第2話 開始される作戦
生徒会室に着いた里夢。扉を開けるといきなり抱き着いてくる一人の少女。
里夢は気づかない。その光景に生徒会室の全員が殺気を放っているのを、その少女に向かって。
その少女こそ生徒副会長、朝比奈希(あさひな のぞみ)。身長は里夢より小さく140cm程度。小学生と間違われてもおかしくはない。ない胸を押し付けてくる。
「触るなチビ」
「里夢ちゃんに言われたくないよー」
「ちゃん付けするな、僕は男だぞ子供が」
振り払って里夢は席に着く。
「里夢生徒会長、会計から報告が」
議長である立花からの一言。
「どうした会計、美園」
会計、花夢美園(はなゆめ みその)、里夢と同クラス。しかし控えめな性格をしている。二年の時は長い髪をしていたらしいが三年になって髪を切り今は短髪のオレンジの髪をしている。
「そ、その…陸上部の出費が予算オーバーしてて」
「なに、僕も一応陸上部だぞ」
「でも生徒会で顔出してませんよね…」
「僕がいない間に何が起きたというんだ、部長の小百合に聞く必要があるな。僕は陸上部だ、僕が聞いておこう。他に問題はあるかね」
「他の部は大丈夫ですね」
「問題は陸上部か。まさか僕が入ってる部活に問題があったとはな。今から陸上部に出向いてもいいが明日でもいいか。今日は資料を片付けよう」
里夢たち生徒会メンバーは資料をまとめるのであった。
生徒会の仕事は終わった。帰る時間。
「ん?里夢か」
帰ろうとしていると携帯を弄ってイヤホンで音楽を聴いていた佳奈出と遭遇した。
「佳奈出か、バスケ部は?」
「今終わって帰ろうとしてたところだ」
「歩きスマホは危険だ」
「ほんと律儀だなぁ、お前一人か?」
「一人暮らしということかい?」
「おう」
「そうだよ、寮だけどね、父親と母親とは別居だよ」
「……嘘だな」
「なんだと?」
「さっきお前は嘘を吐いた」
「嘘なんて吐いてないぞ」
「二回嘘を吐いた」
「なんだと?そこまで言うなら証明するさ、嘘じゃないってね」
「なるほどな、こういうのも作用するのか」
「何を言ってる」
「帰っても暇だし行ってみるのも面白れぇかもな」
「嘘を吐く理由がないじゃないか」
「嘘を二回ついたのは本当だ」
「本当だとわかったら帰ってもらうからね」
「いいぜ、暇つぶしにちょうどいい」
なぜか嘘にされた里夢は佳奈出と帰る羽目になった。
一方小鳥は。
「どうしました、アゲハ?なんですって…里夢生徒会長が女子と帰っている、出し抜かれた…誰ですか?生徒副会長ですか?議長ですか?違う?生徒会のメンバーではない?」
小鳥のアゲハは意思疎通で会話を繰り広げる。
「金髪?策士ですね、一体どんな手を使って。このままでは三年に掌握されてしまいます。時間がありませんね…」
そのころ立花。何らかの能力を発動している。
「馬鹿な…まさかここで佳奈出さんに出し抜かれたということですか、そんなに接点はありませんでしたね。油断しましたか、真の敵は生徒副会長と思っていましたが」
そのころ希は、誰か部下がいるのか話をしている。
「えー、ほんと?なんでそこで佳奈出が出てくるかなぁ?まずいねぇ、どうしよっかなぁ」
戦いは始まっている。
里夢はなぜか佳奈出を家に連れていく羽目になった。
「ちょっと待ちたまえ、なに普通に入ってるんだ、僕の家だぞ」
「そうみたいだな、それにしても殺風景だなぁ、何か置かないのか」
「無駄にお金は使いたくないからね、これでわかっただろう?嘘はついてないって」
「でもまあいいと思うぜ、その年でだからなぁ、隠したくなるよなぁ」
「何を言ってるんだ君は」
「ま、大丈夫大丈夫、あたしは言わないから」
「訳が分からないな」
それだけ言うと佳奈出は帰っていった。
「歩きスマホはやめたまえ」
「ほいほーい」
「なんなんだ全く、何が目的なんだ」
やはり謎は深まるばかりである。
一方小鳥は。
「帰りましたか、まずいですね、アゲハ。監視対象をその金髪に変更してください。探る必要がありますね」
立花も作戦を練っている。
「これは話してみますか、いえしかし近寄り難いんですよね佳奈出さん、彰さんと対になる一匹狼ですからね」
希も部下たちを引き連れ監視を行わせていた。
「ふぅー、危ない危ない。このままじゃ里夢ちゃん取られちゃうねー。これは一番最初に動いた佳奈出に軍配が上がっちゃうねー。急いでー、一気に勝負決めるしかないかもー」
部下たちに命令を下す希。
「明日は小百合か…僕も陸上部だからね。悪用してないだろうね」
勉強をして寝床に着く里夢であった。
起床した里夢は学校に行く準備をする。今日は小百合という人物に話を聞かないといけない。
「おはよう里夢君、今日は小百合さんと話すんだったよね」
「ああおはよう進、そうだね。全く勝手に好き放題予算を使うんじゃないよ」
「まあまあ抑えて抑えて」
坂之宮高校に着いた里夢と進。
「じゃあ僕はB組に行ってくるよ」
「うん、わかったよ」
小百合は里夢とは別クラスのB組らしい。
B組には生徒副会長もいる。
「小百合はいるかね?」
すると生徒副会長の希が抱き着いてきた。
「抱き着いてくるな、鬱陶しいな」
「またまたツンツンしちゃってー」
「誰がツンツンするか、離れたまえ」
すると後ろから議長、立花が現れた。
「君はA組だろう」
「おやおや生徒副会長さん、里夢生徒会長の邪魔をしてはいけませんよ」
「立花は何しに来たのかなー?君はA組でしょー?」
「里夢生徒会長の邪魔をしているようなのでわたくしが止めに来ただけですけど?」
「邪魔だと思ってないんじゃないかなー?」
すると声が聞こえた、小百合の声だ。
「おお、我が旦那よ、会いたかったぞ」
「君の旦那になったつもりはない」
姫先小百合(ひめさき こゆり)。紫の長い髪をした彼女。さらに特徴をあげるなら胸が大きい。
「何に予算を使ったんだ君は」
「実はな、お前が来ぬからハードル走のハードルでも軽く10個くらい壊せば来てくれるかと思ってな」
「さっきなんて言った君は…?」
「おっと口が滑った。ハードルがいきなり10個壊れてしまってな」
「いきなり10個も壊れるわけないだろう、なんてことしているんだ」
「まあそう焦るでない、我を見よ」
「見て何…が…」
里夢はいきなり意識が飛びそうになった。立つのも精いっぱいで座り込んでしまった。
「うぅ…」
しかし元に戻った。里夢は小百合に何か使われた。
「おっと危ない、そう簡単に行かないものだな」
「僕に何をした」
「ふふっ、まずは外堀から埋めようか」
「能力は悪用させないぞ」
「心配するな、お前にはしない」
「何を企んでいる…」
小百合はAクラスに行ってしまった。
「何か悪用しそうだな」
Aクラスに行かないと危険だ。
しかし、立花と言い争っている希に捕まった。
「待ってよ、里夢ちゃーん」
「君にかまってる暇はない、ちゃん付けをするなと言っているだろう」
Bクラスに戻ってきた小百合。なぜか進と一緒にいる。
「ちょうどいい、進、助けてくれ」
「よし、我のところに持ってこい」
「わかりました、小百合様」
「ん?小百合と進が仲が良かったのか」
「ふふっ、どうする?」
進まで抱き着いてきた。
「おい進放せ。小百合め、進になにか能力を使ったな」
「ふふふっ、里夢を掌握せずともこれなら逆らえまい」
しかし、この展開を見てまた新たな里夢を付け狙うものが現れるのだった。
津山涼(つやま りょう)。里夢と同じ生徒の彼は彰の命令を受けていた。
「おい涼」
「は、はい、なんでしょうか」
「コーラでも買ってこい」
「わかりました」
赤髪の机に脚を置いて態度の悪いその不良に普通に会話できるのは里夢くらいかもしれない。
涼は見てしまった。生徒副会長の希が里夢に抱き着くのはいつものことだ。しかし、里夢が進にも抱き着かれている。
「そうか、俺は勘違いしてたのかもしれない。里夢生徒会長は様々な女子に興味がないようにまるで恋愛感情がない。でも進とは一緒にいる。そういうことか。里夢生徒会長の恋愛対象は女じゃなく男だったんだな。俺にも可能性はあるじゃねぇか、一番の強敵は進だな」
新たに生まれる里夢を付け狙うもの。
「小百合、能力を解きたまえ」
能力が解かれた。
「あれ、里夢君?」
「ふふふっ、いいものが見られた。我は里夢進カップル推しでもあるからな」
「何を訳の分からないことを言ってるんだ、もう変なことするんじゃないよ」
小百合は希と立花を見る。
「強敵は二人か」
小百合、希、立花は睨みあっている。
「なんだこれは、行くぞ進」
「う、うん。なんかよくわからないけど。僕ちょっとトイレ行ってくるね」
ようやく里夢は一人になれた。
そのまま寝そべるのだった。
佳奈出は何者かと連絡を取っている。イヤホンをつけながら。
「なるほどな。そうだな、あたしの能力だと勝てねぇな。ま、意外にお前の能力が使えるってことだ。おう、調べはついた。能力が一つとは限らねぇしな。ある意味最強だ。あたしの調べでは能力を悪用した人物が少なくとも近くに一人いる。油断するなよ」
佳奈出。この人物は誰かと繋がっている。謎は深まるばかり。
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