第57話 残り二人

 既に開いているイマジン空間。

「カンサロウケ・ジャニュ!」

「カンサロウケ・フェブ!」

 アラタとミズチ、二人が戦いに加わった。

 ここは、駅前の広場。紫色になった人たちが行き交っている。

 もともと戦っていたのは、ソウオンとネネ。舌なめずりしたソウオンが、エイプに大技を指示する。

「ラストアーツ!」

 構えるジャニュ。アルティメットキックの威力であれば、無傷のカンサロウケなら耐えられる。

 アラタは最悪を覚悟していた。

 ところが、ジャニュを狙うと見せかけて、エイプはマーチを狙った。

「しまった!」

「ネネ!」

 判断が遅れ、ネネが倒れる。最悪は、アラタの想像していたものではなかった。悔しがるアラタ。

「ミズチ。あと、よろしく」

「おれじゃねぇのかよ」

 アラタががっくりと肩を落とす。その目には、うっすらと涙が浮かんでいた。

 マーチが消え、小村崎こむらさきネネが脱落した。

 バトルロイヤルの参加者は、残りあと三人。

 激昂げっこうするアラタとミズチ。

「よくも、ネネを」

「許さん!」

 シャープな見た目のジャニュとフェブが、同時に斬りかかった。

 エイプは防戦一方だ。素早い斬撃が四方八方しほうはっぽうから襲い来る。

「こいつらァ」

「よし。いけるぞ」

「とどめだ」

 追い詰められるエイプ。

 そこに、少女が現れる。

 紫色に染まっているため、戦いは見えていないはず。その少女が、ソウオンを応援する。

「がんばって、おじちゃん」

「なんだ?」

「どういうことだ」

 困惑するアラタとミズチ。一瞬のスキが生まれる。

 そこで、信じられない事態が。乱暴者の左手が、光りかがやく。そして、光がおさまった。

 ソウオンの左手に、ロウケのカードが現れたのだ。

「カンサロウケ・エイプ!」

 即座に叫ぶソウオン。

 ロウケの力を手にし、さらに凶悪になったエイプ。ソウオンが獰猛どうもうな笑みを浮かべる。

「ちくしょう」

「野放しにはできん。やるぞ!」

 アラタとミズチは、ソウオンを倒す決意を固めたようだ。

「やれるもんなら、やってみやがれ!」

 力におぼれるソウオン。

 その隙を突いて、ダメージを与えていくフェブ。

 カンサロウケ同士のバトルは、周囲に与える影響も大きい。周りの建物が壊れていく。

 派手な音を立てて、駅が崩れた。

「あーっ。駅が。当てないようにしてたのに」

「気にするな!」

「そう言われてもな」

 ぶつぶつ文句を言いながら、アラタがカンサロウケ・ジャニュに指示を出す。

 ジャニュが横薙よこなぎに世界を両断した。たまらず、エイプが空に逃げる。

「ラストアーツ!」

 くるまぎれに、エイプがスーパーアルティメットキックを放った。

 その隙を、二人は見逃さない。

「ラストアーツ!」

「ラストアーツ!」

 ジャニュとフェブの同時攻撃。

 横一文字斬り・改と唐竹割からたけわり・改が同時に決まった。

 十文字のような太刀筋たちすじだ。

「バ、バカな。この俺様が」

 消えるエイプのカード。当然、ロウケのカードも消えた。光となって、カンサロウケ・エイプも消えた。

 倒れたソウオンに駆け寄る少女。

 沢岸さわぎしソウオンは脱落した。

 バトルロイヤルの参加者は、残りあと二人。

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