第21話 カントリーロード-21
生徒会室に行くと部屋の前で、大河内が女子生徒と口論をしていた。何事かと思って鉄子は駆け寄った。葵が鉄子を見つけて迎えた。
「どうしただ」
「あのいじめ改善週間の件で文句を言ってきたの」
「なしてだ?」
鉄子は葵を押し退けて、口論している大河内の横に立った。相手の女子二人は、染めたか脱色したかで茶色の髪だった。ずぃっと身を出した鉄子を見ると、
「ンだよ、おまえは?」と言いながら睨んだ。
「おら、上杉鉄子というだ。あんたたちは」
強気に言いのけた態度と、訛りのある口調に気押されて二人は少し怯んだ。
「おまえも、生徒会の委員か?」
「おら、違うだ」
「じゃあ、引っ込んでな」
「んだども、いじめの問題はおらが提案しただ」
「ンだってぇ?おまえか、あんな下らねぇポスター作ったのは」
「違うよ、ポスターは、僕たち、生徒会全員で作ったんだ」
大河内が鉄子をかばうように言った。しかし、鉄子は大河内を押し退けて言った。
「あのポスターのなにが悪いだ?言ってみろ」
「ね、中に入って話し合いましょうよ。ここじゃあ、話し合いにならないわ」
葵は鍵を開け、そう言いながら扉を開いて全員を招いて入れた。
机を挟んで二人の茶髪の女子生徒と、生徒会の委員が対峙した。大河内は、睨みつづける二人の女子生徒にどう切り出したものかと思案していた。バッジの色は三年であることを示している。上級生に対する礼儀をわきまえて話を切り出そうとしたが、やはりさっきの剣幕では話し掛けにくかった。一方、鉄子もぐっと睨んでいる。そんな気配を葵が察して、すっと立ち上がると自己紹介をした。
「あらためまして、私が書記の葵です。二年生です」
そしてそのまま生徒会委員の紹介を始めた。
「こっちが、会長の大河内君。そっちが総務の小島君、庶務の鏡原さん。それから、今回の活動のきっかけを提案してくれた上杉さん」
二人の女子はぐっと鉄子を睨んだ。
「あの…、お名前を教えていただけませんか?」
葵の問い掛けに、ひとりの女子が応えた。
「アタシは太田。三年F組。こっちは同じクラスの田口」
名前を聞き出すことに成功して、大河内はようやく話し掛けた。
「あの、太田さん。さっき外での話ですが、今回の生徒会のキャンペーンに何か不満でもあるのですか?」
「あるのですかってなぁ、なんなんだよ、あれは」
「そうだよ、あんなくだらないことしやがって」
「そう言われても…、今回の企画は先生方にも賛成していただいて、そんなに大げさなものでなくて、ちょうどいいと思ったんですが、何か問題があれば言ってください。我々のほうでも不備があるのなら対処しなければなりません」
「そんだ、まずはっきりと理由を言わねば、なんにもよくなんねえ」
鉄子の剣幕に今度は二人の女子が怯んだ。
「なんだよ、こいつ。どこの方言だよ」
「ワケわかんねえヤツだな。こんなのの言いなりになってんのか、あんたらは」
「どういう意味だぁ?」
「まァ、いいよ」太田は鉄子に向かって手を翻しながら言った。
「いいさ、言うよ。今回の…キャンペーン、って言ったな、キャンペーンはだな、あんなのはいじめを作るようなもんなんだよ」
「どうして?」
「だいたい、普段の日常の中で不快になるような言動を慎みましょう、なんてな、アタシたちみたいなヤツをつるす理由にしかなんないんだよ」
「そうさ。ちょっと口の効き方が悪いって、文句言われてみろ。たまんねえよ」
「でも、どうして?」
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