第13話【副作用の治療方法はちょっとアレだった】
副作用の治療方法としての魔力の吸い出しは、やはり心臓の位置に手を添えてから魔法を唱える事で良かった。
ただひとつ【肌に直接手を密着させる事】と言う条件が追加されていなければ。
「すまない、やっぱり嫌だよね。
仕方ないから食べ物を大量に買ってくるよ。
出来るだけ美味しそうなものを選んでくるからそれで勘弁して欲しい」
僕がそう言って部屋を出ようとするとリリスか引き止めた。
「それって私に『太れ』って事よね? 冗談じゃないわよ!」
「でも、直接触られるのは嫌なんだろう?
だったら食べて魔力を燃やすしか方法がないんだけど……」
「ゔっ……。うーん」
リリスは頭を抱えて「あー」「うー」と言いながら部屋の中をせわしなく歩いていたが最後に僕の顔を見て言った。
「……仕方ないか。いいわよ治療をお願いするわ。
で、何?上半身裸になればいいの?かなり恥ずかしいけど……」
やると決めたら
「い、いや。待ってくれ。無理に脱がなくてもいいんだ。
右手だけ服の裾から入れさせて貰って心臓の位置に手を添えさせて貰えれば大丈夫だから!!」
僕は慌ててやり方を説明する。
「そ、それなら少しは恥ずかしさは軽減出来るかな……」
「じゃあ僕がベッドに座るから僕に寄りかかるように身体を預けて貰えるかな。うん、そうそう」
リリスが言われたとおりに僕に寄りかかる。
彼女の華奢な身体つきに背中の体温が僕の胸に感じられて僕の鼓動が早くなるのが分かる。
「それでは、失礼して服の裾から手を入れさせてもらいます。
出来るだけ余計なところは触らないようにしますが、触れてしまってもご容赦ください」
僕はそう言うとリリスの服の裾を少し捲って右手をそっと入れた。
出来るだけ触らないようにとは思うが、後ろから服の中が見えない状態で位置を合わせるのは無理がある。
この辺かと手を動かすとお腹に当たり、リリスが「ビクッ」と肩を揺らす。
「すみません。もう少し上のようですね」
慌てて僕は正確な位置を探るために再度手を上に伸ばす。
――ふよっ。
何かとてつもなく柔らかい何かに手が触れた。
「ちょっ……」
リリスが何か言おうとするが、僕は魔力溜まりの位置を見つけて「ここです」と先に宣言した。
「――ゔぅ」
後ろからなので顔は見えないが耳まで真っ赤にしたリリスが小刻みに震えているのが分かる。
「治療を開始しますので、このまま暫く僕に身体を預けたままでお願いしますね」
リリスの胸に手を置いたまま、その柔らかさを、出来るだけ意識しないように無心になっていた。
「ねえ。まだ時間がかかるのだったら少し話をしない?少しでも気が紛れると思うから……」
リリスも黙ったままだと気が手に集中しすぎて恥ずかしかったからか会話をしようと言ってきた。
「いいですけど、何か聞きたいことでもありましたか?」
「そうですね。とりあえずナオキさんの歳を聞きたいです。
見た目は筋肉質の締まった身体つきですし、まだ若そうですからちょっと気になります」
「歳ですか?」
(えっと、大学を出てから救急救命士の養成学校に行ったから……)
「多分25歳だと思います」
「多分……って、自分の歳も数えられないの?」
「あはは、僕はちょっと特殊な事情があるから……」
流石に『一度死んでます』とは言えないので笑って誤魔化した。
「そう言う君は
女性の年齢を聞く時には若く見積もれと誰かが言っていた気もするが、僕はそんな事は忘れて自分の予想をそのまま言った。
「……女性に年齢を聞くのはマナー違反だと思うけど、私ってそんなに歳がいっているように見えるのね。かなりショックだわ」
リリスは僕の予想にかなり不満がある様子で愚痴を言いながら教えてくれた。
「私、まだ18歳なんですけど」
「じゅっ じゅうはちぃ!?」
リリスの年齢に驚いた僕は思考が停止していた。
「まあ、私もナオキさんの事は20歳くらいかなぁと思っていたからね。本当、人の年齢当てはしないに限るわね。あはは」
そんな会話をしているうちにリリスの治療が終わりを迎えた。
「おっ! どうやらうまく魔力調整が終わったみたいだな」
僕の言葉にリリスは「はぁ、やっと終わったのね」と伸びをした。
だが、それがいけなかった。
ぐっと伸びをしたリリスのお尻が座っていたベッドからずり落ちてしまったのだ。
「おっと!?」
バランスを崩したリリスをちょうど後ろから手を回していた僕は慌てて抱き寄せたのだが、もとより胸に半分かかっていた手が彼女の身体が下がった事により、あろうことか完全に胸を掴む形になってしまった。
ふかっ!ふにゅっ!
ふたつの柔らかい丘の感触をまともに受けた僕は凄まじい動揺から頭が真っ白になりそのままリリスを抱きしめる形で後ろ向きにベッドに倒れ込んでそのまま気を失った。
「ちょっ ちょっとぉ」
記憶の彼方にリリスの非難めいた声が聞こえた気がしたが、僕の目が覚めることは無かった。
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