寝ともだち

「しじょー」

「行くか」

「うん」


今日も悠木が誘いに来た。


悠木 瑠偉。


俺が見つけた、渡り廊下から丸見えの場所で寝ていたアイツだ。

悠木は今日もボサボサ頭で、これまたダサめのメガネをかけて、ヤボったい服を身に付けている。

せっかくの綺麗なグレーの瞳は、長めの前髪とダサメガネに隠されて、よく見えない。

何故か俺のことを一方的に知っていた悠木は、あの日以来、昼休みになるとちょくちょく俺を昼寝に誘いにやってくる。


・・・・俺、別に昼寝の習慣も趣味も無いんだけど。


でも、放っておくとまた、悠木はとんでもない所でとんでもない時間まで寝そうだから、放ってはおけない。


「今日はどこだ?」

「そうだな、体育館裏にあるでかい木のとこ、行ってみようぜ。木陰がちょうど気持ち良さそうだし」


なんだかんだと言いながらも、最近の俺は気づけば、人目につかず、かつ、昼寝に最適な場所を探していたりする。

我ながら、お人好しだなとは思いながら。


「つーか、なんでお前はいつもそんなに眠いんだよ?」

「オレ?・・・・さぁ?」

「もしかして・・・・家では超ガリ勉タイプとか?」


そう。

悠木は俺と同じくらいは授業サボってるし、おそらく寝ていると思われるのに、なんと中間テストでは、ぶっちぎりの学年一位。

本気で、「悠木 瑠偉」という同姓同名がもう一人いると思ったくらいだ。


「別に。そうでもない・・・・と、思う」

「じゃあ、なんであんなにできるんだよ、テスト!」

「できるだろ、あれくらい」

「・・・・それを俺に言うか?」


悠木は不思議そうな顔で俺を見ていた。

多分こいつは知らない、俺の中間が散々だったことなんて。

体育館裏につくと、悠木は微かに笑顔を浮かべた。


「いい場所だ」


どうやらかなり気に入ったようだ。

最初は俺もだいぶとまどったが、悠木はあまり感情を表に出さない。

おまけに、あまり喋らない。

そんな悠木がなんで俺にこんなに懐いているのか、未だに謎だ。

一度、クラスでどんな立ち位置なのかをコッソリ覗きに行ったのだが、端の方でボーッと外を眺めているだけ。浮いている、という訳ではないものの、馴染んでいるようにも見えなかった。

ただ、一人だけ。

他のクラスの奴が、悠木に話しに来ていた。

確かあいつは、藤沢 圭人。

陸上部だか野球部だか、そこらへんの運動部に所属しているはずだ。

女子の間で人気があると、チア部に入った夏川から聞いたことがある。

ような?

無いような?

まぁどちらにしても、俺と同じ帰宅部の悠木とは接点は無さそうだが、悠木と藤沢は割りと親しげに話しているように見えた。


「なぁ、悠木」


もう既に寝る体制に入っていた悠木は、めんどくさそうに、薄く目を開けた。


「藤沢と、仲いいのか?」

「幼馴染み」


そう言うと、悠木は目を閉じ、そのまま眠りに入った。

俺はと言えば。


別に、眠たくないしなぁ・・・・。


いつものように、眠る悠木の隣に座って、ゆったり流れる時間の中に身を委ねていた。

昼休みが終わる前に、悠木を起こすためだけに。

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