第5話 グチも言いますが仕事はちゃんとします

「一応、マニュアルがあるので(たぶん)大丈夫です」


「いやだから聴こえてるからね!?」


「だいたい案内人この仕事、いろいろ手続きやら後処理やら面倒なことが多いんですよね。その割に時給安いですし」


「それ俺に言われ「それに拘束時間も長いんですよ。トライアル期間終わるまでは私も異世界あっちにいないといけないとか。労基に引っかからないですかこれ。」


「だから俺「司書の仕事は定時で帰れて週休2日、給与もそこそこ良いんです。人気も倍率も高くて、やっと就けたのに。今では7割案内人こっちですよ」


「・・・うん。なんか少し可哀想になってきた。いろいろ大変なんだな」


 表情を崩すことなく淡々と愚痴をこぼす渡瀬に、海斗は少し同情した。


「まぁ仕事はちゃんとしますのでご安心ください。話しがれてしまいましたね。では改めまして・・」


 渡瀬は手元の書類を確認しながら、再び説明をはじめた。


「志麻さんが渡る異世界ですが、候補がいくつかあります。ひとつ目は、『ゲドルド』という

魔物が生息する世界。ふたつ目は、『モロノーフ』という魔獣と共生する世界。みっつ目は、『フォードランド』という魔法の世界です。」


「なんかゲームとか本の中の世界みたいだな」


「間違いではないですね。イメージはそんな感じです。どの世界に渡るかを今から決めます」


「希望としては、『モロノーフ』か『フォードランド』がいいかな」


「決めるのは志麻さんですが、決め方はこちらになります」


 渡瀬はデスクの下から黒い箱を取り出した。


「この中に3色の玉が入っています。上の穴から手を入れて1つ取ってください。取った玉の色で渡る世界が決まります」


「自分で選べないの!?どこに行くかは運次第ってこと!?」


「運も実力ですよ。志麻さんがと思って取ったのなら、それが必然です。・・ではどうぞ」


 差し出された箱を前に、海斗は一度深呼吸してからゆっくり手を入れた。


「(コレだと思うものか・・・よしっ)これだっ!!」


 海斗は一番最初に手に触れた玉を掴み、取り出した。


「黄色ですね。では手続きに入ります。お待ちいただいている間に、今持っている物を全てデスクこちらに出しておいてください」


 そう言い残して、渡瀬は奥にある扉の向こうに姿を消した。


「持っている物って・・スマホと財布と鍵、あとはさっき借りた本くらいだけど」


 海斗はとりあえず、言われたとおり持っている物全てを並べて渡瀬を待った。

 思ったより早く戻ってきた彼女は、手にタブレットを持ち、服装も制服から深紫色のワンピースと黒のロングコートに変わっていた。


「お待たせ致しました。手続きは無事終了致しました。異世界へ渡るにあたって、こちらの世界の物は全て置いていく決まりになっております。志麻さんの持ち物は案内所でお預かり致しますね」


「あーそうだよな。スマホも異世界むこうじゃあ使えないだろうし。でも借りた本は?」


「問題ありません。こちらで管理しておきます。では、参りましょう」


ーチンー


 言い終わると同時に古びたエレベーターの扉が開いた。


「えっ!?エレベーターこれに乗るの!?途中で壊れたりしない!?」


「安心してください。壊れたことはありません」


「それって今後はあるかもってこと!?」


「・・・さぁ乗ってください。諸々の説明は中でします」


「ちょっと!!不安しかないんだけど!?」


 海斗は半ばヤケクソに、そのエレベーター(壊れかけのね!!)に乗り込んだ

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