第23話 はじめまして聖獣さん
次の日、朝礼が終わって海斗がライアンの元へ行くとロイと何かを話していた。
「ライアンさん」
「海斗くん、今日はよろしくね」
「よろしくお願いします」
「じゃあ後は頼んだよ、ライアン。海斗くんも頑張ってね」
ロイはライアンの肩を軽く叩いて演習場を後にした。
海斗は渡瀬にも挨拶をしようとしたが、ゼノンと話していて一緒にどこかへ行ってしまいできなかった。
「団長から昨日の話を聞きましたよ。なかなか面白い能力みたいですね」
「いや、でもあまり使わないようにと言われました」
「それは仕方がないです。悪用されることもありますから。今日は契約についてお話ししますね」
ライアンに付いて行くと宿舎の北側の奥にある更地に着いた。広さは演習場の倍はありそうだ。すぐ近くには『魔獣の森』がある。
「ここは契約獣と『対話』したりコミュニケーションやトレーニングをしたりする時に使用しています」
ちょうど中央あたりで立ち止まったライアンは1頭の聖獣を呼んだ。するとライアンの隣りに一瞬にして聖獣が現れた。
「フィリア、調子はどうですか?森に変わりはないですか?」
(●△☆◎◆⁂∞)
「そうですか。よかったです。今からそこにいる海斗くんに契約について教えるところなんですが、手伝ってもらえますか?」
(◆◎□)
「ありがとうございます。海斗くん、この子は僕の契約獣で『キマイラ』のフィリアです。この子で契約の仕方など説明します」
『キマイラ』はライオンの頭に山羊の胴体、龍の尻尾を持っていて、口から炎を出すこともできる聖獣だ。背中に乗って移動もできる。
「聖獣を初めて見ました。すごい迫力ですね」
「見た目は怖そうに見えますけど、フィリアは大人しくて優しい子です。キマイラは『魔獣の森』の浅い地帯から中間地帯に生息してます。キマイラに限らず野生の子たちは警戒心が強いので、初対面で契約は難しいです。何回か接触して警戒を解いて、触れたり話しかけたりするといづれ自ら近づいて来てくれます。その時が契約のタイミングです」
ライアンはフィリアの正面に立ち、両手でフィリアの顔に触れた。
「こうして正面に立ってお互いの顔を近づけ額を合わせます。額を合わせると光が溢れて契約者と契約獣を包み、暫くすると光が消え契約完了です。妖精の場合は体が小さいので、手のひらに乗せてあげるといいですよ」
「契約した聖獣や妖精さんはどこへ行くんですか?」
「契約獣は主が呼べばすぐに現れます。フィリアは普段は森の警備や巡回も兼ねて森で生活をしていますが、宿屋にいる『バヤール』という聖獣は、『魔獣の森』を抜けて他の町に行くための馬車を引いているので常に主の側にいます。要は主次第ですね」
「火を使う仕事や水を使う仕事をしていれば、その属性の妖精さんが常に飛んでいたり聖獣が側にいたりもするということですね」
「そうです。ただ力を使うということは霊力を消費するということです。妖精は比較的消費量は少ないですが、数が多ければもちろん消費量も増えます。聖獣はさらに消費量が多いので、主のレベルと霊力の高さが必要です。力を使わずに側にいるだけなら別ですけどね」
「やはりレベルを上げることが大事ですね。」
「レベルが低くても霊力が足りていれば契約はできますが、消費した霊力は回復するのに時間がかかります。体力と違って少し休んだり食事を摂ったりで回復するものではありません。まぁ一晩寝れば回復しますが、消費しすぎるといざという時に力を使えなくなります。なのである程度レベルを上げて霊力に余裕ができたら契約する方が無難です」
「霊力を回復させるには寝るしかないですか?」
「回復薬がありますが普通の薬より値が張ります。医療班でも緊急時以外は極力使いません。あとは回復系の契約獣や妖精がいる者に回復してもらうのですが、その力を持つ聖獣や妖精は少ないので契約している者が少ないです」
「そうなんですね。では契約した聖獣や妖精さんは何かで確認できますか?数や種類など確認したい時はどこでしたらいいですか?」
「『ミステ』で確認ができますよ。契約した子たちはピンズに自動で登録されるので、契約したら確認してみてください。新しく『契約』の項目ができるのでわかると思います」
「なるほど。ありがとうございます」
軽く頭を下げてお礼を言った海斗はライアンの隣に立つフィリアと目が合った。
確かに見た目は少し怖そうだったが、不思議と恐怖心はなかった。
「海斗くん、フィリアと『対話』してみますか?」
「えっ!?いいんですか?」
「もちろん。団長からも時間があったらやってみるように言われたので大丈夫ですよ」
「上手くできるかわからないけど、よろしくお願いします」
ライアンはその場から離れ、海斗とフィリアを見守るように静かに様子をみていた。
聖獣との初めての『対話』に緊急しながら、海斗はフィリアと少し距離をとりその瞳を見つめた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます