第37話 ノースヴェルダンと領主のニコラス
30分ほど走ったところでロドルフが
「ノースヴェルダンの南門が見えてきた。スピードを落とすぞ」
ゆっくりとスピードが落ちていき歩くほどの速さに変わった。
ロドルフが門の手前で馬車を止めると、ロイが外に出ていき門番に話しかけた。
「お疲れ様です。国王陛下の命により
「お疲れ様です。ペルサキス公爵より屋敷にご案内するよう仰せつかっております。団長にはこちらから到着された旨をお伝えしておきます」
「ありがとうございます。お願いします」
「場所はお分かりになりますか?」
「はい。以前伺ったことがありますので大丈夫です」
「ではどうぞ」
南門をくぐり抜けていよいよノースヴェルダンに到着した。正面の大通りには商店が建ち並び、住民たちが行き交っている。
その大通りの先、ノースヴェルダンの最北に大きな屋敷が見える。この町の領主、ペルサキス公爵の屋敷だ。
「副団長、このままペルサキス公爵の屋敷までお願いします」
「了解」
大通りをゆっくりと馬車が走り出した。通り過ぎる商店を見ていると、王都とはまた違った商品などが売られていた。
「こうして見ると王都で見たことのない物もたくさんありますね」
「食べ物や服、薬草など気候が違えば変わります。ここでしか手に入らない物もあるので落ち着いたら見に行きましょう」
珍しい食べ物や薬草の話をしていると、馬車が止まりロドルフが声をかけてきた。
「着いたぞ」
「ありがとうございます。門番と話してきます」
ロイは馬車を降りて門番の元へ歩いていき、しばらく話をすると戻ってきた。
「中に入って大丈夫です。
「はいよー」
門が開いて中から使用人と思われる男性が出てきた。
「王宮騎士団の皆さまお待ちしておりました。長旅お疲れ様でございます。領主様のお部屋にご案内致します。馬車は右手にございます
「道中でジャイアントベア2頭を駆除したのですが、解体と調査をしたいので何処か貸していただけませんか?」
「でしたら屋敷の裏山の入り口手前に広いスペースがありますのでそちらをご利用ください」
「わかりました。ジィナ、裏山の手前に下ろしておいてください。助かりました、ありがとうございます」
ロイは上空で旋回しているジィナに伝えるとその姿を見送った。
それから中に入って右手奥にある
屋敷の中には様々な装飾品や絵画が飾らせていたが、どれも品が良く海斗が想像した所謂お金持ちのギラギラした趣味の悪い置物などは見当たらなかった。
2階にある大きな扉の前で使用人は立ち止まった。
ーコン コンー
「領主様、王宮騎士団の方々がお見えになりました」
「どうぞ入ってください」
ーガチャー
「どうぞお入りください。
「ありがとうございます。・・失礼します。王宮騎士団第1部隊隊長ロイ・マーティンと申します。此度の視察隊の隊長をさせていただきます」
「隊長補佐をさせていただきます、ロドルフ・シュヴァリエと申します」
「ノースヴェルダンの領主、ニコラス・ペルサキスです。長旅お疲れ様でした。どうぞ皆さん座ってください。ロイさんとロドルフさんは以前お会いしてましたね。よろしくお願いします」
出迎えてくれたのは60代くらいの物腰が柔らかい男性だった。部屋の中には大きなソファがテーブルを挟んで向かい合って置いてあり、上座の1人掛けのソファの前にニコラスが立っていた。
上座側からロイとロドルフが座り、海斗や他の隊員も順番に座っていった。
「さっそくですが魔獣の被害について詳しく教えていただけますか?」
「はい。半月前に別の件で王宮騎士団の方に来ていただいた時は異変はありませんでした。しかし5日ほど前に薬草を採りに森に入った住民がホワイトウルフに遭遇し襲われました。その2日後、サウザントに向かっていた馬車がジャイアントボアに襲われて3人が負傷しました。襲われた住民によりますと、ホワイトウルフとジャイアントボアはどちらもひどい興奮状態だったそうです。こちらでも騎士団が調査に向かったのですが、原因がわからなかったのです。」
ーコン コンー
「ノースヴェルダン騎士団支部団長アレッシオ・ディゴリーです」
ちょうどニコラスが話し終えたところでアレッシオが部屋にやってきた。
「入ってください」
「失礼します。申し訳ありません。遅くなりました」
「問題ありません。ちょうど魔獣の被害について話していたところです」
「お久しぶりです、ディゴリー団長。今回の視察隊の隊長をさせていただきます」
「久しぶりだなロイくん。よろしく頼む」
「元気そうだな、アレッシオ。俺はロイの補佐をさせてもらう」
「お前も元気そうで良かったよ、ロドルフ。よろしく頼む」
遅れてきたアレッシオも混ざって、今後の方針について改めてロイたちは話し合いをはじめた。
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