第18話 国王陛下もすごい人です

「次にピンズについてです。このピンズには持ち主の様々な情報が入っています。戸籍やステータス、契約獣の種類や数などが確認できます。ピンズの形や色は持ち主のレベルによって変化します」


「その情報はどうやって見るんですか?」


「専用の機械『ミステ』で読み込めます。『ラプレーサス』やここ騎士団にもあるので後で実際にやってみましょう。レベルはピンズを見ればだいたいわかります。これがレベルとピンズの形と色の関係です」


レベル1〜9 白 楕円エリプス

   10〜19 白 ラウンド

   20〜29 黒 三角トライアングル

   30〜39 黒 台形トラピジアム

   40〜49 緑 四角スクエア

50〜59 緑 菱形ダイア

   60〜69 緋 五角形ペンタゴン

   70〜79 緋 六角形ヘキサゴン

   80〜89 紫 セクター

90〜99 紫 扇×2《ダブルセクター》

   100〜 金 スター


 ロイが広げた表には、ピンズのレベル、色、形が書かれていた。


「海斗くんのピンズは白のラウンドだからレベル10〜19の間ということ。俺は緋色の六角形ヘキサゴンだからレベル70〜79の間になります」


「なるほど、さらに詳しく知りたい場合は『ミステ』を使うということですね」


「そうです。レベルが上がるとステータスも変化するので、定期的に確認しておくといいですよ。ちなみに団長は金色のスターでレベル100以上です。100を超えるとピンズは変化しないので『ミステ』で確認しないとわかりません」


「100以上・・・。レベルが100以上の人はどのくらいいるんですか?」


「『モロノーフ』に8人だけです。ヴァンディアス国王陛下とメアリア妃もその中に入ります。ただ、ピンズは金ではなく透明で形は楕円エリプスです」


「8人って、ゼノンさんそんなにすごい人だったんですね」


「ゼノン団長は歴代の団長の中でも1番だと言われてます」


「それに比べて俺はまだまだですね」


 海斗は自分のレベルの低さにこれからやっていけるだろうかと不安になった。


「海斗くんはまだ『モロノーフこちら』に来たばかりだから低くて当然です。通常は生まれてすぐに『ラプレーサス』に届けを出して登録、ピンズを受取ります。ステータスは両親の遺伝やその子の素質で決まりますが、学校での実習や講義などでレベルもあがるので卒業する頃にはみんなレベル20くらいに達しています」


「子供より低いんだ、俺」


「だから俺たちや団長が付いているんです。1ヶ月の間に海斗くんが一人前になれるように」


「そっか・・俺頑張ります。忙しい中みなさん俺のために時間を作ってくださっているんですよね。それに応えられるように」


「うん、でも頑張りすぎも良くないから程々にしてください」


 ロイは力が入る海斗の肩を軽く叩いたあと、優しく撫でた。


「次は魔獣、神獣、聖獣、妖精についてです。彼らは『魔獣の森』に生息しています。種類数は魔獣>妖精>聖獣>神獣となっています。契約できるのは魔獣以外で、契約数に制限はありません」


「魔獣と神獣や聖獣の違いは何ですか?妖精はなんとなくわかりますけど」


「魔獣は普通の動物よりも優れた力を持ち進化した獣です。聖獣は聖なる力『霊力』を持ち人々や動物を護ってくれます。神獣は聖獣よりさらに強い霊力を持ち、その地の全てを守護しています。神の遣いとも言われてます」


「神獣や聖獣は俺たちを護ってくれているんですね」


「俺たちが食糧としている動物や魚は、毎年獲れる数が決められていて乱獲できないようになっています。足りない分は牧場などで飼育されたり養殖されている物が市場に出されます。ですが一部の人間が乱獲して高く売り捌いているという話しがあります。毛皮や骨などは貴重な物もあるので高く取引されているんです。その中には魔獣や聖獣の子供も含まれているそうです」


「そんな・・・酷いですね」


「そういった輩を取り締まるのも騎士団の仕事です。聖獣たち彼らも協力してくれますし、森を護ってくれてますが、『魔獣の森』は広すぎてなかなか難しいのが現状です。現在は契約獣が森を巡回して警戒したり、俺たちも定期的に森に入って巡回をしています。海斗くんも慣れたら一緒に行くことになるかと思いますよ」


「俺もはやくお役に立てるよう頑張ります。あの、神獣ってすごく強いみたいですけど契約してる人はいるんですか?」


「神獣の数は少ないです。契約もレベルや霊力の高さが必要ですが、まず神獣が契約主を認めないと契約できません。現在は6頭の神獣が契約されていて、ヴァンディアス国王陛下が麒麟を、ノースヴェルダンに玄武、サウザントに朱雀、ウエスディーに白虎、イストゥマラに青龍がそれぞれ領主の契約獣として町を守護しています。もう1頭の神獣は俺にはわかりません。極秘扱いになっているので一部の人しか知らないです」


「なるほど。五神獣ですね。もう1頭も気になりますが、やはり神獣と契約するのは難しいですか?」


「そうですね。特に麒麟は神獣の中でトップに君臨していて、圧倒的な力を持っています。その分契約主は高い霊力が必要になるので、必然的にレベルの高さが必要です。最初は妖精と契約してレベルを上げて、聖獣と契約にチャレンジするのが通常の流れになります」


「そうですよね。まずは妖精さんからですね」


「ではその契約についての話になりますが、もうすぐ終礼の時間なのですみませんが明日にします。明日はライアンが付くと思うので彼に聞いてください。学校で子供たちにも教えているのでわかりやすいと思います」


「もうそんな時間だったんですね。今日はありがとうございました。勉強になりました」


「いえ。それと終礼が終わったら団長に先ほどのことを報告します」


「はい」


 2人は宿舎を出て演習場へと向かった。

 海斗はゼノンがどんな反応をするのか不安を抱きながらロイの背中を追った。

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