第58話 残り一人

 お互いの顔を見つめる、アラタとミズチ。

 そこに言葉はいらなかった。

 どちらかが勝ち残る。

 ただ、その事実だけがあった。


 カンサのカードとロウケのカードが、ポケットにしまわれる。

 一度、イマジン空間を消した二人。

 どちらかが言いだしたわけでもない。お互いに、ダメージのない状態で戦いたかったのかもしれない。

 どちらからともなく、ある場所へと歩き始めた。

 並んで歩く二人。まるで戦友のように。

 そして、立ち止まった。公園の真ん中で。

 アラタが初めてカードを手にした場所で、戦いが始まろうとしていた。

「カンサロウケ・ジャニュ!」

「カンサロウケ・フェブ!」

 広がる紫色の空間。そこにあるよっつのかたまりだけが、紫に染まっていない。

 ロウケの力同士の戦いになる。

 軽い金属音がひびいた。

 それを、誰も見ていなかった。

 バトルロイヤルの参加者は、もう二人だけ。

 ほかの誰にも、イマジン空間の様子を見ることはできないのだ。

 剣をまじえる、ジャニュとフェブ。

 幾度いくども剣が相手をかすめる。

「結局、戦いをやめさせることはできなかったな」

「まだだ。まだ、お前がいるだろ。ミズチ」

 さらに、剣がぶつかり合う。

「オレは、剣を引く気はない!」

「ちくしょう!」

 アラタは、焦りを感じてはいないようだ。ただ、相手の動きだけを見ていた。

「やるじゃないか」

「お前もな」

 そして、そのときは訪れた。

「ラストアーツ!」

「ラストアーツ!」

 横斬りと縦斬り。

 横一文字斬り・改と唐竹割からたけわり・改がぶつかった。

「いてぇ」

「やったか」

 崩れ落ちるアラタ。そのあとで、ミズチが体勢を崩す。ふらふらとよろけ始めた。

 紙一重の差で、ジャニュの踏み込みが一歩勝っていた。

 ミズチが倒れる。

「アラタ。お前が」

 そこまで言ったところで、気を失うミズチ。

 カンサのカードが消えた。そして、ロウケのカードも。さらに、鎧姿のカンサロウケ・フェブも光となって消えた。楠堂くすどうミズチは脱落した。

 横たわっていたアラタが、立ち上がる。ミズチのほうを見た。そして、何も言わなかった。

 これで、バトルロイヤルの参加者は、残りあと一人。

 つまり、戦いは終わった。

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