第53話 残り五人

 ネネとササメの戦いが終わった。

 消えていくイマジン空間。壊れていたカフェが元に戻った。

 残暑の暑さを、冷房が冷やしている。

「ふぅ」

 戻ることがわかっていても、カフェが壊れたら気が気ではないアラタ。ネネとササメは、まったく気にしていないようだ。

「まだまだね」

「ああ。わらわも、まだまだだ」

 そのとき、遠くに紫色のドームが見えた。

「戦ってたから、気づかなかったの?」

「そのようだな」

「まさか、ソウオンか?」

 アラタが嫌な予感を覚えた。

 前にも、イマジン空間を開きっぱなしにしてマモノを出現させ続けたことのあったソウオン。今度もまた、よからぬことを考えているのかもしれない。みな、そう考えているようだ。

「行きましょう」

「うむ」

 ネネの言葉にササメが同意した。

 三人は、ソウオンのもとへと向かう。走って移動した。

 ミズチは、病院にいた。

 白い病室に入る、黒い服の男性。

「カエデ……」

 ベッドの上で横になる妹。兄が、その手を取った。


 ソウオンのもとへとたどり着いた、アラタたち。

 駅前の広場。そこが、紫色の中心。イマジン空間が広がっている。

「こんなことはやめるんだ!」

「うるせェ。俺様に指図さしずするな」

 すでに、マモノがたくさんいる。カタツムリのような見た目。

 アラタがカードをふたつ取り出し、カンサロウケを呼び出す準備に入る。

 カードを取り出し、カンサを呼び出そうとするネネとササメ。

「カンサロウケ・ジャニュ!」

「いって! カンサ・マーチ!」

「カンサ・ジュラ!」

 一目散いちもくさんに、マモノに攻撃を開始する三体。

 カタツムリのような見た目のマモノは、からが硬い。

 鳴りひびく金属音。

「くうっ」

「早く倒さないと」

 マモノは人の体力を奪う。すでに、周りでは倒れている人たちがいる。その中には、コハルの姿もあった。

「コハル?」

「いまは、考えちゃダメ」

「そうだ」

 ネネとササメの言うことは正しい。アラタは、戦いに集中することにした。

 剣での攻撃を指示する、アラタ。ジャニュがマモノを斬りはらう。だが、数が多い。コハルは、まだ目を覚まさない。アラタは作戦を変えた。

「やっぱり、硬い!」

「ソウオンはおれに任せろ!」

 アラタが気合いを入れた。

 エイプと戦うジャニュ。

 シャープな見た目のジャニュが、軽めの音を鳴らして近づく。素早い斬撃で、エイプにダメージを与えた。

 ガシャガシャと音を立てて攻撃するエイプ。蹴りをかわし、ジャニュが反撃する。

 剣でこぶしや蹴りをはじき、剣による一撃を狙う。

 エイプの格闘家のような動きに対し、ジャニュが対応し始めていた。

「て、てめェ」

 やはり、カンサロウケの力は絶大。エイプを追い詰めていく。

 剣が縦横無尽じゅうおうむじんに襲いかかる。

「戦いをやめろ!」

「うるせェ!」

 そのとき、視界に入ったカタツムリのようなマモノを、ジャニュが攻撃した。

 その隙を逃さないエイプ。

 マモノ退治をしているジャニュめがけ、特別な大技を繰り出す。

「ラストアーツ!」

「しまった!」

 アラタが指示を出したときには、もう遅い。その大技から逃れるすべはない。ジャニュはガード態勢をとった。

 アルティメットキックがヒット。

 しかし、当たったのは、かばったジュラだった。

「どうして、ササメ。なんでだよ!」

「アラタ。あとは、頼むぞ」

 ササメは倒れた。カンサ・ジュラが消える。光となって。

 梛川なぎかわササメは脱落した。

 バトルロイヤルの参加者は、現時点で残り五人。

「くっくっく」

 笑い声を残して、ソウオンが去っていく。満足したようだ。

 ラストアーツの横一文字斬り・改でマモノを一掃したジャニュ。倒れていた紫色の人たちが起き上がる。

「うーん」

 カンサロウケをしまわずに、アラタは、しばし呆然ぼうぜんとしていた。カンサをしまったネネが、コハルのもとに走っていく。はっとした様子のアラタが、そのあとに続いた。

 倒れていた人たちの中には、前にソウオンが助けた少女の母親の姿もあった。

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