第4話 体力増強
翌日の午前九時。
俺の2度目の人生の方針が決まった。
堅実に生きること。
だが堅実に生きるなんて言う具体的な目標も定義も曖昧なモノだ。
何を努力し、何を目標とするかを決めないとな。
まあ努力する内容に関しては大方決まっている。
勉強。
人との交流。
そして運動だ。
将来的にスポーツ関係や力仕事の職に就かない限り運動は必要ないかと思われるかもしれない。
この運動はあくまで、学生のうちに必要となる要素なのだ。
運動単体では勉強と重要性を比較した時、明らかに運動の方が重要度は低い。
しかしそれは単体での場合だ。
運動をしたことで得られる運動ができるようになるという1次効果以外の2次効果。
健康維持という面もあるが、俺が求めている2次効果は違う。
俺の冴えない学生生活で知ったこと、それは、
運動ができるようになれば、モテる!
小学生のうちはルックスに関わらず運動出来ればモテる(※俺調べ)。
そしてモテる奴は大体友達が多い!(※俺調べ)
中学、高校でもそれが通じるかどうかは分からないが、小学生の特に単純な低学年のうちは運動が出来ればクラスから1目置かれるはずだ。
まずは小学一年生という人との交流の土台になる時期で、友人を作ることから始めよう。
人気になるための運動。
下心見え見えだと笑ってくれて構わない。
これも俺の将来の為だ。形振りなんて構ってられない。
それに小学一年生での勉強なら馬鹿な俺でも流石に問題は無いし、子供の頃に運動したかどうかが今後の運動神経を決めるとテレビでやっていた。
時期的に考えれば今運動を頑張っておくことが最善だ。
そうと決まれば行動あるのみ。
部屋のクローゼットを漁り、奥にねむっていた子供用のトレーニングウェアを発見する。
幼少からインドア派だった俺にはあまり使い道のない服であったため、長らく放置されていたのだろう。
部屋着からトレーニングウェアに着替え、玄関でスニーカーを履く。
まずは体力作りから始めよう。
体力という土台なしにスポーツはできない。基礎ほど重要なものは無い。
靴のつま先で「とんとん」と地面をノックする。
体が小さくなって3日目になるが、まだ体が小さくなったことに慣れない。
前の身長から60センチは低い。
目線の高さや手足のリーチ、前の体とは何もかもが違う。
同じ人間の体でも、22年も年季が違えば差異は大きい。
この体に慣れさせるという意味でも、走り込みは効果がある。
「あら? 翔どこか行くの?」
朝食の食器洗いを済ませた母が尋ねる。
ちなみに父さんは出勤、姉貴は空手の習い事だ。
「ん、ちょっとそこら辺走ってくる」
「本当に唐突ね。今までそんなこと無かったじゃない」
「いやぁ、最近運動不足だしさ」
とても小学一年生とは思えないセリフを中身が28歳の俺が言う。
かなり際どい発言かもしれないが、昨日母さんは存外鈍いということを知ったので、余程おかしな言動をしない限り気づかないはずだ。
「ふ~ん、そう。車には気をつけてね」
ほらね。
まあ小学一年生という気分が移ろいやすい時期なら、ちょっと真面目になったところで不審に思われることは無いだろう。
母さんからしたら精々服の好みが変わった程度の変化だ。
「うん、じゃあ行ってきます」
母さんの忠告をしっかり受け止め、俺は家を駆けだす。
朝方の空気は心地よい。
所々に緑が生い茂っており、代り映えのしない閑静な住宅街の風景にも自然が彩られている。
確か近くに河川敷があったな。
俺の記憶が正しければあそこは人通りもほとんど無いし、木々が生い茂っていて空気が美味しいはずだ。
走るには絶好のポイントだ。
そこで少し川に沿って走ってみるとしよう。
河川敷にランニングでやって来た。
ここに来るまでおよそ500メートル。
少し走った感じ体の使い方に違和感はあれど、様々な生活習慣病に侵されていた28歳の俺よりは軽快に走れる。
これならかなり走れそうだ。
流石子供の体と言ったとことだ。アラサーの体とは体力がまるで違う。
よしっ、このまま10キロでも100キロでも走ってやろう!
——3キロ地点にて。
「ゼェ……ゼェ……、し、死ぬ……。も、もう走れない……」
早々にダウン。
子供だからといって無条件に体力がある訳では無い。
子供の体といえど、運動していなければ体力は衰えるものだ。
家に籠りっきりの俺のようにな。
基礎体力がないのも早々にバテてしまった一因だが、調子に乗って飛ばし過ぎたこともまた理由の一つである。
体力の配分調整も底上げもこれから地道に頑張っていくとしよう。
ゲームと違って裏技やチートがあるわけではないし、コツコツ体力作りに励むしかない。
当分の目標は、体力作りだな。
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