第46話 悪化する病状

 冷房のおかげですずしい病院内。

 ミズチが、病室の前で立ち止まる。中に入った。うしろにアラタもいた。

 白を基調とした病室内で、ベッドの上に座る妹。そのぎこちない笑みを見て、兄は何かを察したらしい。

「カエデ!」

 明らかに体調の悪そうな妹を、ミズチが心配していた。頭をなでようとしてやめた。

「大丈夫だよ。お兄ちゃん。アラタさん、こんにちは」

「こんにちは。カエデちゃん、ほんとに大丈夫?」

 アラタも心配する。

「ちょっと冷房が強いのかな。お兄ちゃん、おおげさだから」

 カエデは横になった。

 無言で病室を出る二人。

「外に出るぞ」

「ああ」

 ミズチにうながされ、アラタたちは病院の外に出た。むせかえるような熱気が身体からだにまとわりついてくる。

「オレと戦え」

「なんだよ、急に」

「黙って、戦え!」

 両手にカードを持つミズチ。

 無言のまま、アラタも両手にカードを持った。


「カンサロウケ・フェブ!」

「カンサロウケ・ジャニュ!」

 イマジン空間が開き、辺りが紫色に染まっていく。カンサロウケとそれを使う者をのぞいて。

 カンサロウケ同士の戦い。金属音がひびく。

 お互いにシャープな見た目。

 縦斬りを、横斬りではじくジャニュ。今度は、横斬りが縦斬りでいなされた。

 激しい斬撃により、辺りの建物が壊れていく。病院をのぞいて。

「うっ」

「くっ」

 お互いにダメージを受けた。しかし、かすり傷だ。戦闘に影響はない。

 互角。

「わかってるつもりだ」

 アラタが言った。

「なんのことだ!」

 ミズチがイライラした様子で聞く。

「カエデちゃんのこと」

「何を!」

「いま、おれと戦う必要はないだろ」

「必要がないだと?」

 二人はカンサロウケを操り、戦いながら話している。カシャンカシャンと鎧が動くすこし軽い音と、剣のぶつかる音を聞きながら。

「冷静になれよ!」

「オレは冷静だ!」

「ロウケの力で、ほかのやつらを倒したほうがいいに決まってるじゃないか」

「黙れ!」

「ソウオンのことだって――」

「黙れと言っている!」

 焦りが強くなっていることで、周りが見えていない様子のミズチ。

 派手な音がした。攻撃によって辺りの建物が壊れていく。やはり、病院をのぞいて。

「わかってるよ。壊さないから安心しろ」

「アラタ、お前」

 横斬りと縦斬りがぶつかり、火花が散る。

 お互いに一歩も引かない。と思われた。

 だが、アラタが先にを上げる。

「もう、やめよう」

 アラタがカンサロウケをしまった。

 ミズチは、戦えとは言わない。彼も限界だった。

 二人がカンサロウケをしまい、イマジン空間が消えていく。紫色から元に戻る景色。

 いつものように、壊れていた建物が元に戻った。

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