第50話 協力者会議

ーカランカランー


「こんばんはー。久しぶりだね、ゼノンさん」


「ああ、相変わらずみたいだなお前は」


 閉店後の薬屋に訪れたゼノンは久しぶりの再会に顔を緩ませた。


「まだゼノンさんだけですよー。こっちで座ってお話しましょー」


 店の奥にある小さなテーブルの前の椅子にゼノンを座らせ、エリックはその正面に座った。

 お互いの近況を報告し合っていると再び店の扉が開いた。


ーカランカランー


「遅くなりました。お疲れさまです」


「クレメンスさーん、こんばんはー。まだ繋ちゃん来てないから大丈夫ですよー」


「久しぶりだなクレメンス」


「お久しぶりです。ゼノンさん」


 クレメンスはゼノンの隣りに座り、3人でたわいのない話をしながらまだ来ない繋を待った。


ーカランカランー


「すみません。お待たせしました」


 予定より少し遅れて渡瀬が店にやってきた。


「だいじょーぶだよぉ。そんなに待ってないし、ねー?」


「あぁ、俺も少し前に来たところだ」


「僕も今来たところだからそんなに待ってないです」


「ありがとうございます」


 空いているエリックの隣りに座った繋は、さっそく本題に入った。


「今日集まってもらったのは、みなさんに報告があるのと有事にどう動くかを決めるためです」


 協力者として渡瀬がそれぞれにお願いしていた内容は他の3人は知らないため、それも含めて話していった。


「まず本部にいる兄から連絡がきました。同じ情報・通信・セキュリティを担当している方がデータや情報を改ざんした可能性があるそうです」


「それは本部に黒幕の仲間がいるということか?」


「いえ、それが様子がおかしかったみたいです。まるで別の誰かが乗り移ったかのようで、本人の意識はなく気付いていなかったみたいです」


「しかしそんなことできるのでしょうか。人を操ることなんて」


「異世界のどこかにはあるかもしれないね。俺たちが知らない未知の力とか」


「確かに魔法が存在する世界はあります。しかし世界を渡る際は特殊な力を制御するために、指輪型の制御装置を付けているはずです」


「その装置もいじられているってことか?」


「恐らく。制御装置も兄たちが管理してるので。他の世界に渡るときに装置を『有効』に切り替えるんです」


「それでその操っていた黒幕は分かったのかい?」


「確実な証拠がないので絶対とは言えませんが、目星はつきました。ユーゴ・ガルシア、『フォードランド』出身の案内人です」


「じゃあその『フォードランド』では魔法が使えるってことだね」


「はい。全ての人に魔力があり属性があります。力の大きさはそれぞれ違いますが産まれたばかりの赤ちゃんにもあります」


「ソイツが他の世界でも好き勝手やってるってことか」


「通常は案内人の異世界への移動履歴は残るようになっていますが、その履歴が書き換えられたようです」


「その痕跡をお兄さんが見つけたんだね」


「はい。操ってデータやセキュリティの書き換えをしていたようです。外部からには強いですがまさか内部からとは兄も考えてなかったみたいです」


「まぁそうだよね。だいたいそうゆーのは内側からに弱いからね」


「それでそのユーゴってヤツは今どこにいるんだ?」


「確認できたのは昨日、この『モロノーフ』に渡ったという履歴があったそうです」


「「「っ!!!???」」」


「やっぱりそろそろ動き出しそうだねー」


「昨日の夜、コーギが巡回中『スコターディ』が何やら動き出したのを確認している」


「こちらも準備しておいた方がよさそうですね」


 店内にピリッとした空気が広がる。


「それに関しては個人的に以前からお願いしてありましたので大丈夫です。あとはにどう動くかです」


「あぁ、なるほど。僕にを頼んだように他の2人にも頼んでいたんですね」


「そういうことです。まず私がみなさんに何を頼んだのかをお話しします」


 渡瀬は3人の目を順番に見て話し始めた。

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