第6話 初めてのデート
土曜日、デート当日。雅は里夢の寮へと向かう。里夢の寮は男子寮。
「念には念を張っておきましょうか、魔力の消費は大きいですが小鳥のように監視されている可能性もありますからね。里夢生徒会長以外の人物は私を進先輩と認識してしまう。里夢生徒会長は男子が恋愛対象の可能性がありますからこれでまずは監視している女子生徒の戦意は損失できるでしょう。問題は進先輩と会った時が危険ですね。例外として進先輩は私を希副会長と認識してしまう。これで進先輩、女子生徒に見つかれば見つかるほど戦意を喪失してしまうでしょう。確か里夢生徒会長は三分前行動が基本でしたね、好意を抱かれるためには私も三分前行動をしますか」
もう少しで10時になるころ、里夢はよくわかってないデートに行かなければいけないので制服に着替えていた。
男子生徒から声がかかる。
「里夢生徒会長。進さんが来られましたよ。あと今日は学校お休みですよ?」
「進と約束してないんだけどな。今日はしないといけないことがあってね」
里夢は玄関に向かうが進ではなく雅が立っていた。
「雅じゃないかい?予定より早く来てくれたようだね」
「三分前行動は基本ですからね」
「おぉ、分かってるじゃないか。それよりも進を見なかったかい?」
「進先輩の件は私が何とかしておきましたよ」
「君は進と仲が良かったのかい」
「そういうわけではないですけどね、それよりもなぜ制服なのですか?」
「デートに行かなければならないからね」
「私服でいいんですよ」
「そうなのかい?」
「はい、それでは待っていますね」
「それは済まないね」
急いで制服から私服に着替えた里夢は雅の元へ戻ってきて里夢の初デートはまさかの下級生不知火雅と幕を開ける。
この初デートを巡って争いは起きていた。10時に電柱で待機する緑の蝶アゲハ。
その前方の電柱には同じく待機する赤いトンボアカツキ。
先に見つけたのは立花の精霊アカツキ側だった。
「アカツキ、わたくし以外にも監視している精霊使いがいますね。あの蝶は精霊でしょう。蝶とトンボ、どちらが強いかわからせてあげてください」
立花のアカツキは小鳥のアゲハに襲い掛かる。アゲハは羽がちぎられアカツキに捕まったまま地面に落下し敗れたように見えた、しかし。
「どうしましたアゲハ。私以外の精霊使いがいましたか。ですが残念でしたね、私のアゲハは蝶の姿だけになれる訳ではないのですよ。昆虫なら何にでもなれるのですよ。アゲハ、カマキリに変身してください。カマキリとトンボ、どちらが強いかわからせてあげてください」
アカツキはアゲハに勝利したかと思ったがアゲハは姿を変えカマキリ型の精霊に変化する。アカツキはカマキリ型のアゲハに捕まり羽がちぎり取られ今度こそアゲハとアカツキの勝敗は決した。
アゲハに敗れ戻ってくるアカツキ。
「まずいですね、回復に時間がかかります。相手のほうが上手でしたか。わたくしが精霊の能力を理解していませんでした。ですが回復すればいいのです」
勝利したアゲハだったがまだ戦闘は終わっていなかった。急に虫取り網で捕まえられたカマキリ型のアゲハ。
「誰だか知りませんが虫取り網ですか、私のアゲハは昆虫ではなく精霊です。そんなもの簡単に通り抜けられますよ」
しかしアゲハは虫取り網から出ようとするものの出られない。
虫取り網でアゲハを捕まえた主の声。
「確かに小鳥様のアゲハは精霊ですが私の能力はあらゆるものを創造する能力。それは人間でもこの世に存在しない者でも関係ありません。私は精霊にだけ効く虫取り網、いえ精霊取り網とでも言いましょうか。それを創造しました。そして精霊だけに通用する虫取りかご、いえ、精霊取りかごを創造しました。精霊を生かしたままにしないといけませんからね。精霊を消滅させてしまってはまた小鳥様の元に戻り時間をかけて復活されてしまいます。私に勝てると思っているのですか?小鳥さん」
小鳥の従者である鈴花による小鳥への裏切り。この戦いの勝者は鈴花だった。
「馬鹿な、私のアゲハが…鈴花は茶道部で付き添えないあの話も全てうそでしたか。生け捕りにされては私には手が打てませんね。このままでは鈴花に取られてしまう。下剋上と受け取りますよ?鈴花」
鈴花の下剋上が始まった。
「それで恋愛映画というものはどこにあるんだい?」
「この場所から一番大きなお店、ご存じですか?3階までありますよね」
「知っているよ、僕は一階の食品売り場で主に半額の野菜やお肉しか買わないけれどね」
「そのお店の三階にアミューズメントがありまして映画館があるのですよ」
「着いたね、ここだね」
「はい、ではこの私がエスコートして差し上げます」
「エスカレーターかい?」
「いえ、エスコートです」
希は里夢がデートをするということだったので里夢の寮を部下に監視させていた。
部下の一人が希に通達する。
「ん?どうしたのー?相手は進きゅん?それデートじゃなくない?普通に遊んでるだけだよね?」
しかし昨日の報告では里夢はデートをするという報告を受けた上に土日の休みの日は里夢はほぼ自宅でおそらく勉強をしているというのに今日は進と映画館に来ているのだ。
「つまりデートの相手って進きゅんってこと?なに?ジャンルは?映画のジャンルだよー?恋愛?」
希は歯車が狂いだした。新たな可能性、里夢の本名は進という男子の可能性に行きつかなかったからだ。
そんな時、希の元へ金髪のギャル、佳奈出が姿を現した。
「お、佳奈出じゃん、どうしたのー?」
「お前、生徒会に入るのに能力を悪用してねぇよな」
「あたしが能力悪用してるって言うの?生徒会の座に就くために?里夢ちゃんの生徒会権限忘れた?するわけないじゃん」
「ふーん、なるほどな、じゃあな」
それだけ言うと佳奈出は去って行ってしまった。
「どうしたんだろ佳奈出」
実は里夢が映画館でデートをすることなど知らなかったが里夢たちよりも先に佐遊も映画を見に来ていた。映画まであと20分。
そこに彰が現る。
「おい、佐遊。いや、魔術師団長のほうがいいのか」
「お主は魔王、彰か」
どうやら佐遊の中では彰は魔王らしい。さらに彰と普通に話せる数少ない人物のうちの一人でもあった。
「お前佳奈出にちょっかいかけられなかったか」
「佳奈出、あの魔女か」
どうやら佳奈出は魔女設定されているらしい。
「あやつには悪用して生徒会に入隊したか聞かれたな」
「先をいかれたか。どう答えたんだ?」
「妾はそのようなうつけ者ではないと答えた。妾は大将に忠実に従う魔術師団と共に忍でもあるからな」
「意味がわかんねぇな、お前は聞かれちまった訳か。それより何の映画見るんだお前」
「戦国反逆記よ、知らぬ者はおるまい」
「いや、俺は初めて聞いたけどな」
「明智光秀が織田信長を討ち取り羽柴秀吉隊により討ち取られることなく明智光秀が天下を取る物語よ」
「まあいい、よくわかんねぇが佳奈出はお前には手を出したか。会計と広報は掌握した。残るは副会長、議長、書記、そして生徒会長」
「よくわからぬが開演する、ゆかせてもらうぞ」
「お前の言っていることが一番よくわからねぇけどな」
彰と佳奈出は謎が多い。生徒会役員を巡る掌握合戦が開始されていた。
「恋愛映画というのはどれだい?これかい?」
里夢が指さしたのはホラー映画。
「なんでホラー映画ばかり目が行くのでしょうか、その隣です」
「これかい?風紀を乱す不純なことをしているね、僕はあまり興味ないけど僕は恋愛映画を君と見なければならない」
「そうですよ、なので見ましょう」
「僕は隣のこのゾンビが追いかけてきている映画が見たかったけどな」
「ホラーが好きなんですか?」
「僕は怖いのは苦手だよ」
「じゃあなんでホラー映画に目が行くのでしょうか、よくわかりませんね」
そういいつつ里夢と雅は恋愛映画を見ることになった。
いつもは土日は見かけない里夢が生徒副会長と映画館に行くところを目撃してしまった進。興味で着いていくと里夢と希が見たジャンル、それは恋愛映画だったことが判明する。
「里夢君は希さんとデートしてたんだ」
進には里夢が希と恋愛映画を見ているように見えていた。
アカツキの回復時間により監視できなくなった立花は自ら赴いていると広報の叶美と出会った。
「おはようございます、叶美さん」
「おはよー、立花ちゃん。私は彰君側に就いたけど誰に就くかなー?」
「どういうことですか?」
よくわからないことを言い出す叶美。
「そのうちわかるよー、じゃあねー」
意味の分からない叶美に戸惑う立花であった。
陸上部、姫先小百合。彼女も何かしら聞かれていた。
佳奈出からだ。
「小百合、お前生徒会権限何回破った?」
「我は生徒会権限など破っておらぬな」
「嘘だな、なるほどな。自覚はあるのか。一回か?」
「違うな」
「なるほどな、一回か。お前はあと二回だな」
佳奈出による謎の行動が始まる。
謎の行動は彰も起こしていた。
彰の話しかけた相手、それは下級生の鈴花。
「なかなか面白れぇもん作ったな」
まるで初めから分かったかのように鈴花に話しかける。
「あ、彰さん?」
「おう、そうだぜ」
彰は鈴花に近づいてくる。
怖がる鈴花。当たり前だ。彰は学年で最強の人物、怖がらない人物のほうが少ない。
彰は鈴花に触れた。鈴花は消えてしまった。残る虫取り網と虫かご。
「この蝶は逃がしてやるか」
彰は蝶以外の虫取り網虫かごに触り消した。精霊アゲハは逃げるようにその場から飛び立つ。
次の彰のターゲット、先ほど叶美と遭遇した議長、立花。
立花は気づく、彰の存在に。彰はもちろん立花からも恐れられているため立花は彰から逃げ出すように距離を取る。
立花の後方から現れる金髪のギャル、佳奈出。佳奈出も彰同様恐れられている。立花は佳奈出と彰から逃げようとしたが左右に道はなく前後彰と佳奈出に挟み撃ち状態にされた。
立花を中心にして彰と佳奈出の会話が繰り広げられる。
「佳奈出か」
「彰か、あたしは昨日里夢、佐遊、今日は希、小百合を掌握したぜ」
「ほう、俺は叶美、美園、小鳥ってやつも掌握したことになるな」
なぜか鈴花の名前は出なかった。
「まあ外野はどうでもいい、俺は書記をもらうぜ」
「ならあたしは議長だな」
「俺は立場では書記、会計、広報、不利か、だが能力ではどうだ?」
「生徒会長、副会長、議長、庶務だぜ?最強だろ」
「庶務は無能力だろ」
「もう絞れたな、あたしたちの勝ちだ」
「一人チェックメイトってか?決着つけようぜ、なぁ?」
「逃げんなよ?」
彰と佳奈出の謎の会話が繰り広げられる。それを聞かされる立花。
「月曜待ってるぜ」
その言葉を最後に彰は去った。おそらく書記を掌握しに行ったのだろう。
そして議長を掌握するため近づいてくる佳奈出。佳奈出はただ問うのだった。
「お前は生徒会の座に就くために能力を悪用したか?」
「いいえ、しておりませんよ」
「そうか、なるほどな、じゃあな」
佳奈出はそれだけ立花に聞き、去った。佳奈出の言う掌握をされたのだろうか。立花には謎しか残らない。
里夢と雅は恋愛映画を見終わった。
「よくこんなものにお金を出すね、不純だな全く」
「どうですか、私達も同じことをしてみますか?」
「するわけがないだろう」
「私はいつでも待っていますよ」
「君はあんなことがしたいのかね、変なものを見せられたよ」
全く恋愛意識が変わることがなかった里夢。雅は恋愛映画で恋愛意識を持たせる作戦に出たが失敗に終わった。
「魔力の消費が激しいですね」
「君は能力を使っていたのかい?」
「いえいえ」
「り、里夢君」
進が現れた。
「希副会長と付き合ってたんだね、知らなかったよ」
「付き合い?いつも付き合ってるっじゃないか、君ともね」
どうやら付き合いの意味も理解していない里夢。
「そ、そうだよね、里夢君くらい人気なら彼女の一人いてもおかしくないよね?」
「何を言ってるんだい君は、そんなものを作る暇があったら勉強をするといいよ」
「希副会長も頑張ってくださいね」
「ありがとうございます」
里夢から見てなぜか進は雅を希といった。
「はい、お疲れ様です」
進は雅に敬語で話す。
「君は進と仲が良かったのかい?まるで君のことを希と勘違いしているようだったね」
「そうですね、なぜでしょうね」
入れ違いのように映画を見終わった佐遊が話しかけてきた。
「大将と先鋒進ではないか」
「進はさっき別れたよ」
「隣におるではないか」
「また君は意味の分からないことをいつも言うな」
今度は佐遊が雅のことを進と勘違いしてくるように話している。
「先鋒、今日の大将は様子がおかしい」
「そういう時もありますよ。私が何とかしておきましょう」
「大将の良き先鋒だからな、任せるぞ」
それだけ言うと佐遊は帰って行ってしまった。
「僕がおかしいのか?」
何かがおかしいがやはり里夢は分からない。
「くっ…魔力の限界ですか、もっと私のものにしたかったのに」
「何を言ってるんだい君は」
「今日はデートができて楽しかったですよ」
「なるほど、恋愛映画を見るというのがデートと言うことだね?」
「そうですよ、これがデートですよ。また私としてくださいね」
「でも勉強も怠らないようにね」
「はい、もちろんです、お疲れさまでした」
里夢は初めてのデートをしたことになる。
「そこにいたか進」
その声の主、彰。その言葉に進は震えながら振り向く。進も彰を恐れる生徒の一人に変わりはない。
「ど、どうしましたか、彰さん」
「お前は里夢と仲が良かったよな」
「はい、そうですね」
「お前の能力は?嘘吐くんじゃねぇぞ」
「僕の能力は魔力の量を視る能力です」
「お前は戦力にならねぇな」
「せ、戦力?」
「俺と里夢の能力は最強の防御能力を持つ」
「里夢君の能力を知ってるんですか?」
「知ってるぜ、ある意味最強だからな。里夢を俺たちの者にする、俺たちの学校にするためにな。そのためにも何としても潰す相手がいる。協力してもらうからな」
進は彰から何かしらの言葉を聞いた。
「わかりました、協力します」
里夢とのデートを終えた雅。
「はぁ…はぁ…能力を張り巡らせすぎましたか?本当ならば里夢様とキスまで行く予定でしたが恋愛映画でも動揺しませんでしたか。あと使えて今日は一人ですね」
そんな時、雅にとって絶好の餌と遭遇した。
「おや、副会長さん」
希である。雅は無能力者でありながらそのお嬢様らしさと気品さ、そのギャップと共に陸上部と有名なため希は雅のことを知っていた。
「おー、雅ちゃんだねー」
「お疲れ様です」
「雅ちゃん顔色悪いねー」
「頑張ってみますか」
すると希は急に態度を変えた。
「貴方の能力は何ですか?言わないといけませんよね?」
「はい、あたしの能力は洗脳です、雅様」
「はぁ…意識が…魔力の消費が激しいですね。聞きたいことはいろいろありましたがまあいいです、貴方はその能力を今後私にはかけられない、そして今の記憶もすべて忘れなければならない、分かりましたね?」
「はい、あたしは雅様に洗脳の能力をかけることは決してせず記憶もすべて忘れなければなりません」
「はい、ではごきげんよう」
希は態度を変えた。
「あ、雅ちゃーん」
「はぁ…お疲れ様ですね、副会長」
「顔色悪いねー」
「大丈夫ですよ、今日は幸せでしたから」
回復していたらしいアカツキは立花と会話する。
「そうですか、まさかの進さんでしたか。恋愛映画…そういうことですか。できていたのですね。落とすのは至難の業です。それに何なのですか。彰さんたちは、まったく意味が分かりませんね。月曜日に何かが起こります」
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