生徒会長の恋愛騒動
@sorano_alice
第1話 新たな生徒会長
ここは坂之宮(さかのみや)高校。
この高校では能力を持つ能力者と能力を持たない無能力者が存在する。無能力者の数のほうが能力者よりも多い。自分の能力を隠すことや能力を使うこと自体は認められている。しかしもちろん能力を使った悪用。殺害なんて持っても他なく認められてない。一年前、二年前の生徒会長は選挙の票を入れ替える能力などで能力を悪用し生徒会長の座に就いた。それは後々わかったことである。
それ以外にも生徒会長以外の人間も透視能力でテストの回答を盗み見して成績トップになった者など能力を悪用する者は多数存在した。
4月の始業式も終わり、高校三年生になった生徒会長、彼の名は紅里夢(くれない りむ)。外見からして小柄。150cm程度の身長。見た目だけならあまり話すようなタイプに見えない。どちらかというと無口なタイプに見える。子供のようなその外見の彼はあまり生徒会長には見えないが生徒会長となった。能力者なのか無能力者なのかは不明。
生徒会長となった紅 里夢による演説が始まる。
「僕は新しく生徒会長になった紅里夢だ。僕の一番の目的。それは能力者による能力の悪用を防ぐこと。僕が生徒会長になったからには全力でそれを防ぐことをここに誓おう」
高校三年生、紅里夢生徒会長の演説により周囲から拍手が飛び交う。彼は見た目子供、無口に見えるがそれなりに人望があるのかもしれない。それとも実は彼自身も能力を悪用し生徒会長になった可能性も考えられる。しかし、歓声の声が送られる。こうして紅里夢は正式に生徒会長になったのだった。
そして三年A組のクラスに里夢たち生徒は戻る。
「お疲れー、里夢君」
「ああ、なかなか緊張するものだね」
その声は里夢の友達、相馬進(そうま すすむ)。一年生のころは別のクラスだったが二年生、三年生と同クラスで友達になった。
見た目はどう見ても女の子で彼は髪留めまでしているという男子女子問わず人気のある男子生徒。里夢より背が高い。里夢より背が高いのではなく里夢が背が小さいだけなのだが。
彼は能力者である。能力者は隠す者と隠さない者の二者が存在する。進は後者、彼の能力は魔力の量を視る能力。能力といっても無限に使い続けることはできない。魔力が存在する。使いすぎると意識を失ってしまう。回復手段としては睡眠を取ることだ。
また、進は生徒会のメンバーの書記に当たる。里夢と同じく生徒会の一員。
「まずはすることがあったね、どうやら僕が生徒会長になれたようだけど一年前の選挙、あの時にいたんだね?選挙中に能力を使っていた人間が」
「うん、いたよ、僕も能力を使っていたことになるけどね」
能力を使うこと自体は許される。しかし能力の悪用は許されない。
進の能力は魔力の量を視る能力。悪用はしていない。しかし選挙中に進の能力を使い能力を悪用している人物がいないか里夢は手を打った。もし、進の能力により魔力が減っている人物が特定できたのならその人物は選挙中に何かしらの能力の悪用をしていることを意味する。
また、進の能力は魔力の量を知る能力。無能力者は魔力自体を持たない。能力自体は分からないが誰が能力者で誰が無能力者か進は里夢を含め全て掌握していることになる。
「多分同学年ではなかったかなぁ、短髪の青髪の子だったよ」
「もしかすると今の生徒会にいるかもしれないね、その青髪の短髪の子を使って能力を悪用して生徒会に入った人物が、放ってはおけないな」
一年前、里夢は生徒会長を立候補し進は里夢の応援演説者となった。他にも生徒会長に立候補したもの、生徒副会長に立候補したもの、推薦されたもの。その中で里夢は圧倒的票を獲得し生徒会長へと上がりつめた。能力を悪用しない学校を理想として。この圧倒的票は里夢自身の能力の悪用なのか、それとも無能力者で本当に里夢自身の手で得たものかは不明。真相は里夢だけが知っている。進が里夢の刺客、その可能性も十分にある。
里夢は運動が苦手だ。苦手だからこそ克服するために陸上部に所属した。しかし大して速くないため部長でも副部長でもない。それもあってか生徒会長に立候補したのかもしれない。顧問と相談し、生徒会と部活の両立。さらに部活は運動部とかなりハードだ。ほぼ幽霊部員となっているが。同じく進も運動部ではないが書道部と書記、二つを掛け持ちしている。里夢と進はかなりのハードスケジュールなのである。
さらに里夢は学級委員長まで受け持っている。生徒会長、部活、学級委員長。信じられないほど多忙だろう。
先生にプリントを持っていくよう指示された里夢。
「すまないね進、ちょっと仕事ができたよ」
「大変だね」
「僕は学級委員長にまでなるつもりはなかったんだけどな」
学級委員長になるつもりは里夢にはなかった。しかし、クラスのほぼ全員が里夢しかいないと押し切られ学級委員長までする羽目になった。これだけでもかなりの支持力を持つ人物だとうかがえる。
逆に副委員長には多数の女子が立候補していた。
里夢は疲れながらも先生によって渡されたプリントを持ちながら教室へと向かう。
「よぉ、里夢生徒会長」
「なんだギャルか」
「その呼び方やめろチビ、井之口佳奈出だ」
里夢がギャルと呼んだ生徒。井之口佳奈出(いのぐち かなで)。見た目は金髪のギャルをしている彼女は謎が多い。里夢より背が高い。
「まあ、お前悪用してないみたいだしな」
「なんで言い切れるんだい?」
「さぁな、その気になればお前を手伝ってやれるくらいだしな」
佳奈出と言われた少女は謎が多い。生徒会の人物でもない。能力も持っているのか不明。
「よくわからないな、僕は忙しいんだ…はぁ…」
「手伝ってやろうか?」
「これは僕の仕事だ、また借りができてしまうじゃないか」
「律儀だよなぁ、まあ今年の生徒会長は安泰だな」
それだけいうと佳奈出は行ってしまった。里夢は佳奈出に借りを作っているらしい。
「なんだあいつは、ちょっかいかけてきて、忙しいというのに」
ぶつぶつと愚痴を言う里夢であった。
教室に着いた里夢はプリントを置き今度は一番奥側の席の少し長めの赤髪の男に目が行く。その男は自分の机に脚を乗っけている。
「まだ君は髪を染めているのか、ギリギリアウトだぞ。足を下ろさないかね」
「あぁ?俺にたやすく話しかけてくるやつなんてやっぱお前か。里夢くらいしかいねぇよなぁ」
その人物は学年で一番の強さを誇る赤髪の男。怖すぎて誰も話しかけられないが里夢だけは普通に話しかけられる。不良的存在。新藤彰(しんどう あきら)。
「また暴力を振るう気かね、校則違反だぞ」
「お前には振るわねぇよ、お前の能力で効かないしな」
「誰にも振るうんじゃないよ」
紅里夢はこの会話で能力者なことを意味する。さらに彰は里夢の能力を知っている。
「ほんと痛かったんだからな」
「わかったわかった、振るわねぇよ生徒会長殿」
「信用できないけどね」
里夢は圧倒的支持率を保ち不良にまでにも普通に会話するという人脈はかなり高い。
ようやく自分の席に座れたと思ったら甘かった。
「里夢生徒会長、いえ、ここでは里夢学級委員長がよろしいでしょうか?」
「どっちでもいいよそんなの」
「わかりました、それでは里夢生徒会長。図書委員会から本が期限内に帰されず二週間経っているとの模様です」
その人物は三年A組副学級委員長、柊立花(ひいらぎ りっか)。彼女は副学級委員長と同時に生徒会の議長を務めている。その人物は成績も優秀であるが二年になってから徐々に追い抜かされ実は里夢のほうが成績は優秀である。
「はぁ…仕方ない、僕が行こう。それでその借りた生徒は?」
「二年B組の生徒かと」
「下級生か、昼休みでも行くとするかね」
「しかし、昼休みは美化委員会と打ち合わせが」
「そうだったか、困ったな、放課後しかないな。生徒会に遅れると副会長に伝えておいてくれ」
「承知いたしました」
「名前を聞いてなかったね、本を返すのが遅れた人物の名前は」
「秋野鈴花さんという方ですね」
「知らないな、何か特徴はないのかね?」
「特徴ですか?そういわれましても名前しか聞いてませんし」
「まあわかったよ、とりあえず2年A組の秋野鈴花という子だね」
「大丈夫ですか?AじゃなくてBですよ」
「B組だったね、危ない危ない」
里夢はメモ帳を取り出しメモをした。そのメモ帳にはほかにもたくさんのメモが書かれている。
ようやく席に座れたかと思ったが今度は進がやってきた。
「どうしたのかね」
「里夢君のおかげでいい点が取れたよ」
「興味ないね」
里夢の口癖は興味ないね、である。ただしたまに少し興味あるかもしれないね、や、興味はあるかもねと興味があるような言い方もする。そういう時はだいたい興味がある。
今回は興味ないね、だったので本当に興味ないことを進は理解する。
里夢は自分の机にぐったりと倒れた。
「はぁ…こんなに疲れるとはね。昼休みは美化委員。放課後は秋野鈴花という下級生」
そして昼休み。美化委員との会談も無事終わり、時間があったので二年生の教室に行こうかと思ったが遅れるとは言っておいたので放課後に行くことにした。外の空気が気持ちいい。里夢はそんな中珍しい色の蝶々を見つけた。
「おぉ…なんだあのちょうちょは」
里夢は蝶々を必死になって捕まえようとしていた。
すると笑いをこらえるような声が聞こえた気がする。
「ん…気のせいか。ちょうちょに逃げられてしまったではないか」
「り…里夢生徒会長、何してるんですか?」
立花に見られていたらしい。
「休んでいたんだ」
「さっき蝶々を捕まえようとしていましたよね?」
「み、見間違いだろう」
「必死に」
「さぁね」
「子供のように」
「もうやめてくれ…」
「それよりです、秋野鈴花さんと生徒副会長は知り合いだったらしく緑髪の方らしいです」
「緑髪か、なるほど」
メモ帳にまたしても書き記す。
「もう授業が始まるね、そうだ、ちょうちょを捕まえてたことは言うんじゃないよ?」
「子供のように必死に捕まえてたことですか?可愛いですね」
「うるさいな、絶対言うんじゃないよ」
「言いませんよ」
蝶々を捕まえようとしていただけでなぜか弱みを握られた気分になってしまった里夢なのである。
放課後、急いで2年B組にやってくる。
「部活に行かれる前に待機しておかないとね、何とか間に合ったか」
疲れからか眠さが里夢を襲っているとB組は終礼が終わったようだ。とりあえず出てきた生徒に聞くことにした。
「秋野鈴花君はいるかね?」
「里夢生徒会長じゃないですか、お疲れ様です。すぐに呼んできますね」
「すまないね」
数分後、緑髪の人物ではなく青髪で短髪の少女がやってきた。
「里夢生徒会長じゃないですか」
「おかしいな、緑髪と聞いたんだけどな…まあいいか、君が秋野鈴花君だね」
「いえ、私は峰小鳥です」
「僕に何か用かね?」
峰小鳥(みね ことり)。青髪で短髪の少女。二年生。里夢は何かを思い出す。
「短髪の青髪…小鳥君だったね、君選挙の時何か能力を使っていなかったかな?」
「どういうことですか?」
「僕の友達に…」
「相馬進さんですね」
なぜか知っていた。
「なんで知ってるんだ、まあいい、選挙中に能力を使っていたね、隠しても無駄だよ」
「私は常時能力を使っていますよ、少量ですけどね」
「誰かの命令かい?」
「昼休み、蝶々を必死に子供の用に追いかけていましたよね」
「……」
どうやら見られていたのは立花だけではないらしい。
「可愛かったですよ、でもあの蝶々、私の精霊なんですよ」
歳下にまで馬鹿にされる屈辱を受ける生徒会長。
「私の能力は精霊を操る能力、常に精霊を出しているので魔力が消費されるのは必然ですね」
「その精霊を使って悪用はしていないんだね?」
「もちろんですよ、それに私は里夢生徒会長に票を入れましたからね」
能力の悪用はしていなかったらしい。
「おぉ…わかってるじゃないか」
「ちょろい…」
「何か言ったかね?」
「いえ何も…」
話していると後ろからまるで初めからいたかのように緑髪でロングの少女が現れた。
「小鳥様と里夢生徒会長、里夢生徒会長は私に用事があるとのことで」
「君が秋野鈴花君かな?」
「はい、秋野鈴花です」
ロングの緑髪のその少女は秋野鈴花(あきの すずか)。見た感じ峰小鳥の従者のようにも見える。あまり喋らないタイプにも見えた。
「君は本を返し忘れてないかね?」
「そうでした…忘れておりました、明日持ってきます」
「今日はないんだね」
「はい…」
「あー、あの本ですか鈴花。そういえば里夢生徒会長はどんな方が好みなんですか?」
「なんだい急に」
「私が返し忘れていた本は恋愛の本なんです、ある方を必ず攻略するために」
「恋愛か、興味ないね」
「好きなタイプとかないんですか?」
「そうだね、僕より仕事を速くしてくれる人かな」
「それは恋愛というか…部下というか…」
「その人に頑張って告白できるといいね、とりあえず明日には返すように言っておいたからね」
「はい、わかりました、里夢生徒会長」
里夢は生徒会室に向かった。しかし里夢は知らなかった。様々な人物から狙われているということに。
峰小鳥、秋野鈴花、里夢を見送る。
「鈴花、やはり一筋縄で攻略は行きませんね。私の精霊アゲハで偵察していましたが里夢生徒会長にまだ三年の女子生徒は何人か手を出しているものの全く興味を示していません。私たちは二年生、不利です。三年生に取られる前に何としても里夢生徒会長を私たちのものにしましょう」
「もちろんです、小鳥様、三年生に里夢生徒会長は渡さない…」
「鈴花、貴方の能力で何としても里夢生徒会長を落としてください」
「かしこまりました」
立花も何かを目論んでいた。
「わたくしは議長の座に就き里夢生徒会長の副学級委員という近い存在に就きました。あとは里夢生徒会長を落とすだけですね、ふふふっ」
井之口佳奈出。この謎の人物はやはりわからない。
「ま、里夢なら安泰だけどな、あたしは里夢に貸しを作った。つってもあいつフラれてるからな里夢に。まあフラれてるというかあれは里夢がフッてるうちに入らないか、まず恋愛意識がないからな」
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