第5話

「大家さんなら、いい暮らしてるんじゃ」

「いや、ここに来て住民に会ったか?」

「そういえば、人の気配がない」

「だろ?今はだれも住んでいない」


真琴は不思議そうだ。


「どうして?かなりいいアパートだと思うけど・・・」

「いろいろあってな・・・それも、自殺原因のひとつなんだが・・・」

そこまで言って、僕は口を閉ざした。


このアパートは、本来は両親が経営していた。

僕がいざという時に残しておいてくれたが、残念ながら役に立ってない。


「正くんは、これが仕事なの?」

「いや、本職はあったよ」

「あった?」

「ああ。濡れ衣で首になった」

「そう・・・」


会社に近い事もあり、このアパートに移り住んだ。

実家は、妹夫婦が生活している。


仲は、悪い。


何だろう?

真琴は暗そうだ。


「あっ、部屋は好きなのところを、使ってくれ」

「じゃあ、正くんの部屋」

「それは、だめだ。犯罪になる」


真琴は引かない。


「わかったよ」

「やったー」


喜ぶことか?


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