第38話 解体と原因究明
「先ほどペルサキス公爵にだいたいの話は聞きました。ディゴリー団長は今回の魔獣の異変についてどう考えますか?」
「俺たちが調査に行った時はホワイトウルフとジャイアントベアに遭遇したんだが、やはりどちらも興奮状態だった。襲うのは人間だけではなくて他の魔獣や聖獣、妖精も襲われていた。駆除して解体、調査したんだが寄生虫や病気は何も見つからなかった」
「ということは、外的要因が考えられるな」
「そうですね。ジャイアントベア2頭を屋敷の裏に置かせてもらってます。解体してもう少し詳しく調べてみましょうか」
「血液の検査もしたいな」
「医療班の検査室でできるから頼んでみよう」
「森にも一度調査に行きましょう」
「もう日が暮れますので行動は明日からにして今日は休んでください」
ニコラスの言葉でその日は解散となった。
騎士団支部の宿舎の空いている部屋に泊まることになり、海斗たちはアレッシオに付いて屋敷を出ていった。
「明日はジャイアントベアの解体と森での魔獣調査をします」
「うちの隊員も何人か同行させてもらう」
「お願いします」
宿舎で夕食を済ませてそれぞれ用意された部屋に戻った。
次の日、海斗たちは朝からジャイアントベアの解体をするために屋敷の裏に集まっていた。
「2頭いるので二手に分かれて作業しましょう。俺と副団長で分かれます。他の隊員も分かれて付いてください。ディゴリー団長は俺と一緒にお願いします」
「了解」
「うちの隊員も二手に分かれて付かせてもらう。あと医療班からも4人来てもらったから検体や臓器はそっちに渡してくれ」
「わかりました。でははじめましょう」
ロドルフに付いた海斗は言われるがまま解体の手伝いをしていた。
解体用ナイフで手際よく皮を剥がし、臓器を取り出して医療班に渡していく。そして検査用の血液をスピッツに採り、骨から肉を切り離して部位ごとに切り分け並べていった。
なかなかグロテスクな光景だが、医師の家系で育った海斗はさほど抵抗もなく動くことができた。
「よし、こんなもんだな。そっちはどうだ?」
「こちらも終わりました。血液検査は時間がかかりますから後で確認するとして、目立った外傷はなし。首の骨以外は骨の異常もなし。臓器も見た感じは何も問題なさそうですが、検査してみないとわからないですね。1つだけ気になるのは、背中側の右肩辺りに何かに刺されたような小さな痕と内出血の痕がありました。」
「こっちも同じだ。特に変わったところはない。ただ腰の辺りに刺されたような小さな痕と内出血があった。これは偶然か?」
「まだなんとも言えません。ディゴリー団長はどう思いますか?」
「実はこの間のホワイトウルフとジャイアントボアにも似たような痕があったんだ。その時はただの虫刺されかと思って感染症を調べてもらったが何も出なかった。まさか同じものがあるとは思わなかったな」
「調べてみる価値はありそうですね」
3人が話し込んでいる時、海斗はその小さな痕を見ていた。
確かに普通なら気にしないような小さな痕だった。しかし海斗には見覚えのあるものだった。
「これって注射痕じゃないですか?」
海斗の言葉に3人同時にに振り返った。
「注射痕?」
「はい。これは虫とかではなくて注射針の痕ではないでしょうか」
「誰かがジャイアントベアに注射をしたということですか?何のためにですか?」
「いや俺もそこまでわからないですが、注射痕はよく目にしていたので似ているなと。内出血もその時にできたものではないかと思います」
パーティーで知り合い仲良くなった医師の男性が薬物依存性の研究をしており、自宅に招待された時に資料や写真を見せてもらっていた。
素人が打った注射痕は内出血の痕で変色して痛々しかった。もちろん何回も打っていたからだろうし、人間と魔獣では違いもあるかもしれない。それでも可能性はあると海斗は思った。
「仮に注射痕だとすると、誰が何のためにそんなことをしたのかだな」
「あぁ、それが今回の異変に関係があるかもしれないな。何かの薬を入れられたとしたら血液検査で出るはずだ。だが検査結果は問題なかったんだよな?」
「医療班からはそう聞いている」
「体内に残らない成分の可能性もありまね」
「その場合特定が難しいな」
「どちらにしても結果が来ないとわからないので保留にしましょう。解体したジャイアントベアは氷漬けにして保管しておきます」
氷の妖精によって氷漬けにされたジャイアントベアは近くの倉庫に保管させた。
「シャワーを浴びて昼飯にするか」
「そうですね。午後は森に調査に行ってみましょう」
解体で染みついた
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます