第11話 里夢の選別

 翌日、早く登校した里夢は一人登校。まだ他の生徒も登校していないほどに早い時間のため進とも登校していない。

 途中で鈴花と出会った。


「君は、秋野鈴花だね」


「はい、里夢生徒会長」


「君の本当を知る必要はない」


 里夢の言葉に鈴花は疑問を抱くのであった。



 里夢はA組とB組の廊下に立っていた早く登校してきていた佐遊を見つける。


「佐遊か、早く登校してきてくれたようだね」


「もちろんである、大将」


「君の本当が知りたい」


「妾の本当か、妾は魔術師団ではなかった、実は忍なのだ」


「君はいつも意味が分からない。君専用の辞典が欲しいくらいだ。君は何を言っているのかわからないけど僕の命令には忠実に従う。能力はよくわからない、でも君は外見だけなら美しい容姿をしている。それが早須美佐遊という人物」


「忍に美しさなど必要あらぬ」


「それよりも具現化できるのかい?彼女の一年前の行動を」


「やはりそのためであったか。もちろんである。大将にだけ見えるように具現化を開始してよろしいか?」


「もちろん、お願いするよ」


「佐遊はその人物の一年前の行動の具現化を開始した」



 佐遊の具現化内では一年前。その人物とは不知火雅と最も近しい人物、秋野鈴花だった。

 鈴花は見守っていた。自分自身の里夢と雅が告白しているその光景を。

 里夢は雅に興味があるといったその光景を見られていたことを意味する。

 その後、話が終わったのか鈴花は主人の雅についていく。

 鈴花は雅に告げる。 


「不知火様、良かったですね」


「雅様には勝てませんよ」


「貴方は小鳥」


 小鳥は泣きそうになりながら話しかけていた。

 雅は鈴花と会話している。


「私は里夢様に振られる覚悟で告白しましたが希望が見えてしまいました。さらに小鳥を貶めるような真似をしてしまいましたね」


「不知火様は悪くありませんよ。それに私の創造する能力で見かけましたが小鳥は精霊を使って里夢さんを監視しています」


「また能力を使っていたのですね」


「申し訳ありません」


「いいのですよ、悪用しなければ」


「私も嫌われるでしょうね」


「どうしたのですか?」


 すると雅は何か言い出す。


「私と里夢様の噂話は全てなかったことになってしまう。そしてこの私、不知火雅は難病にかかっていない健康な雅、陸上部に入り無能力者の恋愛に全く興味のない、そして…里夢様にも全く関心を示さない不知火雅が明日から登校してきていると学校の生徒、先生全員は思い込む…」


「何を言っておられるのですか?不知火様」


「明日にはわかりますよ」


 雅と鈴花は車に乗り病院へと向かう。


「そういえば鈴花」


「何でございましょうか、不知火様」


「小鳥は精霊を使って監視しているとのことでしたね?」


「そのようですね、里夢さんや進さんを監視していました」


「もしそれがわかれば小鳥は…せめて彼女のあの泣きそうな顔だけでも」


「不知火様は他人のことを考えすぎなんですよ、自分のことを第一に考えてください」


「里夢様は、進先輩は、小鳥が精霊で監視していないと思い込む」


「不知火様?」


「いえ、何でもありませんよ」


 そして病院に到着する。


「不知火様、私は不知火様にお付き添いします」


「貴方も巻き込むわけにはいきませんね、鈴花。お見舞いに来なくていいのですよ。自分のことを第一に考えてください」


「何を言っているのですか、不知火様。そんな真似」


「仕方ありませんね」


「鈴花、貴方は私との関係を忘れ小鳥が主人だと思い込み、小鳥は鈴花を従者だと思い込む、分かりましたね?」


「あれ、私はなぜこんな場所に。小鳥様のところに行かなければ」


 鈴花は小鳥のところに向かった。


「遅かったですね、鈴花」


 それは小鳥の声。


「申し訳ありません、小鳥様」



 一年前の具現化を見た里夢は理解する。


「佐遊、感謝するよ」


「大将のためならいつでも」


 雅は里夢が小鳥と結ばれてほしくて監視していることをなかったと思い込ませたのではない。雅は小鳥に情けをかけさらには里夢だけでなく鈴花も巻き込まないように手放したことを理解する。それと同時に自分も人を思いやれる人間になろうと思った。


「やはり君には遠く及ばないよ」



 事実を知った後B組に登校してくる叶美と遭遇した。反抗的ではない。


「叶美。僕は君の本当を知りたい」


「私ー?私はいつも通りだよ」


「君は身長が高くそして広報の仕事も反抗的で休む時はあったけどきっちりとこなしてくれる。それが緑川叶美という人物」


「どうしたのー?」


「君の本当を知りたかっただけだよ」



 続いて窓際でイヤホンをしながら携帯を弄っている佳奈出を見つけた。


「佳奈出か」


「どうした、もう落ち着いたのか?」


「まあね、僕には好きな人がいるのかもしれない。僕は君の本当を知りたい」


「どういうことだ。美園とかか?美園なら一年前に告白してもまだ今も好きだと思うけどな」


「君は美園を応援するんだね。君はいつも携帯を弄っているが校則違反はしていない。そして仮議長でもあるけれど引き受けようとしてくれた。それが井之口佳奈出という人物」


「何言ってんだお前、お前の好きな人って誰なんだ?」


「さぁね」


「あたしの能力は嘘を見抜ける能力。秘密まで見破れねぇんだよなぁ…」


 里夢の好きな人が気になる佳奈出であった。



 佳奈出と話して話題に出た美園の元へやってきた里夢。


「やぁ美園」


「り…里夢生徒会長?」


「僕は告白というものを自分からしてみたい。そのために君の本当を知りたい」


「里夢生徒会長が告白ですか…私は…私はまだ里夢生徒会長のことがまだ…まだ…」


「君はネガティブなところもあって引っ込み思案だ。でも好きを伝える、告白する勇気はある。そして会計として立派に役目をこなしてくれている。それが花夢美園という人物」


「誰に告白するんですか?」


「そのうちわかるさ、でも僕は能力を悪用した。振られるだろうけどね」


 里夢が振られる相手がいるのだろうかと思いながら美園はその相手を考えるのであった。



 里夢は立花の元へやってきた。


「里夢生徒会長?」


「僕は今日、覚悟を決めるよ」


「どういうことですか?」


「僕は君の本当を知りたい」


「わたくしはもう無能力者です。もちろんカンニングなんてこともしておりません」


「君は生徒会の座に就くため能力を悪用した。でも僕ももう生徒会の座に就くためではないけれど一度能力を悪用している」


「そうだったのですか?」


 立花は生徒会室にいなかったので知らなかった。


「君は僕の近い座に就くためにどんな手段もいとわず能力を悪用した。僕も恋愛のためにしてしまったけどね」


「里夢生徒会長が恋愛ですか」


「どんな手段を使っても諦めない、それが柊立花という人物」


「いったい誰に告白を」


「今日、僕は行動するよ、そして確信した。僕には思い込まされる前から恋愛感情があったと」



 昼休み、美化委員の打ち合わせは終わっているためすぐに打ち合わせは終わって里夢からではなく相手から屋上に呼び出された。

 青髪のその短髪の少女は精霊を操る峰小鳥。


「里夢生徒会長、監視していたことは謝ります。申し訳ございません」


「もうしなければいいのさ」


「私は一年前から里夢生徒会長のことが好きでした」


「その告白する勇気、感謝する、ありがとう。でも僕は、もう好きになってしまった人がいる。君はクールだ。女子にしてはかっこいい。僕の友達に進という友達がいてね。彼はかっこいい人が好きみたいだよ」


「そ、そうですか…私はさんざん監視してましたからね。ですが里夢生徒会長から告白や好きという言葉が出てくるとは思いませんでした。進さんですか。確かに進さんも好きですが私はある意味里夢生徒会長のために間接的に敵に回しています」


「僕は進を友達として好きだ。そんな進はかっこいい人が好きと帰るときに聞いた。そんな進に彼女ができたとすれば僕は喜ばしい」


「私に届きますかね」


「君は確か弓道部で名が知れていただろう?進のハートを射貫けばいいのさ。そういうことなら僕も協力するよ」


「確かに、行動しないよりは行動する方がいいですよね。そうかい、で終わると思っていましたので」


「なら決まりだね、僕は進を放課後に君のいる2年B組だったかな、に呼び出すよ」


「ありがとうございます、里夢生徒会長」


 小鳥は結果的にフラれたが新たな可能性ができた。里夢と小鳥による進射貫き作戦が開始される。



「進、峰小鳥という人物を知っているかい?」


「うん、知ってるよ、思い込まされてる時は全く意識してなかったけどね、僕が監視されてるみたいなことを叶美さんから聞いたよ」


「興味はあるのかい?」


「叶美さんがいうには弓道が得意らしいしかっこよさそうだよね」


「今日は生徒会はいいから放課後2年B組でその子が進を待っているよ」


「え?僕を?」


「そうだよ、僕は伝えたからね」


「うん、2年B組だね」


「僕も放課後しなければならないことがある、彰は聞かなさそうだな。涼にするか」


 里夢は涼に里夢と進は生徒会に来るのが遅れるように放課後に伝えるように言う。



 そして訪れる放課後。2年B組。峰小鳥は待機する。そこに現れる相馬進。

 小鳥はクールなのに対し進はキュート。女なのにかっこいい小鳥と男なのに可愛い進の恋物語が始まる。

 先に声をかけたのは小鳥。


「お疲れ様です、進さん」


「お、お疲れだね、里夢君に呼ばれたけど小鳥さんだよね」


「はい、私は進さんのことが好きです」


「ぼ、僕?」


「はい、私は里夢生徒会長のように子供のようにかわいい方や進さんのように女子のようにかわいい方を見ていると守ってあげたくなるんです」


「僕男だよ」


「だからこそ守ってあげたくなるんです。ギャップ萌えですね。いつも里夢生徒会長や進さんが無事でいられるよう監視して護衛していました。ストーカーととられますけどね」


「監視ってそういう意味で監視してたの?」


「はい、私は精霊を操る能力しか持ちません、力も矢を射てるほどしかありません。しかし矢を射てます。私が守らなければいけないと思ったんです」


「僕は弱いよ?」


「私が貴方を守りましょう」


「ありがとう、小鳥さん」


 小鳥の監視、ストーカーと自覚はあったようだが本当の意味は護衛だった。背が小さな里夢と可愛げのある弱々しそうな進を守るための監視。

 こうして男女の立場が逆転しているが小鳥は進を守る彼女に。進は小鳥に守られる彼氏となり進と小鳥は結ばれることになる。



 そして屋上。初めての里夢からの告白。それを待つ里夢。その相手は誰なのか。生徒副会長、朝日奈希。元議長、柊立花。仮議長、井之口佳奈出。庶務、早須美佐遊。会計、花夢美園。広報、緑川叶美。生徒会外兼二年生、秋野鈴花。そして里夢が呼んだその人物が屋上へと姿を現す。



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