第51話 それぞれの役割

「まずエリックさん。異変を起こした魔獣たちを鎮める薬をお願いしました」


「もぅ大変だったよー。なんとかできたけどねー」


「作ったって、この短期間に新しい薬を開発したのか!?」


「そうだけど、ベースはもともとある鎮静薬を使っているからね。それに少し手を加えて調整したけど、問題は魔獣の大きさによって量を調整しないとなんだよね。そこは臨機応変に対応してもらうしかないかなぁ」


「だいたいの目安はどのくらいですか?」


「んー、ボアとかウルフくらいなら1本で大丈夫かな。ジャイアントベアやバイボースは2本の計算だけど個体によって大きさも違うから臨機応変に対応だねー」


「それを投与したらおとなしくなるんですね」


「睡眠薬も入れてるから投与して少ししたら効いてくると思う」


「その薬をゼノンさんにお渡しします。その時になったら使ってください」


「わかった。預かっておく」


 ゼノンはエリックからメディカルボックスに入った魔獣用鎮静薬を受け取った。


「これで少しでも多く魔獣たちを助けられますね」


 クレメンスは安心したように呟いた。


「ゼノンさんには『スコターディ』の監視と住民のみなさんの避難ルートと場所の確保をお願いしました」


「コーギに監視をさせてたら昨日の夜中に動きがあった。恐らく3日後に動き出す。ユーゴはそのために来たのかもな」


「監視は引き続きお願いします。3日後を想定して準備しますが、みなさんいつでも動けるようにしておいてください」


「りょうかーい」


「住民の避難は早い段階でしてもらう。2日後の日没までに終わらせて、避難場所で夜を越す。場所は王宮と図書館、学校の3ヶ所だ」


「一斉に動くと大変でしょうから、朝から段階的に避難していきましょうか」


「住民にはゲニウス様にお願いして『対話』で直接避難の内容を伝えてもらう。子どもたちは学校で先生方から伝えてもらうよう頼んである」


「そしてクレメンスさんには当日の学校と図書館の警護と、医療班の応援をお願いしました。そのために光の妖精との契約をできるだけ多くしてもらってます」


「警護の方は『ズメイ』のフランメとヴァッサーを学校と図書館にそれぞれ配置します。光の妖精は現在5匹と契約できてます」


「光の妖精をそんなに契約できたのか!?」


「なかなか大変でしたけどギリギリ間に合いました」


「さすが50年に1人の天才だねー」


「その呼び方はやめてください」


「いや俺も騎士団に欲しかったんだがな。本気出せばロドルフも危ないだろ」


「ゼノンさんまでやめてください」


「生まれ持った霊力の高さと剣術のスキルの高さ、そして聖獣の『ズメイ』の雌雄と光の妖精とも契約をし、攻守共に優れた能力を持つと聞いてますよ?」


「繋さんまで・・・」


 3人から立て続けに褒められてクレメンスは困ったように頭を掻いた。


「当日の動きですが、騎士団と黒師団はどのように動きますか?」


「騎士団は北の森を第1部隊、東の森を第2部隊、南の森を第3部隊、西の森をロドルフとそれぞれの隊から3人ずつ抜粋して配置する予定だ。俺は王宮を警護しながら指示を出す。黒師団も東西南北の森に隊員を配置するようだが、目的は『スコターディ』を捕らえることだ」


「黒師団のことは気にしないでこちらはこちらのことに集中しましょう」


「繋ちゃんの言うとーり、俺たちはやることをやるだけ」


「そうですね」


「エリックさんは志麻さんをお願いします。狙いが志麻さんなら何かしらのアクションを起こしてくるかもしれません」


「りょうかーい」


「クレメンスさんは予定通り学校と図書館の警護と光の妖精をロイさん、キッドさん、ライアンさん、ロドルフさんに1匹ずつ付けてください」


「わかりました。隊長と副団長に従うようしておきます」


「医療班の方には王宮で治療に専念していただくために、軽傷者は現場で光の妖精に、重傷者は王宮で治療します。重傷者が出た場合は『フェンリル』が王宮まで運びますので預けてください。東西南北の森に1頭ずついます」


「繋はどうするんだ?」


「私はユーゴさんを捜してみます」


「気をつけてね」


「はい。みなさんもよろしくお願いします。どうか無事で」


 4人は互いに目を合わせて頷き合った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る