第11話 知らない土地で知っている味に出会うと安心する
「ここでいいのかな?」
海斗はゼノンに言われた通り宿舎の前にいた。
「君が海斗くんかい?」
「あっはい!」
振り向くと騎士団の制服を着た青年が立っていた。歳は20代半ばくらいで綺麗な銀髪を短くウルフカットにしている。
「団長から案内を任された、王宮騎士団第1部隊隊長のロイ・マーティンです。終礼は演習場で行いますのでご案内します」
「ありがとうございます。お願いします」
ロイの後を付いていくと広いグラウンドの様なところに着いた。そこには制服姿の騎士団隊士がズラリと整列していた。
その隊士たちの前には団長のゼノンが立っており、後ろにはいつの間にか渡瀬が戻ってきていた。
「団長、只今戻りました」
「おう、ロイご苦労だったな。戻ってくれ。」
ロイが隊列に戻るのを見て、ゼノンは話をはじめた。
「最後に、1人新人が入る。とりあえず1ヶ月預かる予定だ。海斗、こっち来い」
ゼノンに呼ばれて隣に並んだ海斗は
「志麻海斗です!よろしくお願いします!」
と勢いよく頭を下げて挨拶をした。
「海斗は今日『
「「「「「はいっ」」」」」
「それと後ろにいるのが繋だ。海斗の保護者みたいなものだ」
「保護者ではないですが、暫く出入りさせていただきます。よろしくお願いします」
「今日はこれで解散。
「「はいっ」」
「よしっ、じゃあお疲れさん」
「お疲れ様です!」
ゼノンの言葉で隊士たちはそれぞれ動き出した。その中の3人が海斗たちの前にやってきた。
「お疲れ様です、団長。まずは食堂でいいですか?」
「そうだな。海斗、話はメシ食いながらだ」
「はい!」
「私はこれで失礼します。また明日、朝礼には顔出します」
「あぁ、気をつけて帰れよ。お疲れさん」
「渡瀬さん、今日はいろいろとありがとう。また明日」
「いえ、志麻さんもゆっくり休んでください。まだ始まったばかりですから」
渡瀬が帰っていくのを見送って、言われるがまま4人の後ろを付いていくと宿舎の食堂に着いた。1階の東側半分ほどを占める食堂はとても広く、夕食どきで隊士たちが集まっていても余裕があるほどだった。
「食堂は基本的に24時間空いている。メニューも豊富だから好きなものを注文するといい。ちゃんと栄養面も考えてあるから安心しろ」
ゼノンたちはそれぞれ注文を終わらせ受取り口に移動していった。
メニューを見てもわからない料理名が多く、何を注文したらいいか迷っていると調理場のおばちゃんが声をかけてきた。
「見ない顔だね。新しい子かい?」
「はい。今日来たばかりでもでこっちの料理とかよく知らなくて」
「そうかい。好き嫌いは?」
「嫌いなものは特にないです。好きなものは魚と卵料理です」
「だったらサマナのフライはどうだい?白身の魚でタンパクだけど、肉厚でおいしいよ。パンとスープ、サラダは付いてるからね。飲み物は向こうにあるから自分で入れな」
「ありがとうございます。それでお願いします」
無事に注文を済ませてゼノンたちのもとへ行くと、ちょうど料理を受け取ったところだった。
「俺たちは先にそこに座っている。慌てなくていいから終わったら来てくれ」
「はい」
ゼノンたちは近くの空いているテーブルに座って何か話していた。
頼んだ料理ができるまで飲み物をと見てみると、何種類かサーバーが並んでいた。コーヒーはわかる、あとはたぶんお茶みたいなものと牛乳、何かのフルーツジュースだろうか。
海斗は無難にお茶だろうそれをコップに注いで、ちょうど出来上がった料理を受け取った。
「ありがとうございます。いただきます」
ゼノンたちにところに戻ると、誰も料理に手をつけていなかった。
「すみません、お待たせしてしまって」
「気にするな。とりあえず座ってくれ」
ゼノンの向かいに3人が座っていたため、海斗はゼノンの隣に座った。
「サマナのフライにしたんだな。しっかり食えよ。よし、食いながらでいいから聞いてくれ」
「はい、いただきます」
サマナのフライは見た目は20センチくらいの大きさで、淡白だが臭みはなく、マグロに似たような味で食べやすかった。
知っている味に似ていることに、海斗はどこか安心した気持ちになった。
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