第44話 無粋な輩

「オレも、ロウケの力を得た」

「ホントか? やったな」

 冷房の効いたカフェで、屈託のない笑顔を浮かべるアラタ。

 ミズチは困惑する。

「なぜ、ライバルが強くなって喜ぶんだ」

「そういえば、そうだな」

 アラタは笑った。

 つられて、ミズチもわずかに笑う。

「この力の使い道、おれは決めたぜ」

 ロウケのカードを左手で持つアラタ。

「ああ。オレもだ」

 同じく、ロウケのカードを左手で持つミズチ。

 ほぼ同時に、二人が口を開く。

「ソウオンを倒す」

「ソウオンを倒す」

 二人は、口角を上げた。


「おじょうさん。どうですか、一杯」

 セミの鳴き声が、室内までひびいてくる。海の近くの喫茶店で食事をするハナコに、ツヨシが声をかけた。

 だが、ハナコはヒサノリと食事をしている。

無粋ぶすいやからだ」

 カードを取り出すヒサノリ。

 同じく、カードを取り出すツヨシ。やることはひとつしかない。

「カンサ・セプテン!」

「美しいおじょうさん。すぐ終わらせるので待っていてください。カンサ・ディッセ!」

 イマジン空間が展開。三人と二体のカンサ以外は、紫色に染まった。

 ハナコは、ツヨシのリップサービスを真に受けているようだ。うっとりとした表情で、じっとツヨシを目で追っていた。

 金属音と何かの倒れる大きな音がひびく。

 すぐに、喫茶店が粉々に壊れた。


 セプテン対ディッセ。

 戦いは続く。

 大剣と細身の剣。リーチではセプテンのほうが上。しかし、懐に入ってしまえばディッセのほうが有利になる。とはいえ、それは難しい。

 じゃっかん、セプテンが押している。

 ツヨシが相手を認める。

「やりますね」

「もうやめて」

 そう言ったのは、ハナコだった。

「はい!」

 ツヨシはあっさりとカンサ・ディッセをしまった。そのまま去っていく。

 ハナコも、そのあとに続いて去っていった。

 ぽつんと残されるヒサノリ。

「元気出してください。おごりますよ」

 店長が気をきかせていた。

 カンサ・セプテンをしまい、イマジン空間が消える。紫だった辺りも元の色に戻った。

 とうぜん、粉々に砕けた喫茶店も元に戻っている。

「……」

 ヒサノリは無言だった。

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