第22話 好かれやすいそうです
共同スペースに着くとゼノンは奥の棚から小さなアタッシュケースを持ってきた。
「この中に『ミステ』が入っている。使い方はピンズを『ミステ』の上に乗せるだけだ。暫くするとステータスが表示される」
アタッシュケースを開けると大小2つのアクアマリンが並んでいた。透き通った綺麗な青色をしていて、小さい方にピンズを置くと大きい方にステータスが浮き上がって見えるという仕掛けだそうだ。
海斗は自分のピンズを外してアクアマリンの上に置いた。するとピンズが青い光に包まれて浮き上がり、クルクルと何回か回転して元の場所に戻った。
「これが海斗のステータスか」
浮かび上がったステータスをみんなで覗き込む。
名前:志麻海斗
年齢:18歳
種族:人間
性別:男
誕生日:2月14日
レベル:11
知力:30
体力:43
霊力:40
コミュニケーション力:90
特筆 動物に好かれやすい(魔獣・神獣・聖獣・妖精も含まれる)
「あれ?昨日見せてもらったステータスと変わってる」
「レベルが上がってますね。妖精との『対話』によって上がったのでしょうか」
初期の設定よりレベルが1上がり、ステータスも少し変化していた。
「普通は契約してレベルが上がり、『対話』を繰り返してさらにレベルを上げていく。海斗の場合は契約していなくても『対話』ができるから、通常よりレベルが上げやすいかもしれんな。もう少しレベルが上がるまでロイたちの契約獣や妖精と『対話』をしてみるといい」
「他の人の契約獣や妖精でも俺のレベルは上がるんですね」
「『対話』をするという行為そのものが霊力を使用するので、それが経験値となり積み重ねでレベルが上がります。契約にも霊力が使用されますが、消費量は『対話』の方が少ないので霊力が低いうちは『対話』でレベルを上げてステータスを上げていくといいですよ」
「志麻さんはレベルの割には霊力がやや高めですが、契約する為にはもう少し上げたほうが楽になると思いますよ」
「そうなんですね。キッドさんやライアンさんにもお願いしてみます」
「それにしても、このコミュニケーション力の数値は高ぇな」
「確かに他の項目に比べて飛び抜けて高いですね」
「そしてこの特筆という項目。こんな項目見たことねぇな。これが特殊能力の要因だろう」
「神獣にまで好かれやすいって・・これは秘匿にした方がいいのでは」
「そうだな。明日陛下に報告を兼ねて話してみる。暫くは頻回に『ミステ』でレベルとステータスの変化を確認するようにしておけ」
毎日は大変だから3日に1度『ミステ』で測るということが決まった。
「よし、お疲れさん。夕飯食ってゆっくり休め」
「はい。ありがとうございました。失礼します。渡瀬さんもまた明日」
「はい。おやすみなさい」
海斗は共同スペースを出てそのまま食堂へと向かった。市場で見た様々な食材を思い出しながら、何を食べようかとワクワクしながらメニューを眺めていた。
ーーー
「ゼノンさんはどう思いますか?志麻さんの能力について」
海斗が出て行ったあと、沈黙を破って渡瀬が切り出した。
「正直驚いている。前代未聞だな」
「私はゼノンさんを信じています。志麻さんをよろしくお願いします」
「なんだ急に。まぁあのボウズを手放す気はないがな」
「団長のお気に入りですもんね。俺もこれで失礼します。お疲れ様でした」
「おう、お疲れさん」
ロイが部屋を出ていくのを確認してゼノンが口を開いた。
「で?繋は何の用だ。何か話があるんだろ?」
「ふふっ、さすがゼノンさんですね。ここだと聞かれる可能性もあるので、明日時間をいただけますか?」
「わかった。明日陛下への報告が終わってからなら時間が取れる」
「ではその時に。今日は失礼します」
「あぁ気をつけて帰れよ」
ゼノンと渡瀬はそれぞれ帰路に着いた。
宿に着いた渡瀬はタブレットを開いて先ほど届いた通知に目を通していた。
「これで5人目・・・間隔が狭くなってきてますね。『モロノーフ』、『アルヴェルダム』、『ゲドルド』、『リモネ』、『フォードランド』。となると、次は『
別のフォルダを開いてそれぞれの世界に渡った『渡り人』と担当の案内人のデータから『
「この中にターゲットになる人がいるはず」
データを添付して返信すると、ポケットからUSBを取り出した。
「念のため保険をかけておきますか」
タブレットにUSBを接続し、何か作業を始めた。全て完了してベッドに入ったのは、日付けが変わってだいぶ経ってからだった。
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