第47話 敗走

 暑い。汗が流れる。

 異常気象なのか気候変動なのか、ともかく気温が高い。35度以上ある。猛暑日。

 こまめな水分補給と、適度な休憩が必須だ。

 駅前で、見知った者同士が顔を合わせた。お互いに野獣やじゅうのような眼光を向け、わずかに口角を上げる。

 ミズチと出会うソウオン。駅前の広場が、異様な雰囲気に包まれる。

「探したぜ」

「オレのセリフだ」

 お互いにカードを出す。ミズチは2枚。そして、構えた。

「カンサ・エイプ!」

「カンサロウケ・フェブ!」

 毎度のことながら、イマジン空間が展開していく。辺りは紫色になった。よっつのかたまりをのぞいて。

 イマジン空間が展開したことで、周辺の気温が多少下がる。過ごしやすい温度になった。

 シャープな見た目のフェブが、斬撃を繰り出す。エイプは、かろうじてかわした。

 エイプは強い。

 それよりも、カンサロウケとなったフェブのほうが一枚上手だった。

 ガシャンガシャンと音を鳴らして、よけるのが精一杯のエイプ。そこを、縦斬りがとらえた。金属音が鳴る。

 カンサロウケは、やはり強い。

「テメェ。なんだ、それは!」

「教えるわけがないだろう」

 二人のやり取りを、紫に染まった人々が見ていた。といっても、カンサの戦いは普通の人には見えない。訳の分からない会話をする、変なポーズの二人でしかない。不思議ふしぎそうな顔をしながら通り過ぎていった。

 ラストアーツを構えるフェブ。唐竹割からたけわり・改の発動まであと1秒。

 そして、技は発動しなかった。

 たまらずカンサ・エイプを呼び戻す、ソウオン。

「ちぃッ。覚えてろ!」

 カードをしまい、必死で逃げる姿はどこか滑稽こっけいさがあった。ソウオンは、なんとも表現しがたい複雑な表情をしていた。ひとつ読み取れる感情は、怒り。

「次こそは」

 ミズチは、苛立ちを隠そうとしない。

 カンサロウケ・フェブをしまうミズチ。ふたつのカードを、それぞれ別々のポケットにしまった。

 イマジン空間が消えていった。紫色に染まっていた辺りが元に戻る。ふたたび、燃えるような暑さが戻ってきた。

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