なんなんだ?
「しじょー」
「ん?」
いつものように昼寝を終え、校舎に戻る途中。
悠木はダサメガネ越しに、じっと俺を見た。
「今日、ヒマ?」
「・・・・あぁ、うん。なんで?」
「夜、家行ってもいいか?」
「はぁ?夜?・・・・まぁ、いいけど」
悠木には、俺がじいちゃんとばあちゃんが住んでた家で独り暮らしをしていることは、話してある。
話した、というか。
寝ている悠木の隣で暇をもて余していた時に、独り言みたいに話しただけだけど。
だからきっと、全部は聞いてないはず。
でもな。
こいつのことだからな。
寝ながらでも実は全部聞いていて、記憶しているかもしれないな。
なんせ、あんだけ寝てて、学年トップの成績なんだから。
どんな頭してんだよ、まったく。
「じゃ、夜」
少しだけ笑って、悠木は自分のクラスに戻っていった。
途中、藤沢と会って何かを話していたようだが、俺のところにまでは聞こえてこない。
何しろ悠木は、声も小さくてボソボソしゃべる奴だから。
なんとはなしにぼんやり眺めていると、ふいに藤沢と目があった。
・・・・えっ?!
なんでっ?!
明らかに、敵意を含んだ目で睨まれ、訳がわからず動揺した俺の背中に、もういい加減馴れた衝撃が加えられる。
「ぐぇっ・・・・」
「四条みっけ!」
「夏川っ!お前いい加減に・・・・」
「ねぇ、今日ヒマだよね?」
「はぁ?」
何やら企んでいそうな目で夏川は俺をみている。
なんだいったい?
今日はなんかある日なのか?
だが俺には先約がある。
ついさっき、悠木と約束したばかりだ。
「ヒマじゃねえし。人をヒマ人扱いすんな」
「えっ・・・・なんでっ?!何の予定?!誰とっ?!」
なぁんだ、ちぇっ。
とでも言ってすぐに引き下がると思いきや、夏川は顔色を変えて食い下がってくる。
ほんとに、なんなんだよ?
「なんでいちいちそんなことまでお前に言わなきゃいけねえんだよ」
「・・・・四条のばかっ」
小さく呟くように言って、夏川は走って行った。
去り際、悔しそうな顔をしていたような気がしたが、理由はさっぱりわからない。
やれやれ・・・・
大きく息を吐いて振り返ると。
藤沢がまだ、遠くから俺を睨み付けているのが見えた。
つーか、ほんとになんだよ。
俺、なんかしたか?
藤沢となんて、全く接点無いんだけど?!
なんだか異様に怖い藤沢の目から逃れる様に背を向けて、俺は再び大きくため息を吐いたのだった。
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