第12話 里夢の告白
里夢の元へ訪れたその人物に里夢は言う。告白する。
「僕はあの時、あの時からなんだ。生徒会の座を能力で悪用している人物がわかったあの時から意識はあったんだ。僕に恋愛意識というものはあったんだ、僕は君が好きだ。佳奈出」
その人物とは、井之口佳奈出だった。
「なんで、あたしなんだ?」
「君は生徒会の悪用を見破ってくれた。そして僕は君に生徒会の仮議長を提案した。それは嘘を見通せる能力があったから、美園への演説が上手かったからなんて建前さ、そうだ、君に少しでも生徒会にいて少しでも近くにいてほしかったんだ」
「どこから恋愛感情が出てきたんだ」
「君は生徒会長としての僕の命令には従うかもしれない。だが君は紅里夢個人の命令には忠実に従わないだろう。だからこそ君しかいないんだ」
「どういうことだ」
「僕は雅を失い消失した日、無意識に君に見つかるように屋上に行った。君が止めてくれると思ったから。そして君は僕が飛び降りるのを止めてくれた。僕の踏み外しそうだった道を正してくれた。僕は佐遊達のように忠実に命令に従う人物ではなく君のように正してくれる人物が必要なんだ」
「それは誰だってわかってれば止めるだろ」
「そう、それだよ。君はいつも自分ではなく美園や他の人のことを考える。僕に持ち合わせていないその思考に憧れたのかもしれないね」
「雅はいいのか?」
「彼女はもうこの世にいない。僕はその現実を受け入れなければならない。そして君のように僕を正してくれる人物が必要だ。それに君は嘘を見破れる。僕がもし悪事を働こうとしても君なら止められる」
「そうか、その言葉に嘘はないな。あたしも隠すなんてずりぃよなぁ。あたしもお前と話していた時、父親と母親が別居、この部分で嘘の魔力が反応した。そしてお前は嘘じゃないと言い張りあたしを寮に招待してくれた。好きでもないやつの寮に行くわけねぇだろ」
「それは好きという意味かい?」
「言わせんなよ」
「そうか、これが両思いということか」
「お前は急に恋愛に詳しくなったりよくわかんねぇやつだな、ま、そこが面白いけどな」
「デートをしよう。僕がエスカレーターしよう」
「なんだエスカレーターしようって」
「僕は雅といった時エスカレーターされたよ」
「それエスコートじゃねぇか?」
「そうなのかい?恋愛映画を見るんだろう?」
「エスコートだろそれ、いきなり攻めるなぁ。だが雅が教え忘れたことはあたしが教えねぇとな。いいぜ、あとエスカレーターじゃなくてエスコートな?水族館とかでもいいんだけどな」
「何でもいいのかい?」
「お前は恋愛に疎いのか疎くないのかよくわかんねぇな」
こうして里夢の告白は成功に終わった。
鈴花は小鳥と進の会話を聞いてしまっていた。
「なるほど、小鳥の監視の目的は護衛でしたか」
こちらもこちらで呼び方が変わっていた。
「おや鈴花さん」
「聞いてしまいましたよ」
「聞かれてしまいましたか。私が進を守らなければなりませんね」
鈴花は創造する能力で小鳥に弓と矢を渡した。
「これは?」
「進さんのために使ってください。私の能力はあらゆるものを創造する能力。魔力を消費するのは創造するときだけ。その弓と矢はサイズまで変えられます。この世に存在しない弓矢。ポケットに入るレベルまで。逆に元のサイズより大きくはできませんがもし進さんに何かあればその弓矢で射貫くといいでしょう。殺傷能力はないものの大きなダメージを与えられるでしょう」
「いいのですか?」
「はい、いいですよ」
日曜日、里夢と佳奈出は映画館を訪れていた。
同じく進と小鳥も映画館を訪れていた。
「あ、里夢君?佳奈出さんと上手くいっているみたいだね」
「進も小鳥と上手くいっているみたいじゃないか」
「僕は守ってもらわないと」
「君は男だろう?」
小鳥が里夢に話しかける。
「里夢生徒会長。私は里夢生徒会長は監視いたしませんが進は監視させてもらいます。守るために」
「なるほど、僕と進がいるときは監視するんだね?進が嫌じゃないならいいよ」
「ありがとうございます」
「佳奈出、このゾンビが追いかけてくる映画が見たいな」
「なんでホラーなんだよ、よくわかんねぇな」
「じゃあ里夢君、四人で見ようよ。でもその映画は合わないんじゃないかなぁ」
「このゾンビに目がいかないなんて見る目がないね、どれならいいんだい?」
「いや、駄目とは言ってねぇけどなんかなぁ」
「里夢君、この女の子が男装する映画とかどうかな?」
「いいえ進、この男の方が女装している映画がいいですよ」
「お前らどういう神経してんだ」
「仕方ねぇ、あたしが選ぶか」
佳奈出が映画を選んだ。
「その映画か…僕が初めて…あの時見た映画…」
「なんだ、見たことあんのか。じゃあこっちの恋愛映画にするか」
「なるほどね、恋愛にも種類があるんだね」
里夢、進、佳奈出、小鳥は佳奈出の選んだ映画を見ることにした。
その光景を見守っていた鈴花。
窓を開け、空を、太陽を見上げる。
「不知火様、里夢生徒会長は私の手には届きませんでしたが不知火様の意志を引きつぐ方が里夢生徒会長にもできたようですよ。きっとより良い方向に導いてくれるでしょう。なので安心してください」
その太陽は応えるようにして、いつもより輝きが増したように鈴花には見えた。
完
生徒会長の恋愛騒動 @sorano_alice
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