第8話 見た目で判断してはいけません
「すみません、移住の手続きをお願いします」
「畏まりました。ピンズはお持ちですか?」
「いえ、異世界からの移住なのでありません。ステータスはここに」
渡瀬は手に持っているタブレットを渡した。
「お預かり致します。トライアル期間中は仮登録となります。終了後に残られる場合は、手続きが必要になりますのでお願い致します。こちらお返し致します。宿は3階の宿舎でよろしいですか?」
返されたタブレットを受け取り、渡瀬は首を振った。
「いえ、王宮騎士団の宿舎でお願いします。ゼノンさんには了解を取ってあります」
「畏まりました。手続きは以上になります。こちらのピンズを左胸に付けてください」
渡されたのは、白色の丸い形をしたピンズだった。
「こちらのピンズの色や形で、その人のレベルが分かります。レベルが上がるごとに自動で色や形も変わるようになっております」
「ありがとうございます」
海斗はピンズを受け取ると自分の左胸に付けた。
「改めまして、ようこそ『モロノーフ』『ロンド』へ」
受付の女性が笑顔で言うのを、海斗は頭を下げて返した。
フロアに戻るとゼノンは、柱に体を預けて目を瞑っていた。
それをみつけた海斗は足を止め、渡瀬に声をかけた。
「そういえば、異世界からの移住者ってよくいるの?ゼノンさんも受付の人も普通にしてたけど」
海斗は異世界から来た自分のことを、
「少なくはないですね。志麻さんと同じ世界から渡ってきた人もいますし、違う世界から渡ってきた人もいます。皆さん『ラプレーサス』で移住手続きをするので、受付の方は承知してます」
「ゼノンさんは?俺が異世界からのって気づいていたみたいだったけど」
「騎士団には異世界出身の方も何人かいます。以前も志麻さんのように、トライアル期間をゼノンさんにお願いしたこともありますから。この世界では異世界出身者はそれほど珍しくはありません。隠す必要もありません」
渡瀬の言葉に海斗は少し安心した。
異世界からということで目立ちたくないし、だからといって隠し通せる自信はない。最初から隠す必要がなければ気が楽だ。
それに同じ異世界出身の人がいるなら会って話してみたいと、海斗は騎士団の人に会うのを楽しみに思った。
海斗たちがゼノンに近づくと顔をこちらに向け手を上げた。
「すみません、ゼノンさん。お待たせしました」
「おう、無事に終わったようだな。ピンズは白色の
「はい、レベルが上がると変わると聞きました」
「あぁ、それについても後で説明する。まずはうちの宿舎だ。着いてきな」
歩き出したゼノンの後ろを海斗は着いて行くが、なかなか進まない。ゼノンに気づいた王都の人々が次々に声をかけてくるのだ。
「あらゼノンさん、この間はありがとうございました」
「あぁアルティナシス嬢、お役に立てて何よりです」
「ゼノンさん、先日は息子が世話になったね」
「バセットさん、なかなか筋が良いご子息で将来が楽しみです」
「ジェノンしゃーん!」
「おっと、ルーク元気なのはいいが走ったら危ないだろ」
「ごめんしゃーい」
「・・人は見た目じゃないって改めて実感した。ゼノンさんって人気なんだ」
海斗は目の前の光景を呆然と眺めていた
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