第31話 毒って怖いよね
スコトスはキッドが持つランプの上に胡座をかいて座り、欠伸をしてつまらなそうに体を左右に揺らしている。
海斗はその様子をジッと見つめてどう話しかけるか考えていた。
「あれ?毒ってことは触ったら危ないのかな?そしたらあまり近づかない方がいい?でも遠いとよく見えないし。離れても毒って届くのか?そもそも毒にもいろいろな種類があるよな」
1人でぶつぶつ喋る海斗に、スコトスはイライラしてその額を思い切り蹴った。
「Σイタッ!」
(なんだオマエ、さっきから気持ち悪りぃ)
「えっ気持ち悪い・・↓↓」
(ココで落ち込むな。ジャマ)
「邪魔・・↓↓↓」
(・・・いちいちめんどくせぇヤツだな)
「・・・↓↓↓」
スコトスの言葉に体育座りをして膝に顔を埋める海斗。
(変なヤツだとは聞いていたが、なんか思ってたヤツとちがうなオマエ。そのままなら俺帰るぜ?)
「Σそれは困ります!」
いきなり立ち上がり、顔をグッと近づけてきた海斗の額に、スコトスはまた蹴りをお見舞いした。
(近すぎだバカ)
「うっ・・すみません↓」
(ったく、それで?何が聞きたいんだ?しょうがねぇから聞いてやるよ)
スコトスはランプの上で足を組み、頬杖をつきながら海斗を見た。
「えっと、闇の妖精さんって毒を使うと聞いたんですけど、普通に触ったり近くにいるのは大丈夫ですか?触ったら危険とかないですか?」
(いや俺そんなあぶねぇヤツじゃねぇよ!体から毒が出てるわけじゃねぇから!もしそうなら
「あー確かにそうですね。よかった。じゃあ毒ってどうやって出すんですか?毒の種類は?やっぱり神経毒が主ですか?」
(毒にそんなに食い付いてくるオマエの方があぶねぇヤツじゃねーか)
食い気味の海斗に若干引き気味のスコトスは、それでもどこか楽しそうな嬉しそうな顔をしていた。
「知り合いに毒を専門に研究していた人がいて、仲良くしてもらっていたのでつい」
(へぇー。まぁいいけどな。まず俺たち闇の妖精は基本夜に活動する。群れることはしないし同じところに留まらない。今日みたいに明るい時は、空間指定で夜にして闇に紛れて攻撃する)
「だから急に夜になったんですね。この空間の中と外は干渉できるんですか?」
(俺が解除しない限り干渉できない。結界みたいなモノだ)
「なるほど」
(毒は神経毒が多いが壊死毒も使うし即効性の猛毒も使う。闇の中を毒粉を撒きながら相手の周りを飛べば、あとは毒を勝手に吸い込む。毒の量で手足の麻痺から即死まで自由に操ることができる。壊死毒は細胞や組織を破壊するから、吸い込まなくても皮膚に付着するだけでそこから壊死が広がる)
「もう防ぎようがないですね。スコトスさんには毒は効かないんですか?」
(俺の体の中で毒をつくっているからな。まったく効かない)
「あ、やっぱりそうなんですね」
(あぁ、そろそろ時間だな。噂どおり変わったヤツだったが嫌いじゃないぜオマエのこと。じゃあな)
「褒めてないですよねそれ。でもありがとうございます」
スコトスはそのまま闇に紛れて消えていった。すると辺りは夕陽に染まる第2演習場に戻った。
「満足したか?随分楽しそうだったな」
「はい!知り合いと話してるみたいで楽しかったです。ありがとうございました」
「そりゃよかった。スコトスのあんなに生き生きと話すところはじめて見た。こっちこそありがとな」
海斗の頭をグシャっと撫でてキッドは
「片付けて終礼行くぞ」
と先を歩いて行った。
終礼後、海斗は明日の予定を確認するためゼノンに声をかけた。すると暫くは体力と筋力を付けるために午前はトレーニングをして午後は部隊長の誰かに付くようにとのことだった。ゼノンは別件で忙しいらしく3、4日は海斗に付けないそうだ。
「やっぱりゼノンさんや騎士団のみなさんに迷惑かけないためにも、それに『モロノーフ』の人たちを護るためにも強くならないと。まず朝と夜に走り込み。レベルを上げるために『対話』をもっとしたいな。まだロイさんの契約獣を知らないから明日はロイさんにお願いをしよう」
夕食を済ませて食堂を出たところで、ちょうど部隊長の3人が前を歩いていたため海斗は声をかけた。
「すみません、ロイさん」
「うん?あぁ海斗くん、どうしたんだい?」
「明日の午後、お時間ありますか?」
「明日は第1部隊は門番と王都の巡回だから、そんなに時間は取れないけど」
「少しで大丈夫です」
「終礼の前の15分くらいなら。どうしたんだい?」
「えっと・・」
海斗は周りに人がいないのを確認して続けた。
「『対話』をもっとしたくて」
「キッドとライアンはやったのかい?」
「俺はさっきスコトスでやった」
「僕は昨日フィリアがしましたよ」
「なるほど、わかりました。大丈夫ですよ」
「ありがとうございます!よろしくお願いします」
3人に頭を下げて海斗はその場を後にした。
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