第24話 思い

 駅前の広場。

 雪が降ってもおかしくない天候。その中で、あまり厚着をしていない男性が、カードをちらつかせる。

 ばっちり厚着の女性が、カードを出して答えた。

「やれ。カンサ・エイプ!」

「やりなさい。カンサ・ジュラ!」

 辺りが紫のドームに包まれていく。カンサ使いとカンサをのぞいて、紫色に染まっていった。イマジン空間が開いたのだ。

 イマジン空間は、遠くからでも見える。カンサ使いなら。

 ソウオンと戦うササメ。

「どうした、どうしたァ!」

「やはり、手強い。でも!」

 槍を持つジュラのほうが有利なはず。なのに、素手のエイプが押していた。金属音が鳴る。パンチとキックで間合いを詰め続けている。

 エイプは、ぴょんぴょんと跳ねるような動きで、間合いを管理していた。

 ササメが、どうにも劣勢になる。

「とどめだ」

 そのとき、何者かが現れた。

「そうはさせない」

 加勢にきたのは、マサトだ。カードを両手に持ち、構えていた。

「あなたは、泉上いずみかみマサト!」

「カンサロウケ・オーガ!」

「カンサロウケ? なんだ、それは」

 話しながら、ソウオンはエイプに指示を出す。オーガめがけて突っ込んだ。

 ガキン、と、盾で攻撃をしのぐオーガ。

 普通のカンサよりも、鎧が薄く見えるカンサロウケ・オーガ。しかし、パワーは桁違いに強い。ソウオンのカンサ・エイプをものともしない。

助太刀すけだちに感謝などしなくてよ」

「それでいい」

「ごちゃごちゃと!」

 マサトとササメ。カンサロウケ・オーガとカンサ・ジュラの連携でソウオンを、カンサ・エイプを追い詰めていく。

「ラストアーツ!」

 オーガのシールドバッシュが、エイプをとらえた。だが、浅い。戦闘不能せんとうふのうにはいたらなかった。

「ちっ」

 舌打ちを残して、ソウオンが逃げていく。


「カンサロウケ・オーガ!」

「カンサ・ジャニュ!」

 イマジン空間が広がっていく。紫で塗りつぶされるドーム内。そこに、色の変わっていないものがよっつあった。

 マサトとアラタが戦っていた。

 よく見ると、本気ではない。

 オーガのこぶしが、ジャニュの寸前で止まる。

「ダメだー」

「いや。なかなかいい線いっているぞ」

 カンサをしまう二人。イマジン空間が消えていく。

「どうやったら、ロウケを手に入れられるんだ?」

「言っただろ。強い思い、だ」

「って言われてもな」

 アラタには、どうやればいいのか分からない様子。ムダに気合いを入れて、限界がきた。力をゆるめ、大きく息をはき出す。

「それじゃ、自分はこれで」

「待ってくれ。もっと話をしようぜ」

「いや。一人にさせてくれ」

 そそくさと去っていくマサト。戦いのときとは違って、どこかユーモラスに見える。

「なんだよ。あいつ。そんなに一人がいいのかね」

 アラタには、マサトの心が理解できなかった。

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