第四章 願い

第48話 ぶつかる二人

 ロイヤルパルス。

 そこは、アラタの仕事場のカフェ。

 冷房のおかげで、地獄じごくのような暑さから逃げ出せる。すずしい空間が広がっている。

 席につく男性が、同じく席についている女性に、やさしく語りかけていた。

 ツヨシが、ハナコに願いを告げる。

「ワタシの望みは、すべての女性の幸せさ」

 微笑むハナコが、カップの紅茶を飲み干した。

 ハナコも、ツヨシに教える。

「私の願いは、全人類の知能の向上よ」

「む?」

 意味が分かっていない様子のツヨシ。そこを、ハナコが叱責しっせきしなかった。

「まずは、あなたからね」

 カフェのマスターは、無言で作業をしている。

 妙な会話をしている二人を、アラタがいじらなかった。

「願い、か」

「ちょっと、行ってこようか?」

 コハルがちょっかいをかけようとして、アラタがめた。


 木造のカフェ。

 ツヨシとハナコが帰ったあと。

「いらっしゃいませ」

 男性は、カウンター席に座った。

 ヒサノリがやってきたのだ。職業は検事。

「コーヒーを頼むよ」

「かしこまりました」

 まじめに接客するアラタを、コハルが見つめていた。

 今度は、ソウオンがやってきた。

 何も言わずに、カードを見せる。

「やれやれ」

 ヒサノリもカードを見せ、お互いにカンサの召喚態勢に入った。

「やるぞ! カンサ・エイプ!」

「仕方ない。カンサ・セプテン!」

 イマジン空間が広がっていく。紫色に染まるカフェとその周辺。染まっていないのはいつつのかたまり

 カンサバトルが始まる。

 アラタは無視されていた。

「無視かよ」

「なに? 知り合い?」

 毎度のことのように壊れるカフェ。イマジン空間のおかげで、冷房が消えても暑くない。

 金属音が鳴りひびく。

 ふりおろされる大剣。かと思えば、斜めに振り上げられる。

 目にもとまらぬ速さで繰り出される、こぶしと蹴り。

 戦いは熾烈しれつを極めた。

 カンサロウケを出そうとするアラタを、ヒサノリが制した。

「一人で勝てないようでは、このさき生き残れない!」

「でもなぁ」

 焦るアラタ。ヒサノリが押され始めたのだ。

「ふははは。やっぱり、俺様は強え!」

「くっ」

「ラストアーツ!」

 アルティメットキックを寸前のところでかわすセプテン。

 ヒサノリは、カンサをしまって逃げていく。

 ソウオンもカンサをしまった。

 イマジン空間が消えていく。紫色が薄くなっていった。

 壊れたカフェが元に戻った。

 上機嫌で去っていくソウオン。それを、外でミズチが見ていた。

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