第15話 ジュラ

 ふところからカードを取り出す、ミドルヘアの女性。

 ロングヘアの女性が応じた。

「わらわは、梛川なぎかわササメ」

小村崎こむらさきネネよ」

「いざ尋常じんじょうに」

「えーっと、勝負しょうぶ?」

 いまいち乗り切れていないネネと、ササメが戦うことを決めたようだ。

「ゆくか。わらわのカンサ・ジュラ!」

「カンサ・マーチ!」

 開くイマジン空間。駅前の広場も含め、辺りが紫色に染まっていく。

 カンサが召喚され、鎧姿をさらした。ガシャリと音を鳴らす。どちらも女性型だ。

 槍の間合いの外から弓矢で攻撃するマーチ。寸前で回避するジュラは、一気に間合いを詰めて一撃浴びせた。

「きゃあっ」

「負けを認めてはどうか」

「まだまだ!」

 すぐに距離をとり、マーチはさらに弓矢で狙う。一発当たった。

「うっ」

 お互いの力量は、ほぼ互角のようだ。どちらも素早く動いて、間合いの取り合いになる。

 激しい戦いになった。

 そして、時間が経過していく。

 時間が経ち過ぎてしまった。戦いの途中でマモノが現れた。ヘビのような見た目の。

 イマジン空間を開く時間が長いと、マモノが現れてしまうのだ。

邪魔じゃまだ」

「ジャマよ!」

「しからば、ラストアーツ!」

「ラストアーツ!」

 一点突きと、ピアシングアロー。二体はほぼ同じタイミングで技を放ち、ヘビのようなマモノを撃退した。

 盛大に爆発が起こる。

「ここか? 黄泉よみへの入り口は」

「こやつは」

沢岸さわぎしソウオン。わたしたちの敵よ」

 ネネが間髪入かんぱついれずに告げた。その気迫きはくにおされてか、ササメが嘘だと疑っている様子はない。

 ソウオンが立ち止まった。すぐにカードを手に取り、ニヤリと笑う。

「やれ。カンサ・エイプ!」

 鎧姿の大男が現れ、二体を相手に殴りかかる。金属音がひびいた。

 2対1なのに、まったく引けをとらない強さを見せつける、ソウオンのカンサ・エイプ。

 素手なのに強いエイプ。周りの建物が壊れていく。

「なんなのだ、こやつは」

「ダメ。これ以上は」

 たまらず、ネネとササメは逃げ出した。

「はッ」

 険しい表情で息をはき出したソウオン。カードをしまい、カンサ・エイプが消えた。

 全員がカンサを戻したことで、紫だった空間が戻る。壊れていたはずの建物も元に戻った。


 休日。一人で過ごすロクロウ。

「あれは。まあいい」

 イマジン空間が見えても、何もしなかった。

 電話が鳴る。

 社長から電話がかかってきても、出なかった。今日は非番だ。

「どいつもこいつも、俺の邪魔じゃまをする」

 立ち上がった。

 ただ、イマジン空間のほうをちらりと見た。

 やはり、何もしない。

 寝支度を済ませ、そのまま眠りについた。

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