中高一貫と言うこともあって、早期受験対策として私たちの学校では、「理科」は一年生の時から二、三年次の内容も踏まえた「分野」ごとの学習カリキュラムが組まれており、今日は生物の実験がある。


 準備段階として、3日前にペトリ皿にデンプンを入れた寒天培地を入れ、その中央に落ち葉の下の土をセットしておいた。今回の授業では、培地の表面全体にヨウ素液を加えてみるとどうなるのか、という観察を行うことになっていた。

 結果と考察を書き込むプリントが各班の実験机に回されていく。先生の意図を読み取ろうと、私はそのプリントに手をかざし、目をつむった。


 ──ふうん、なるほどね。


 どうやら結果はいたってシンプルのようだ。


 土の中には、菌類・細菌類といった分解者がいる。そのような微生物がデンプンを分解してしまったため土の周りは青紫色に変化しない、という訳か。それから、生物の自然界での役割は、生産者・消費者・分解者の三つに分けられる。植物のつくった有機物をめぐる「食べる」、「食べられる」という生物種間の関係を「食物連鎖」と呼び──。

 私はすぐに要点をつかんだ。



 ✤ ✤ ✤



 確かに、私は定期テストで学年1位ではあるが、そこまで真面目な人間ではない。

 この力を「身につけて」以降──というと語弊があるし、「善用」というとその暗躍ぶりが透けて見えそうだ。だが、この力が私の成績を上げることに、一役買っている事は否めないだろう。

 例えば、社会のテストの時だったら、目をつむれば、そこにぱっと先生が出てきて、「そうそう。ここは絶対押さえておきたい問題だよね」、「フランシスコ・ザビエルがやって来た。1549 以後良く 伝わるキリスト教、で覚えるんだったでしょ」という風に、先生に助言をもらいながら解いている、なんてことは決して、誰にも言えないが。

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