第7話 生徒会の能力悪用者
日曜日、この日里夢は寮で一人勉強に励んでいた。
今日の問題は小鳥、鈴花である。
「よく平然と来れましたね。私に反抗するとはどういうつもりですか?私の大切なアゲハを生け捕りにし精霊専用の虫かごに閉じ込めるなんて下剋上ですね?まさか彰さんに助けてもらう形になるとは思いもよりませんでしたけど」
「待ってください、どういうことですか?小鳥様」
「しらを切るつもりですか?」
「確かに私の創造する能力ならそのような物もその気になれば作れます。しかし私は小鳥様のアゲハを捕まえるなんてそんな真似をやってはいません」
「では貴方以外に誰かの仕業ということですか」
「そうです、昨日は確かに茶道部に行っていました。小鳥様にそんな真似するわけないではないですか」
「信用なりませんね、では誰かが鈴花を貶めたとそういいたいわけですね?」
「はい、私は小鳥様に逆らうような真似はしておりません」
昨日の問題により小鳥と鈴花に亀裂が入った。真相は謎である。
一日中揉め、月曜日。この日、大きな事態が起こるのだった。
ついに彰、佳奈出が話していた人物が明らかになり彼らたちの謎が明かされる月曜日。
いつものように里夢は進と登校しいつものように昼休みは進と、そして最近涼とも食べるようになってきた。
変わったことと言えば進の一言。
「里夢君、今日は打ち合わせがあっても生徒会を優先にしてね、緊急事態が起きてるから」
この登校の一言以外特に変わりなく里夢は昼休みに打ち合わせを済ませ放課後は言われた通り生徒会室に遅れることなく里夢は到着した。
生徒会長、副会長、議長、庶務、書記、会計、広報。全員が集合した。
昼休み、屋上では佳奈出が謎の人物と連絡を取っていた。
「あたしだ、特定はできた。確かに能力は強すぎる。3つは確定で持ってることになるな。今日の放課後、生徒会権限により能力の剥奪だな。おう、分かったぜ」
一方そのころ彰も謎の人物と連絡を取っていた。
「今日だな。俺の能力はある意味最強だ。お前の能力がなかったら俺の出番がなかったな。今日の放課後だ、やつを潰す」
「なんだい、わざわざ今日は緊急だというから放課後の打ち合わせを断ってきたというのに」
「確かにあたしもなんで緊急かわかってないんだよねー」
「何か出費の問題でしょうか?」
「い…いえ、特に出費で問題は起きていません」
「大したことじゃないんじゃないかなー」
「だといいんですけどね、なんか怖いなぁ」
「大将、ここは妾の能力を使う時か?」
「君は無能力者だろう」
「妾は最強すぎて最強がゆえに能力が出せぬからな」
「はいはいわかったわかったー」
適当に残念な佐遊の会話を聞き流しているとドアが開いた。
足を使って開けたその男は新藤彰。その後ろから井之口佳奈出。
彰からの一言。
「よし、役者はそろったな、決着をつけるぜ」
「おう、そうだな彰」
「俺たちは通話で連絡を取り合っていた、佳奈出とな」
そう、彰が話していた謎の人物は佳奈出、そして佳奈出が話していた謎の人物は彰だった。二人は敵対どころか繋がっていた。
佳奈出が里夢に確認するように問う。
「生徒会長、生徒会権限覚えてるよな」
「もちろんだよ。僕が演説で言ったからね。第一条、生徒会の座に能力を悪用して入った人物は能力の剥奪、つまり無能力者になり生徒会の座から降りてもらう。第二条、生徒会外でも能力による悪用、一度目は厳重注意。二度目は最悪能力の剥奪、三度目は強制的に能力を剥奪する。第三条、これは無能力者にも言えることだね、もちろん校則違反、暴力、器物破損、これを繰り返しているようならそれなりの対応を取るよ。まあ第三条に関しては当たり前だけどね」
「もしお前が能力を悪用し生徒会の座に就いていたとしてもか?」
「君は僕が悪用してると睨んでるのかい?もしついていたらね」
「嘘だな」
「またそれか君は」
「お前の能力は防御性能が高すぎるが故に能力自体を剥奪すること自体ができないってことか」
「まあいい佳奈出、本題だ。この中に能力を悪用し生徒会の座に就いた人物が一人いる。副会長、朝比奈希。議長、柊立花。庶務、早須美佐遊。書記、相馬進。会計、花夢美園。広報、緑川叶美。そして生徒会長。紅里夢」
「誰だい?その悪用者というのは、放ってはおけないな。僕とでもいうのかい?」
「すべて行動は把握させた。わかったらそいつを生徒会から降ろしてくれるんだよな?あたしたち生徒会は悪用者のよって作られた学校、この汚名返上をするために」
「もちろんさ、佳奈出、誰なんだい?」
「よし、嘘はなさそうだな」
彰から悪用者が言い渡される。
「決着つけようぜって言ったよなぁ?議長、いや元議長柊立花」
「なっ…」
「逃げんなよ?」
「立花、君は悪用していたのかい?」
「わたくしですか、証拠もなければわたくしが能力者とも限りませんよ」
「いや、お前はある意味最強の能力者だ」
「わたくしは悪用していませんよ」
「嘘だな、あたしの能力は嘘を見抜ける能力。あたしに嘘は通じない。お前何個能力持ってる」
「はぁ…一つですよ」
「また嘘を吐いたな、あたしの前で嘘は通用しねえんだよ」
「貴方のその能力自体が嘘なのではないですか?」
「なら試してみな、お前の能力は能力をコピーかなんかして複製する能力だろ?だから何個でも増やせる。だが欠点がある。その相手の能力を知らなければコピーすることができない」
すると急に彰の態度が変わった。佳奈出をめがけて暴力を振るおうとしたところで彰の能力は解かれた。
「俺に洗脳の能力を使ったな?だが俺には効かねぇんだよ。俺の能力はあらゆるものを元に戻す能力。俺に洗脳をかけた能力も自動的に戻る。お前は何か創造する能力をコピーしているな?土曜日にもあったぜ。秋野鈴花だったか、あいつを創り出したのはお前だろ。創造の能力は何もないところからできるってことだな。俺はその創造体を元に戻した。空気から創造できちまうわけだなぁ」
「なぜそこまでわたくしの情報を知っているのですか」
ここで叶美の能力が判明する。
「私の能力は行動を把握する能力だからねー、現在、そして過去の行動は全てわかっちゃうんだよー。副会長の能力もバレてるよー。副会長の能力を使って事前に選挙当日に票を入れるように指示してたんだよねー。だから選挙の時に魔力が減ることはなかったんだよー。事前に発動させてたからねー」
「全部バレているんですね…わたくしが精霊使いの小鳥さんと会った時に能力を聞き出し精霊を操る能力を手に入れたことも、その小鳥さんを洗脳し、鈴花さんの能力を聞き出し鈴花さんの能力を手に入れたことも」
「まさか副学級委員も能力を悪用していないだろうね」
「それは…」
「あたしの前で嘘は吐けないぜ?」
「し、しました…」
「君は何が目的で悪用しているんだい?」
「嘘は吐けないんですね…バレるんですね。そんなの一つしかないに決まっているではないですか。里夢生徒会長のそばに誰よりも近くにいたかったからに決まっているじゃないですか」
「そんなくだらないことのために悪用していたのか君は」
「本当ならわたくしは副生徒会長の座に就きたかった…ですが朝比奈希さんを押しのけて副生徒会長になることはさすがに疑われます。なのでわたくしは議長の座に就きました。ですがクラスは希さんとは違い議長でもあります。ですから疑われることなく副学級委員に就きました」
「なんで僕が出てくるんだ全く」
「ほんとお前は恋愛感情ねぇなわかってやれよ」
「どういうことだい佳奈出」
「本気でわかってねぇな、紅里夢という人間が柊立花を狂わせたってことだな」
「僕が悪いのかい?」
「たった一言が言えなかったんだ。いや、言う勇気がなかったんだな」
「その一言が気になるな」
ここで会計の美園がその一言を告げる。
「一年前に私が言ったじゃないですか、好き、と」
「恋愛映画で見たけど好きと言ったら僕も好きだと言わないといけないんだね」
彰は退屈そうにしていたがその言葉に驚いた。
「あ?恋愛映画見てたのか?お前恋愛に興味あったのか」
「いやいや嘘だろ、いや、こいつ嘘ついてねぇな。あたしの魔力が反応しねぇ」
副会長も驚く。
「え?やっぱり恋愛対象男の子の進きゅんなの?」
それに対し進は。
「え?土曜日に希副会長里夢君と映画見に行ってましたよね?」
「え?あたしが里夢ちゃんと?見に行ってないけど?」
「ふむ、大将は先鋒進と恋愛映画を見ておったはずだぞ」
「おい、全員嘘ついてねぇぞ、どういうことだおい。お前誰と映画見に行ったんだ」
「僕かい?僕は恋愛映画を見に行かなければならなかったからね、誰と見に行ったか言ってはならないからね」
生徒会の悪用者の謎は解けたが新たな謎が生まれだす。里夢と映画を見に行った人物。すなわちデートをした人物がいることになる。
「そんなことより美園、君の出番だよ」
ここで美園の能力が明かされる。
「その能力は危険です。生徒会権限により私の能力、能力をなくし無能力者に変える能力によって貴方は能力者を剥奪されます」
「うぐぅ…」
美園の能力により橘立花のコピーする能力、精霊を操る能力、洗脳する能力、想像する能力、もしかするとまだ持っていたのかもしれない。すべて失った立花は無能力者となった。
「君のおかげでもあるよ佳奈出。美園を推進してくれたのは君だからね」
一年前に美園を推薦するといった人物は佳奈出だった。
「わたくしは全ての地位を失い、能力さえも使えなくなった無能力者ですか…」
「能力者、無能力者は関係ないよ。まだ悪用する人間より真正面から好きという人間のほうが興味があるのかもしれないね」
「わたくしでは里夢生徒会長には釣り合わなかったということですか」
「僕の見ていた恋愛映画ではお嬢様がどうやら恋愛というものをしていたね、その従者というのかな?お嬢様に付き添う人物にも興味があるかもしれないね」
「なに、我が大将は命令を忠実にこなす人物に興味があるということか」
「そうだね、案外君のような存在にも興味があるのかもしれないね」
里夢は恋愛映画を見てお嬢様に付き添う従者にも興味があるのかもしれないといった。里夢の興味があるのかもしれないは興味があるということである。
まさかの佐遊が恋愛映画を見たことで興味の対象になり、雅の恋愛映画作戦は裏目に出ていきなり佐遊に軍配が上がった。
「里夢ちゃん佐遊みたいな人が好きだったのー?」
「確かに佐遊は僕の命令を忠実にこなししっかりと仕事をしてくれるからね。僕は忠実な人に興味があったのかもしれない」
「妾は嬉しいぞ」
里夢にだけ反抗的だった叶美が急に態度を変えた。
「里夢生徒会長の言うことなら何でも聞くよー」
「あたしも忠実にこなしてるけどなー」
「君は抱き着いてくるからね、それに僕は秘書といったかな。そんな人物にお嬢様の次に興味はあるのかもしれない」
里夢は恋愛映画で好きなタイプの興味は示していた。
その中でも一番当てはまる人物、彼女たちの天敵は佐遊となったのだ。
そのころ、すべての真相を聞き生徒会の悪用者も聞いていた小鳥と小鳥に忠実な鈴花。そう、鈴花も小鳥に忠実であるため里夢の恋愛タイプの対象内に入ったことになる。
「彰さんの能力は元に戻す能力、鈴花の天敵ですね。佳奈出さんは嘘を見抜けるんですね。さらに行動を把握する能力、能力者を無能力者にする能力ですか。洗脳にコピーまで恐ろしい。里夢生徒会長は分かりませんでしたが。そしてデートをした相手は不明ですが忠実なる存在、くっ…」
小鳥は悔しそうに鈴花を見る。
鈴花は嬉しそうに小鳥を見る。
「どうしましたか、小鳥様」
「い、いえ、なんでも」
「そんなことより問題が発生した。議長がいなくなってしまったよ。副学級委員についてはそうだね、僕が演説で言ったのはあくまでも生徒会の座に就くために能力を悪用した場合。学級委員は生徒会ではないからギリギリセーフにするけど君は誰に票を入れたんだい立花」
「わたくしは里夢生徒会長に票を入れました」
「嘘は吐いてねぇな」
「僕の演説を聞いていて僕に票を入れたにも関わらず悪用していたんだね、分かってるよね」
「はい、わたくしは先ほど生徒会権限により能力を失いそして議長の座から降りなければなりませんね」
「次の議長か、進行ができる人物。彰、君は向いてないが推薦者ではあったけどほぼ威厳で制していたからね」
「俺は向いてねぇだろ」
「佳奈出、君は美園の推薦者だ、君も威厳はあったのかもしれないがそれなりに説得力はあった。それに君の能力は嘘を見抜ける」
「あたしはバスケ部もやってんだよ」
「僕は本気で言っているんだ、君の説得力、そしてその能力なら不正もすぐわかる。顧問と相談してくれないかい?」
「他にももっといるだろ」
「それにしても君は嘘を見抜けると同時に嘘もついているね」
「ついていねぇな」
「僕は父親と別居としているといった時嘘といったね?」
「そうだ、あたしは些細な嘘さえわかっちまう。お前は親のことを父親と呼んでないだろう?」
「と…父さんと呼んでいる」
「嘘だな、やっぱりそうだよな、さあ何て呼んでるんだ」
「ぱ…パパだ。パパとママと呼んでいる」
「本当のようだな、可愛いな」
「君の能力は恐ろしいな」
生徒会役員と佳奈出、彰に公開処刑を受ける里夢。
「まあいいんじゃないかパパでも」
「もうやめてくれ…」
「里夢ちゃんパパ呼びなんだー?」
「うわぁぁ…」
屈辱を受ける羽目になった。
彰が何か悩ましげな様子で。
「佳奈出、最終確認しておいた方がいいんじゃねぇか?」
「そうだな、希、お前は生徒会の座に就くために能力を悪用したか?」
「またそれー?してないよ」
そして佳奈出は庶務、書記、会計、広報、そして生徒会長里夢全員に質問し。
「本当だな、全員悪用はしてねぇな」
「それともう一つ佳奈出、佐遊に質問してくれ。お前は能力者かってな」
「無能力者だろ、いいぜ。おい佐遊、お前は能力者か?」
「妾か、妾は最強の能力者。制約はあるもののその気になれば地球そのもの、人類そのものすら滅ぼすことのできる最強の能力者よ」
「こいつ…嘘は言ってねぇな。お前の能力はなんだ?」
「インフィニティフェニックス、いや、嘘は通じなかったな。ワールドオブフェニックスよ」
「嘘は吐いてねぇが何言ってるかわかんねぇな」
「お主たちにも通じるよう国語辞典とやらを貸してくれぬか?明日までに通じるように調べるとしよう」
「あたしにわかるようにな?」
「妾は魔女の命令など聞かん。大将と副大将が命じるのであれば従おう」
「なら僕からの命令だ。今の時代でわかるように君の能力で説明してくれ」
「大将の命令なら了解した。国語辞典とやらで調べなければならない。明日には説明しよう」
佐遊は何かしらのとんでもない能力を持っていたらしい。
議長はいない。佳奈出に仮議長を命じた里夢。生徒会の能力悪用の件は解決したが次の問題は佐遊の能力。最強らしい。
彰は違和感を覚えていた。佳奈出の嘘を見抜く能力、叶美の行動を把握する能力、美園の能力者を無能力者にする能力により協力し悪用者を突き止めた件は解決した。彰は暴力を振るい喧嘩もする。少量だが怪我もする時はある。その怪我に自分の能力。元に戻す力を使うことはある。
今回は彰は立花に洗脳されかけた。だからこそ自分の思考そのものに元に戻す能力を使った。この自分自身の思考を元に戻す能力は一年単位で使っていない。
その能力を使ってからだ。何かを思い出した。
「なんで俺は忘れていたんだ。里夢ですら気づいていない。里夢に俺は暴力を振るった。一度目は効いた。しかし二度目は効かなかった。里夢の能力、それは危機が訪れると自動的に反射する能力だからな。俺は記憶を改ざんされていた?記憶を忘れていた?里夢にすら効いていることになる。佐遊の能力。記憶の改ざん、記憶を忘れさせる能力か?そして佐遊は最強の能力だと記憶を改ざんされていたってことか?」
彰は佐遊の能力を記憶の改ざんと疑った。
「待てよ、佐遊とあいつに関りはあったのか?あいつは間違いなく留年してるはずだ。関わりがねぇと辻褄が合わねぇ。里夢は恋愛意識自体あったことになるな、だが好きを理解はしていねぇ。あいつは数々の人間を振った。だが美園が告る前、そうかい、の一言で終わらなかった人物がいる。その人物にだけは里夢はこういったうわさがあるらしいな。そうかい、僕も君には興味があったとな」
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