公園にて②
「で、いい加減もう買い物行くんだろ?日も暮れて来た事だし」
「ん・・・・でもまだ眠い」
「はぁ?!まさかお前またここで寝るつもりじゃ・・・・」
「え?ダメ?」
「ダメだっ!!」
思わず、大声を出してしまったけど。
俺の声の大きさに驚いたのか、剣幕に驚いたのか。
悠木はキョトンとして俺を見ていて。
ふと気づくと、なにやら周囲にはギャラリーも数人集まっていて。
「ちょっと来い、悠木」
「どこに?」
「俺の家。すぐそこだ。それくらい、我慢できるだろ?」
「・・・・うん」
1も2もなく、俺は悠木の腕をつかんで、逃げるように公園から抜け出すと、そのまま悠木を連れて家へと向かった。
家に着くと、何故か悠木はじいちゃんとばあちゃんの仏壇がある和室の前で足を止めた。
「どうした?」
「仏壇」
「ああ・・・・じいちゃんとばあちゃんのだ。まぁ、他にもご先祖様の位牌が入ってるけど、俺にはよく分かんねえ」
悠木はじっと仏壇を見たあと、その目を俺に向けた。
「お参り、したい」
「はっ?・・・・お、おう。ありがとな」
俺の言葉に、悠木は和室に入ると、仏壇の前に正座をしてじっと正面を見つめた後、目を閉じて手を合わせた。
意外に律儀な奴なのか?
相変わらず、よく分からなない奴だ。
でも、大好きなじいちゃんとばあちゃんの位牌に手を合わせてくれる人がいるってのは、俺としてはものすごく嬉しい。
そして、何事も無かったような顔で和室から俺の部屋に移動するなり、悠木はそのまま絨毯の上に横になって寝てしまったのだった。
仕方なく俺は、悠木に肌掛けを掛けてやり、起きるまで寝かせてやった。
そしてその後、悠木は昼休みのみならず、学校帰りにも偶に、俺の家に寄るようになった。
目的は、ただ一つ。
悠木はただ寝て、そして帰って行く。
いや。
目的はただ一つなのだろうが、うちに来るとまず、必ずと言っていいほど、悠木は仏壇に手を合わせていた。
ほんとに、一体なんなんだ、あいつは?
明日もまた来るみたいだし。
・・・・悠木専用の枕でも、用意しといてやるか。
俺は本気で、そんな事を考え始めていた。
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