第25話 新たな者

 アラタと戦うミズチ。

「少しは腕を上げたようだな」

「戦いをめてやるから、待ってろ」

 といっても、二人が戦っているわけではない。鎧姿のカンサを召喚して戦っている。鎧は、動くたびにガシャガシャと音を立てる。

 現実とは違い、イマジン空間は寒くない。そこへ、誰かがやってきた。その人物は、色が紫に染まっていない。

「ぼくは、溝際みぞぎわコウスケです」

「カンサ使いか」

 ミズチの問いに、カンサのカードを左手で持つことで返すコウスケ。

「出てください。カンサ・オクト」

 オクトに武器はない。素手。とはいえ、そのぶん能力が高いようだ。

「やつのカンサに似ているな」

「ああ。ソウオンか」

「誰ですか、それは!」

 ジャニュを狙うと見せかけて、フェブに対してパンチを繰り出したオクト。鎧がガシャンと音を立てる。ひらりとかわされ、ふたたびジャニュのほうを向く。

「ヤバイやつだ。気をつけろ」

「ほう。あなたは?」

「おれは、兜山かぶとやまアラタ」

「一応名乗るか。オレは、楠堂くすどうミズチ」

 コウスケは、へらへらしている。メガネの位置を手で直した。

「お手柔らかに頼みますよ」

「そうはいかん!」

 ミズチが攻撃を仕掛けた。

 フェブの斬撃を寸前でかわす、オクト。

「何?」

「やるじゃないか」

 アラタは、ジャニュをあまり動かしていない。様子を見ていた。

「二人がかりでいいですよ」

 挑発するコウスケに、別の声が返事をした。

「じゃ、お言葉に甘えて。カンサ・マーチ!」

 ネネが現れ、カンサを召喚。そして、オクトに矢を放った。

 建物に当たり、派手に壊れる。カンサの攻撃は威力が高い。とはいえ、カンサ使いに当たってもダメージはない。

流石さすがに、1対3はきついですね。今日はこのくらいにしましょう」

 捨て台詞ぜりふをはいて、コウスケが去っていく。

「おい。おれは加わってないぞ」

 アラタは不満そうだった。

 空間が元に戻り、建物も元に戻った。


 カードを見せるソウオン。

 同じく、コウスケもカードを見せて応じる。

「やっちまえ。カンサ・エイプ!」

「いきます。カンサ・オクト」

 イマジン空間が展開していく。周りが紫色に染まる。カンサとカンサ使いをのぞいて。

 最初は互角に見えた。

 ところが、隠していた実力に差がある。

「こいつ」

「はっはァ!」

 エイプが押し始めた。

「同じ素手同士なのに、どうなっているんだ。そうか、こいつが」

「俺様を知っているのか? 沢岸さわぎしソウオンだ。どうもこうもねぇ。俺様のほうが上。ただそれだけだ! ラストアーツ!」

「くうっ」

 アルティメットキックを寸前でかわし、コウスケが逃げる。

「おい! ちッ」

「ぼくはただ、幸せになりたいだけなのに」

 コウスケは全力で走る。

 自身の強さを再確認したソウオン。もう逃げられた悔しさを忘れたようで、ニヤリと笑う。

「やはり、俺様が最強だ」

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