第27話 残り九人

「カンサ・ジャニュ!」

「カンサ・マーチ!」

 戦いを繰り広げるジャニュとマーチ。操るのは、アラタとネネ。

 といっても、本気でやり合っているわけではない。ソウオン対策だ。公園の中で、鎧同士がガシャンガシャンと音を立てる。

 辺りはいつものように紫色になっている。都会の片隅を、紫色の人々がたくさん通りすぎていく。

 奥の手である飛行能力を使い、マーチが優位に立った。

「飛ぶのは反則だろ」

「できるんだから、しょうがないでしょ」

 飛べるといっても、飛びながら弓矢を撃つのは難しい。

 戦況は拮抗していた。本気で戦っていないということも影響している。

 戦いに熱中しすぎて、戦闘時間が長引いた。イマジン空間を長時間開きっぱなしにしたことで、マモノが現れてしまったのだ。

 ライオンのような見た目のマモノは、獲物を狙っているかのような目を紫色の人々に向けた。

「しまった」

 だが、そのマモノはすぐに倒されることになる。

「やれ。カンサ・エイプ!」

 ソウオンが現れたのだ。カンサに指示を出し、マモノに蹴りを浴びせた。ニヤリと笑うソウオン。

 派手に爆発するマモノ。といっても、カンサ使いたちにダメージはない。

 そこへ、ミズチもやってくる。

「カンサ・フェブ!」

 すぐに状況を把握して、ソウオンと対峙するミズチ。アラタとネネも続く。3対1の様相ようそうていした。それでも、ソウオンは動じなかった。

 ササメとコウスケも、近くにいる。しかし、戦わずに様子を見ていた。

 ソウオンは強い。三人がかりでも手いっぱいだ。

 アラタが吠える。

「ソウオンには気をつけろ!」

 沢岸さわぎしソウオンには気をつけろ。というのは、マサトの受け売りだ。

 噂をすれば影。そこへ、マサトがやってきた。

「カンサロウケ・オーガ!」

 武器を持たず盾だけのオーガ。

 しかし、ロウケの力は強い。エイプを追い詰めていく。

「やっぱ、つええぜ」

 虎の威を借る狐。アラタがはしゃぐ。それを、荒々しい男性はよしとしていない。

「この野郎! ラストアーツ!」

 ソウオンは激昂げっこうしていた。

 ラストアーツをオーガに撃つ。と見せかけて、ジャニュを狙った。

「しまった」

 アラタは、完全に意表を突かれた。まさに油断大敵ゆだんたいてきだ。

 そこへ、オーガが文字通り盾になる。

「受けきれ。オーガ!」

「なめるな!」

 ソウオンが叫ぶと、右手に持つカードが光った。エイプの力が増したようだ。

 オーガが構えていた盾が遠くに飛ばされた。ラストアーツをくらい、オーガのダメージが規定値を超える。

 携帯電話の画面を見るマサト。

「今日の運勢は、吉……か」

 マサトは、ソウオンに倒された。その事実を受け止めるまで、アラタの中で時間がかかったように見える。なかなか動かなかった。

「おい。しっかりしろ!」

「これを……」

 カードが消滅する前に、ロウケのカードをアラタに託すマサト。

 しかし、カンサのカードが消えると、ロウケのカードも消えた。泉上いずみかみマサトは、脱落した。

 バトルロイヤルの参加者は、現時点で残り九人。

 気を失ったマサトを横抱きにして、アラタは逃げる。

「くっくっく。はーっはっはっはッ」

 色が戻っていく公園に、ソウオンの高笑いがひびきわたる。

 アラタたちが、ソウオンに一層警戒したのは言うまでもない。

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