第8話 エイプ

 遊園地で遊ぶ四人。

 アラタとコハルは、どこかぎこちない。

 ミズチとネネは、もっとひどかった。初対面かのようなたどたどしさを見せる。

「ホントに、友達?」

「ほんとだって。トモダチ」

 アラタの表情は引きつっていた。ミズチとネネはケンカを始めてしまう。

「カンサを使ってもいいんだぞ」

「望むところよ」

 二人がヒートアップしてきたところで、思わぬ邪魔じゃまが入った。

「いけ。僕のカンサ・メイ!」

 リクが現れ、カンサを召喚したのだ。イマジン空間が開かれ、辺りが紫色で染まっていく。もちろん、カンサ使い以外には紫は見えていない。

「ど、どうする」

 焦るアラタとは対照的に、ミズチはさっさとカンサを召喚する。

「カンサ・フェブ!」

「わたしも。カンサ・マーチ!」

 ガシャガシャと、鎧姿のカンサたちが音を鳴らす。さっきまでケンカしていたとは思えないほど、二人は息ぴったりだ。

「何? 流行ってるの? 監査」

 イマジン空間もカンサも、紫色に染まったコハルには見えていない。カンサ使いではないからだ。

「そうじゃないけど、おれも。カンサ・ジャニュ!」

 目を細くしたあとで、頭をかくコハル。もちろん、コハルには何が起こっているのか分からない。自分を含めた周りが紫色になった状態も、とうぜん見えていない。

 色が失われたかのような世界で、カンサ使いとカンサだけがカラフルな色を振りまいていた。

「なに? そのカード」

 カードだけが見えている様子のコハル。ひきつった笑いを見せながら、ミズチが返す。

「気にするな」

 一般人に見守られながら戦う、四人。

「やりづらいぜ」

「右に同じ!」

 会話によってわずかに生じた隙を、リクは見逃さなかった。

「ここだ!」

 幾度いくども繰り出した突きは、全段ヒットとはいかない。それでも、マーチはかなりのダメージを受けた。

「きゃっ」

 ピンチになるネネが、何かをしようとしてやめた。まるで奥の手を隠しているかのように。

 そこへ、マモノが現れた。ダチョウのような見た目。

 イマジン空間を開いた時間が長くなると、マモノが現れるのだ。

「僕のカンサはすべてを追い越す! くらえ! ラストアーツ!」

 特殊な大技である乱れ突きを使い、リクがダチョウのようなマモノを倒した。

 爆発するマモノ。跡形もなく消し飛んだ。

「うおっと」

 いつものように、アラタが爆発に驚く。とうぜん、コハルにはなにがなんだか分からない。

「なにやってんの? 教えてよー」

「興がそがれた」

 リクが去っていった。

「だれ? あの人」

千年原せんねんばらリク」

 最後にカンサをしまったアラタが、ぼそりとつぶやいた。ひどく疲れている様子。紫の空間が消え、壊れていたものが元に戻った。


 突如開くイマジン空間。

 近くにいたネネが、現場へ向かう。

 そこにいたのは、アラタでもミズチでもない。もちろん、リクでもなかった。

 さらなるカンサ使いが現れたのだ。

「俺様は、沢岸さわぎしソウオン。願いは、混沌こんとんだ」

「わたしの願いは、世界平和よ。きて。カンサ・マーチ!」

「くだらねェな。さァて。カンサ・エイプの力、見せてやるか」

 エイプは武器を持たない。素手。ガシャッと音を立て、鎧は俊敏しゅんびんな動きをする。

 マーチの武器は弓矢。女性型で、遠距離からの攻撃を得意とする。

「なんで、武器もないのに」

「くっくっく」

 エイプは、純粋に強かった。パワー、スピード、技のえも。格闘家のような動きを見せる。

 ぴょんぴょんと跳んで間合いをはかり、一気に近づいていった。

 圧倒的な力でマーチを追い詰めていく、エイプ。

「そろそろ終わりにするか」

「いけない!」

 逃げ場のなくなったマーチは、空へ飛んだ。奥の手である飛行能力を発揮はっきし、マーチは逃げたのだ。

「ちっ。……まあいい」

 去っていくネネを、ソウオンは放置した。

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