第6話 無断キャンセルはいけません

 エレベーターの中は思ったよりちゃんとしていた。ただ普通ならあるはずの階数ボタンはなく、赤、黄、青色の3つのボタンが縦に並んでいた。


 渡瀬は扉が閉まると、黄色のボタンを押して手元のタブレットを操作し始めた。


「それでは志麻さんが渡る世界の説明を致します。行き先は『モロノーフ』です。先ほどお話ししましたが魔獣と共生している世界になります。魔獣以外にも神獣や聖獣、妖精なども存在します」


 渡瀬はタブレットを海斗に見えるように傾けると話を続けた


「『モロノーフ』での志麻さんのステータスです。名前と年齢は変わりません。その他種族、性別、性格、誕生日、レベル、知力、体力、霊力、コミュニケーション力があります」

 海斗が見ている画面にはそれぞれの数値が記されていた



名前:志麻海斗


年齢:18歳


種族:人間


性別:男


誕生日:2月14日


レベル:10


知力:25


体力:40


霊力:35


コミュニケーション力:85


「ステータスは志麻さんの今までの経歴などを参考に、AIが導き出しました」


「俺の経歴とかどうやって?」


「案内所までのエレベーター内で、志麻さんの18年分の情報を読み取らせていただきました」


「あの時に!?だから長かったのか・・」


「頭の方は残念ですが・・」


「自覚はあるけどそれでも傷つくからね!?」


「・・ステータスはレベルが上がれば変わりますので、諦めないでください」


「・・・慰めも傷つく」


「そのかわり、コミュニケーション力がかなり高いです。特に年上の人や動物に対して出ていますので、あちらでは役に立つかと思います」


「まぁ小さい頃から大人といたから、処世術が身についたのかも。動物は何故かあっちから寄ってくるから可愛がってたけど・・」


「それも才能です。魔獣以外は、契約によって力を借りることもできます。契約した頭数やランクによってレベルも上がります。レベルが低くても、彼らが認めれば契約できるので、上手くいけば高ランクの神獣や聖獣と契約できるかもしれません」


 タブレットの画面には、ゲームやマンガなどでしか見たことのない魔獣たちが映し出されていた

「なんか、ホントになんだな」


 海斗は不安な気持ちもあったが、志麻家自分のことを誰も知らない世界に、楽しみな気持ちの方が大きかった。


 「もうすぐ着きますね。あとは異世界むこうで実際に生活しながら補足します」


ーチンー


到着を知らせる音が鳴った

ゆっくりと扉が開く


「ようこそ『モロノーフ』へ」


 渡瀬の言葉に


「(ついに異世界に来たのだ)」と、


 扉の向こうに目を向けた海斗は、ふと思い出した


「あっ、お昼のハンバーガーキャンセルしてない」

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