹介していくわね。

 まず、こちらがこの町の町長である『レイナ』さん」


「バグーダの町長を務めているレイナだ、君の事はアーリーから聞いているがもう少し詳しい話しを聞きたいと思うので宜しく頼む」


 レイナが軽くお辞儀をする。


「で、こっちの女性が薬師ギルドのマスターを務めている『シール』で後ろに控えているのがそれぞれ薬師ギルドの部門を取りまとめている『ゼアル』と『ロギス』よ」


「薬師ギルドマスターのシールです。宜しくです」


「薬師ギルドの調薬部門の長をしている『ロギス』だ」


「薬師ギルドの化粧品部門の長をしている『ゼアル』だ。

 君が噂のナオキ殿だったとはな。

 側にいるのも先程お店に来ていたお嬢さんじゃないか。

 なんだ? 偵察にでも来たのか?」


 薬師ギルドの面々の紹介をした時にゼアルがこちらに気がついて不満を言った。


「治癒士のナオキです。

 こちらは助手のリリスです。

 お店に行ったのは偶然で彼女が化粧品の良い店があると聞いたので行ってみただけで他意はありませんし、あのお店が今日会う方のお店とは知りませんでしたよ」


 ゼアルの言葉にアーリーは不思議そうに「あなた達知り合いだったの?」と聞いた。


「知り合いと言える程の付き合いはありませんが温泉で顔を併せて少しばかり話をさせて貰っただけですよ」と説明をした。


 ゼアルは少し不服そうな表情をしたがそれ以上の追求はしなかった。


「まあ、いいでしょう。

 では、話し合いを始めましょうか」


 進行役は全員を知っているアーリーが担当する。


 僕は手始めに領主からの許可証を提示して自らの立場と目的を説明する。


「――ですので、バグーダでも個別治療の許可と患者の情報提供を頂けたらと思います」


 僕の説明に薬師ギルドのロギスが反応する。


「それは、我々に患者を治す能力が無いからよこせと言っているのか?」


 まだ若いが少々強面のロギスがギロリとこちらを見るがなかなかの眼力だ。


「どう取られるかはそちらの事ですが、こちらとしてはそちらの患者を奪う意図はありませんよ。

 ただ、投薬や塗り薬では治療が無理、もしくは難しい患者がおられるならばその方を紹介して頂きたいと言っているにすぎません」


「ふん。どうだか分からんが本当にこんな奴が治癒士なのか?」


 調薬部門を束ねているためかロギスはあまりいい表情をしない。


「まあ、いいんじゃないですか?

 どうせ薬じゃ治せない奴らを紹介するだけでしょ?

 化粧部門の自分には関係ないみたいだしね」


 ゼアルは我関せずの姿勢でこちらに興味がないそぶりをする。


「まあ、領主様の許可証がある時点でこちらが何を言おうとも文句をつけられる状態ではないのでしょう?

 でしたらそちらの希望通りにさせてあげたら良いのではないですかね?」


 ここで町長のレイナが発言した事により薬師ギルドのシールも黙って頷いた。


「分かりました。

 レイナさんがそう判断されたならば私共はその決定に従いましょう。

 では後日、患者さまの情報を届けさせましょう。

 ロギス、いいですね」


「しかし……」


「ロギス!」


「はい、分かりました。

 そのように手配致します」


 最後まで渋ったロギスだったがギルドマスターのシールに言われては従うしかなく、一歩引いてからお辞儀をした。


「話はまとまったようね。

 斡旋ギルドからも情報があれば教えるから対応してちょうだいね」


「分かりました。

 出来るだけご期待に添える形で対応をさせて頂きたいと思います」


 僕はそう言うと立ち上がってその場にいる面々に一礼してから「では、情報をお待ちしています」と残して部屋を後にした。


「思ったほど荒れなかったな。薬師ギルドはもう少し嫌味を言ってくるかと思ったけど、あの調薬担当のロギスが不満そうにしていただけで後は淡々としていたね」


 僕は思ったよりも話がスムーズに進んだ事に若干の違和感を覚えたが、進行役のアーリーが事前に説明をする根回しをしていたのだろうと結論づけた。

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